レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

『BAND EXPO』 BAND EXPO 【後半】

というわけで、後半戦です。

もう聴かれましたでしょうかね?『BAND EXPO』。聴いている人はすっかりハマっちゃってるんじゃないですか?曲間がほとんど無く、矢継ぎ早に名曲が繰り出されるので、停止ボタンを押す隙がないですね。怖いですね(笑)。レコーディングとしてはスタジオハピネスでみんなでベーシックなリズムを録音して、上物は各自(豊富なロック体験から得た)アイデアを出し合って演奏して重ねていってという形でしょうか?それらの音を大なり><小なり『PLUG AWAY+』での完全無欠なミックスも記憶に新しい鳥羽修さんがまたしても絶妙のバランスでまとめ上げ、言うまでもなく最高のバンドサウンドに仕上がってます。バンドの溢れんばかりのダイナミズムを余すことなくパッケージ、思いのほかキーボードのサウンドが印象的なのですが、ここぞという時の西村さんの熱血ギターソロではグググッと音量があがってニヤニヤが止まりません。マスタリングはあのゆらゆら帝国で有名(常套句!)なメジャーインディーの音職人・中村宗一郎さんです。ジャケットのイカしたイラストは眼福ユウコさんの手によるもの、淡くカラフルな色彩はアルバムのカラーと鮮やかに一致。もう何から何まで今年2016年を代表する名盤だと思います。では、全曲感想行ってみよう!

BAND EXPO

BAND EXPO

①「Showtime」
作曲:青木孝明
わずか48秒の小粋でオールドタイミーなジャズるインスト曲で、アルバムの幕開け。これぞオトナの余裕。さぁ、素敵なROCK SHOWの始まりだよ!

②「EXPOS(BAND EXPOのテーマ)」
作詞曲:コーノカオル
歌唱:青木孝明
間髪入れずにブゥーンとベースの一吠えで、一気にテンションが上がる!BAND EXPOのテーマソングだ。それにふさわしくバンドのエクスプロージョンするグルーヴと疾走感、青木さんのバンドで歌う喜びに溢れてる溌剌としたボーカル、西村さんの発狂する金切り声のようなギターソロ、何もかもが圧巻。ロックンロール!いきなりハイライトが来ちゃってこの先大丈夫か?大丈夫なんだな、これが。この気合いとテンションは形を変えながらアルバム最後まで続いていく。恐ろしや。

③「太陽の塔
作詞:コーノカオル・青木孝明/作曲:コーノカオル
歌唱:西村哲也
EXPOと言えば、やはり太陽の塔だろう。太陽の塔を真下から見上げた時のあの眩しさのようなキラキラしたキーボードのリズムから始まる、優しく柔らかなポップナンバー。(メンバーで最も数多くEXPO'70を体験した)西村さんのボーカルが、もう泣きたくなるほど晴れ晴れしている。聴くたびにウズウズして、今すぐ太陽の塔に会いに走り出したくて仕方がない。私自身これまで何度か太陽の塔に会ったが、いつも感じる何とも言えぬ感慨を見事に歌にしてくれている。”全然わからない 考えてること だけど凄くよくわかる”ホントそうなのだ。その正体不明の訳の分からなさは終盤のプログレな怪しい音像で表現されている、それがまた愛情の表れ。今度、太陽の塔に会いに行く際は、大阪モノレールに乗った辺りからこの曲をひたすらリピートだな。

④「Switch」
作詞曲:青木孝明
歌唱:青木孝明
アルバムは更にどんどんギアを上げていく。この曲はYouTubeのライヴ映像で何度も観て痺れていたが、レコードで聴いてもやはり痺れる。青木さんの鋭く刻まれるリズムギターと西村さんのトリッキーでサイケ色を帯びたリードギターとの絡みがめちゃくちゃカッコイイ!矢部さん特有の後ろ重心のスネアのビートにもハートをビシバシ撃ち抜かれ、ハネてウネるコーノさんのベースはファンキーで...とどのつまり、これもまたロックンロール!である。最高、のひと言。

⑤「Space Mountain Top」
作詞曲:コーノカオル
歌唱:コーノカオル
そして、スイッチはONされ、スペースシャトルが打ち上がった。かのように壮大なスペーシー極まりないシンセサイザーの響きで、意識は一気に宇宙空間へ放り投げられる。それはトッド・ラングレンユートピアを彷彿とさせるSFシンフォニー、その奥には冨田勲への憧れも見え隠れする。このアルバムを聴く前は、この三人だからポール・マッカートニー的な曲が並ぶだろうと想像していたら、蓋を開ければトッド・ラングレン色が強かった。ノリはパワーポップなロックンロールでも、メロディーはメロウで洗練されているのが嬉しい。

⑥「渇き」
作詞:青木孝明/作曲:西村哲也
歌唱:西村哲也
そうやって宇宙に舞い上がったかと思えば、次の瞬間はもう地上に降りている。実に西村さんらしいアーシーで陰りのあるじっとりとしたロックナンバー。これも事前にYouTubeでライヴ映像を観ていたが、アルバムの統一感を意識しているのか、それよりもテンポがやや軽快なように感じる。青木さんの書いた歌詞がまたとても西村ワールドなのが面白い化学反応だ。後ろで幽玄に鳴り響くペダルスティールは、まどろんでいるとあの世に連れてかれるようなヤバさがある。

⑦「Memories」
作詞曲:コーノカオル
歌唱:コーノカオル・青木孝明・西村哲也
アルバムのMVにもなっているコーノさん渾身のザ・名曲である。ウエストコーストのハイウェイを爽やかな風を切ってドライヴしているかのようなバンドサウンドに、どこを切っても美しく切ないメロディーが気持ち良く乗る。何と言っても、三人の心のこもったボーカル回しにグッときてウルッとくる。そして、私は4分48秒辺りの矢部さんのフィルインにトドメを刺される。嗚呼、バンドってイイですね。前半でも言ったように、この歌を聴くと楽しいことも苦いこともいろんな記憶が呼び起こされて堪らない。これほどの名曲は普通ならアルバムのラストに配置されそうなものだが、これで終わらず、ここからまだもうひと盛り上がりするのだから...


Memories/BAND EXPO

⑧「何処へ(History)」
作詞曲:青木孝明
歌唱:青木孝明
余韻を切り裂くように聞こえてくるのは、ブリブリのベースとギターのユニゾンでのゾクゾクするようなイントロ(青木さんのいかりや長さんよろしく「後半行ってみよう!」という掛け声が聞こえてくるようだ)。そう、しみじみしている場合ではないのである。これは紛うことなきロックアルバムなのだ。青木さん真骨頂の颯爽と駆け抜けていくパワーポップチューン、この瑞々しさたるや!青木さんの全身全霊全力の歌いっぷりにスカーッとする。そんな青木さんの勢いに乗せられたノリノリなバンド演奏も最強だし、間奏と最後に飛び出るユニゾンギターソロにはもう降参!私の好きなロックの魅力が存分に詰まってる、私的ベストトラック。

⑨「The End of The World」
作詞曲:コーノカオル
歌唱:青木孝明・コーノカオル
コーノカオル節全開のトロけるメロウな逸品、BAND EXPO流AORか。カーネーション直枝政広さんの推薦コメントに初期スティーリー・ダンとあったが、この曲を指しているのだろう。二人のボーカルの滑らかな受け渡しやハーモニー、西村さん必殺のオブリがともかく艶っぽい。このままムーディーにスムースには終わらず、最後に突如として曲調が変わり、サーカスみたいなドンチャン騒ぎになるのが、なぜだか世界の終わり感を醸し出していて何とも不思議だ。

⑩「明日」
作詞曲:青木孝明
歌唱:青木孝明
世界は終わっても明日はやって来る。2分41秒のささやかな陽だまりカントリーポップ。ロックアルバムにこういう曲を入れ込んでくるのは、流石のキャリアが為せる技だろうか。もちろん、西村さんのペダルスティールが大活躍である(ここでようやくカントリーの楽器らしい音色)。最後は三人の美しいコーラスハーモニーで締める、素晴らしく粋な演出だ。私的にはここでアルバム本編終了、次の曲からアンコール突入という構成で聴いている。

⑪「Yellowstone」
作曲:青木孝明
陰鬱なムードながら熱く燃え上がるインスト曲。青木さんのソロ作で架空の映画のサウンドトラック盤『Experience America! Soundtrack』に収録されていた曲のBAND EXPO版。強力に伸びるスライドギターに爆裂疾走するドラム、ロックの極みのようなバンドサウンド。インスト曲だからと言って決して送りバントではない、会心のフルスイング。歌モノと同じくらいの充実度で迫ってくる。

⑫「Second Shock Blues」
作詞曲:西村哲也
歌唱:西村哲也
ラストナンバーはエドガーウインターグループ(恐怖のショック療法!)を思わせるようなハードブルーズグラムロックで豪快に。これは西村さんソロ作『YOUNG RIVER』収録曲のリメイクだが、西村さんのボーカルがこれまでになくハッチャけている(冒頭のカウントからキまってる)。ズッコケギャング団の珍道中みたいな風情、カッコイイんだがどこか情けないのが愛らしい。最後の最後までこれはロックアルバムなんだぜという気概とバンド愛に満ち満ちた何て幸せなエンディングなのだろう!BAND EXPOの1stアルバム、ロックの国からこんにちは。

そして、また最初に戻り、延々リピートが始まるのである...


『BAND EXPO』BAND EXPO(2016年)

01. Showtime
02. EXPOS(BAND EXPOのテーマ)
03. 太陽の塔
04. Switch
05. Space Mountain Top
06. 渇き
07. Memories
08. 何処へ(History)
09. The End Of The World
10. 明日
11. Yellowstone
12. Second Shock Blues

Mixed by 鳥羽修 at Smalltown Studio
Mastared by 中村宗一郎 at Peace Music

Illustration by 眼福ユウコ

BAND EXPO are...
西村哲也:Vocal,Chorus,Electric & Acoustic Guitar,Pedal Steel,
     Piano,Electric Piano,Organ,Synthesizer,Blues Harp & Mandolin
青木孝明:Vocal,Chorus,Electric & Acoustic Guitar,Bass Guitar,Piano & Organ
コーノカオル:Vocal,Chorus,Bass Guitar,Piano,Organ & Synthesizer
矢部浩志:Drums

『BAND EXPO』 BAND EXPO【前半】

さて、大変お待たせしました!BAND EXPOの1stアルバム『BAND EXPO』が届きました!心の奥底から待ち望んでいたので発売日までもかなり長かったですが、某ユニオンの特典のことで発売日に間に合わず、そこから発送されるまでの2日間くらいはヤキモキして猛烈に長く感じました。なので、その分、というか何というか、現物を手に取って眼福ユウコさんが描かれたイカしたジャケットを眺め初めてその音に触れた時の感動と興奮が20%増量したような、そんな気がします。特典のトートバッグもかなり素敵な出来だったので、結果オーライ!と言うことにしておきましょう。届いてからは、もう狂ったように何度も聴いています。

BAND EXPO

BAND EXPO

これまで散々語ってきたが、BAND EXPOとは青木孝明、西村哲也、コーノカオルの三人に矢部浩志(もはやサポートではない)という、私にとっては大好きなSSWで演奏家しかいないウルトラスーパーバンドなので、わかっちゃいるけど、いや、わかっちゃいる以上に素晴らしい傑作ポップロックアルバムだったものだから、涙の虹が架かるほど嬉しい。嬉しすぎる。BAND EXPOを日本語に訳せば、バンド万国博覧会。名前の通り、東西の偉大な古き良きロックバンド達から吸収した美味しいエッセンスを散りばめ、メンバーそれぞれの研ぎ澄まされた職人的ポップセンスで料理し、個性と個性がぶつかり合い溶け合ったエネルギッシュなハーモニーが奏でられる。それは流石の鉄壁なバンドアンサンブルなのだが、所々で無邪気にヤンチャに音に戯れる笑い顔が浮かぶ。何と言っても、聴き心地がフレッシュ!なのが最高である。各々キャリア20年を超えていようが新人バンド、ここにもロックバンドの1stアルバムの魔法が炸裂しているようだ。そして、このアルバムに収録されているインストナンバーを含め12曲の全てが全て名曲オンパレードで、メロディアス極まりない。特に、メンバー最年少コーノさんの目を見張る大活躍ぶり(同時発売のソロアルバム『黄金の足跡』も名曲だらけ!)は、きっと他の先輩メンバーの作曲魂に火をつけたに違いない。そんな相乗効果で、おそらく50年前の人に聴かせても、50年後の人に聴かせても、イイ曲だね!と言わせる力のある魅力的で普遍的なメロディーが詰まっている。なので、これからも末永く付き合う作品になるだろう、これからもよろしく!

アルバム全編に漂うサウンドは、トッド・ラングレンユートピアにも通じる、レトロフューチャーなスペーシーな響き。改めて、バンド名はBAND EXPOであることからも匂うように、そのサウンドの響きは青木さんを筆頭に1970年の日本万国博覧会(EXPO'70)に想いを馳せる人たちが集まったバンドであること(コーノさんは当時1歳ではあるが)の表れなのだろう。私自身は79年生まれ、歴史として記録映像や写真などで万博のことを何となく知ったような世代なので、特に縁はない...と思いきや。私は山と田んぼに囲まれた兵庫の田舎で生まれ育ったのだけど、家族で近所のとあるラーメン屋によく行っていた。その店の造りは全面ガラス張りの不思議なエキゾ感のある変わった形状のハウスで、妙に印象的だった。それで、割と最近、万博について興味が湧いてきてネットで調べていると、なんとその店が万博のウルグアイ館だったことが判明した。その隣りにあった喫茶店はペルー館で。それを知ったからには、帰省した時にもう一度ちゃんと見ておきたいと思うも、どうやら取り壊されてしまったようだ。残念無念ではあるが、万博との薄い縁があったのはちょっと嬉しい。なので、超個人的には、このキラキラしたサウンドスケープの先には、あのラーメン屋のある風景と濃い目の味噌ラーメン&味噌だれの餃子の味に辿り着くのである(なんだそれ)。それはともかく、EXPO'70を実体験した、カラフルでやけに眩しい近未来への夢と希望の光にワクワクしたであろう少年たちの心象風景が、BAND EXPOのポップでロックでドリーミーなサウンドの何よりも大きなルーツなのではないかと想像する。と楽しい。聴き手にとっては、それがEXPO'70かどうかに関わらず、純真無垢な子どもの頃の何かにウキウキしたりトキめいた記憶(Memories)にコミットするような音楽でありサウンドなのではないだろうか。決して渋くはない、晴れ晴れとした夢のあるポップソングばかりである。


Memories/BAND EXPO

とにかく2016年に新しいバンドの新しい名盤が生まれた!喜び、興奮せざるをえないのです。是非ともポップ&ロック愛好家の皆様にも味わっていただきたいです、洋楽派も邦楽派も。って、もういくらだって語れそうでヤバイので、ここで一旦止めます。次回は、全曲感想いきますよ。


『BAND EXPO』BAND EXPO(2016年)

01. Showtime
02. EXPOS(BAND EXPOのテーマ)
03. 太陽の塔
04. Switch
05. Space Mountain Top
06. 渇き
07. Memories
08. 何処へ(History)
09. The End Of The World
10. 明日
11. Yellowstone
12. Second Shock Blues

Mixed by 鳥羽修 at Smalltown Studio
Mastared by 中村宗一郎 at Peace Music

Illustration by 眼福ユウコ

BAND EXPO are...
西村哲也:Vocal,Chorus,Electric & Acoustic Guitar,Pedal Steel,
     Piano,Electric Piano,Organ,Synthesizer,Blues Harp & Mandolin
青木孝明:Vocal,Chorus,Electric & Acoustic Guitar,Bass Guitar,Piano & Organ
コーノカオル:Vocal,Chorus,Bass Guitar,Piano,Organ & Synthesizer
矢部浩志:Drums

yojikとwandaの”ナツ三部作”

夏の終わりにとても素敵なプレゼントが届いたので、おすそ分け。
↓ここのサイトで、男女二人組ポップデュオyojikとwandaの夏にまつわる未発表音源3曲"ナツ三部作"を期間限定(10/31まで)でフリーダウンロードできます。

yojikwanda.bandcamp.com

第一弾「ナツ / Summer」
第二弾「夜は終わらない / Night's not closing」
第三弾「午前5時 / AM5:00」

私は以前からyojikとwandaという名前は知っていて、とても良いらしいという噂は聞いていても、音源をちゃんと聴いたことなかったぐうたら人間だったので、この機会はありがたいとダウンロードしてみました。無料なので、デモみたいな感じかなと思いきや、強力なメンバーでのバンド演奏で完全にしっかりレコーディングされた音源だったので、嬉しい驚き!そして、何と言っても、どれもがホント魅力的な名曲だったので、もっと嬉しい驚き‼‼無料なのが申し訳ないくらいです。

第一弾を聴いたときは、今流行の(?)ゆるふわ系ほのぼのシティポップスかなと思っていたら、第二弾はマリア・マルダーみたくノスタルジックでジャジィなオトナムード、第三弾は二胡のサイケな響きとたたみかけるボーカルがなにか鬼気迫るようなエモーショナルなナンバーで、三曲ともまるで表情が違っていたのにすっかり心惹かれました。また、共通して漂う心地良い倦怠がニッポンの夏風情を感じますね(こういう夏が好きなんです)。楽しみ方としては、第一弾がお昼、第二弾が夜、第三弾が明け方と時間が流れていくので、順番に三曲続けて聴くと、物語性を帯びてきて、よりグッときちゃいますよ。”ナツ三部作”ですからね。

何よりもひとつ試しにダウンロードしてみて下さい!私はこれでファンになりました。


↓二人だけで演奏する「午前5時」も素晴らしい、緊張感と色気。

yojikとwanda 201412月

BAND EXPOな人たち③ 西村哲也さん

Sitting on the highway...夏は終わった...。まだまだ残暑は厳しいらしいですが、いよいよ9月になりましたので、嗚呼、BAND EXPOの1stアルバム『BAND EXPO』の発売(9/28)が待ち切れない!自分勝手にメンバー紹介シリーズ第三弾。は、もちろん西村哲也さんです。個人的にいろいろ思い入れの強い方であり、最も好きなギタリストがレコード・コレクターズ誌2013年1月号の『特集 ニッポンのギタリスト名鑑』に載らなかった恨みつらみも込めて(笑)、やたら長くなるのは目に見えてますが、どうぞひとつお付き合いを。

BAND EXPO

BAND EXPO

まずは西村哲也さんとの出会いについて。西村さんと言えば、グランドファーザーズのギタリストとして知られているでしょう。私は高校時代にカーネーションをラジオで聴いてからひねくれた音楽リスナー人生を歩み始め、自然とカーネーションに関連のあるアーティストやバンドを調べて聴いていく作業に入っていくのですが、そんな中で青山陽一さんソロからグランドファーザーズを知ります(西村さんの存在を把握)。初めて西村さんの生演奏を観たのは、2003年9月21日『音楽感謝 Vol.4』@京都クラブメトロで、青山陽一さんのサポートメンバーとしてでした(アコースティック編成。もう一人のメンバーがダリエさん、という不思議なトリオ)。確か西村さんはソロ曲「Snowbird」だったかを歌ったような記憶がありますが、共演にカーネーションがいたので、大田譲さんが加わってプチ・グランドファーザーズ再結成!?「Slit No.1」が聴けたのが至福の喜びでした。そして、しばらく経ったある時、カーネーションを通じて知り合ったOさんという方から、「けいすけさんは、見た目や喋ってる雰囲気が西村哲也さんとよく似ているので、きっと気に入ると思います」と西村さんのソロアルバム『ヘンリーの憂鬱』を焼いたCDをいただきます(運命的!?)。聴いてみれば、まさしく私の大好きな音世界で、まんまと気に入ってしまったのでした(笑)。で、これがまたいいタイミングで、ベスト盤的ミニアルバム『ウォーターメロン砦』(2005年作品。花*花こじまいづみさんや面影ラッキーホールのメンバーが参加。なんと神戸タワレコでは試聴機に入ってプッシュされていた!)がリリースされ、アーシーな黄昏スワンプロックに完全にヤられます。その年の年末12月18日に拾得(人生初拾得!)でKID AT A-LOW'Sのゲストで西村さんが出るというので(チャージ1000円だし)、雪降る中、観に行きました。アコースティックギターの弾き語りでライ・クーダー「Great Dream From Heaven」をサラリと完璧に演奏したり、セッションでwanDerさんのエレキギターを借りてサラリと粋なフレーズを弾いたり、なんかもうずっと静かに興奮していました。エレクトリックバンド編成(PORK PIE HATSというバンド名)では、2006年9月7日に京都アバンギルドでの芸妓ジャズシンガーMAKOTOさんとの共演ライヴが初めてでしたが、何と言っても、同年12月8日拾得での初ワンマンライヴが最大のターニングポイントでした。出演者5名(ゲストのwanDerさん含む)に対して客席7名という切ない状況にも関わらず、ライヴ自体は非常に気持ちの入った熱演で胸打たれました。西村ファンは漏れなく何かいけないスイッチが入った時の西村さんの狂気っぷりを愛していますが、この時の半ばヤケクソ気味の暴れ方は過去最狂でした。「何でもいい」間奏での、ギター背中弾き、歯弾き、靴弾き(失敗)、胴上げ、激しい足踏み...もはやギターソロを超越したただただエネルギーの暴発。西村さんはソロから曲に戻るときに手を上げてメンバーにサインを送るのですが、この時はテンションが上がりすぎて何度も腕を振り上げるものだから、凄腕揃いのバンドメンバーでもそのタイミングが判別つかず、もうしっちゃかめっちゃかに。比較的クールに鑑賞する私でもこのシーンには拳を握りしめて燃えたぎりました、これがロックや!と。きっと拾得マスターのテリーさんも感銘を受けてらしたと思います。終演後、PORK PIE HATSドラマーの五十川清さん(あのEP-4の!)曰く「ギターソロは一番盛り上がったところでスッと止めるのがいいんだよ。でも、西村くんはそこからまだ続けるから、最後尻つぼみしちゃう(笑)」。五十川さんは後ろでドラムを叩きながら、西村さんのギタープレイがキレ始めると、来たよ!といつもニコニコ楽しそうでした(2010年に残念ながら亡くなられました。未だ悲しい)。とにかく、この日を境に西村さんの大・大・大ファンになり、もっと応援せねばならない、広く音楽愛好家たちに知らしめないといけないと(勝手に)心を決めたのでした。


Good Bye/GRANDFATHERS

西村哲也さんのそんなライヴでキレるパフォーマンスも然ることながら、真っ当にロックギタリストとして最高なのです。グラムロックプログレから洋楽に入り、はっぴいえんどよりも四人囃子や外道が好きで、ロバート・フリップジミー・ペイジ、ロイ・ブキャナン、フランク・ザッパライ・クーダーといった一癖も二癖もある偉大なギタリストから血肉を受け継いでいる(と感じている)。すぐにそれと判る土の香り芳しい温もりのある音色(66年製フェンダーテレキャスターがメイン)や独特に泣くフレージング、もう何もかもがグッときて仕方がない。レコード・コレクターズ誌2014年4月号での小川真一さんによるソロ作『運命の彼のメロディ』レヴューの中で、ギタリストとしての西村さんを「ともかくオブリガートがべらぼうに上手い。そのフレージングのすべてがそのまま一曲になっていくほどで、これは作曲といってもいいだろう」と評しておられて、まさしくそう!と膝を打った。歌伴に徹する時のボーカルの傍らで微かに鳴っているほんの些細なフレーズも歌心たっぷりで、それは鈴木茂、徳武弘文、告井延隆、村松邦男伊藤銀次...70年代のイナたいシティポップスを彩ったギタリストの系譜にもあるのだろうけど、時に譜面に起こせないような謎の奇怪なフレーズが飛び出したり、胸をえぐるように掻き鳴らされるギターソロはニューウェイヴどっぷり世代ならではなのかもしれない。また、西村哲也節の大きな特徴として、スライドギターを多用し、ここぞという時のスライドソロのあまりに美しいメロディアスぶりは天下一品(面影ラッキーホール「おみそしるあっためてのみなね」聴かれたし!号泣必至)で、歌メロと同じように思わず一緒に口ずさんでしまうほどである。西村さんが奏でるそんなハッピー・サッドな響きは私の心の栄養だ。


面影ラッキーホール "好きな男の名前腕にコンパスの針でかいた" @ WWW

京都にいながらOnly Love Hurts面影ラッキーホール)やメトロファルスのリードギターを務める西村哲也さん、その事実だけでも名ギタリストの称号を与えてもいいだろうし、福岡史朗さんも西村さんのことを「達人」と称しているけれど、存在をあまり知られてなさそうなのは、その控え目なお人柄も関係しているのかもしれない。クラスではおとなしくて目立たず、昼休みは静かにひとり本を読んでいる心優しきオタク少年が、そのままオトナになったような方(あくまでも例えですよ)。西村さんの生誕50周年記念ライヴ@拾得にゲストで出ていたこじまいづみさんがMCで「花*花がメジャーデビューすることになって、初めて東京でレコーディングする時に、どんなスタジオミュージシャンが来るのだろう?いかにも業界人みたいな気取った人なのだろうなとドキドキしていたら、えらく腰の低い人が入ってきて。レコーディング中も、すいません、すいませんとずっと謝ってるし。それが西村さんでした(笑)」面白いくらいにハッキリと絵が浮かぶ。そういういかにも穏やかな空気をまとった人がステージに上がってエレキギターをガッと弾き出したら狂人に豹変する、あの瞬間を目撃するために足繁くライヴに通う。普段の私は自分を抑えて地味に生きているような人間なもので、観ているだけでもあの瞬間にスーッと解放される。ありがたいお兄ちゃんです(兄弟と間違われる)。


50/西村哲也

シンガー&ソングライターとしてもまったくもって素晴らしい西村哲也さんですが、そのことについて書いていたら終りが見えないので、今回はギタリストとしての西村さんの魅力を中心に書いてみました(あとはBAND EXPOのアルバムの感想で)。一度だけ観たBAND EXPOのライヴでは、ニール・ヤング「Down By The River」を西村さんがロイ・ブキャナンになりきってカヴァーしていましたが、凄まじいギター演奏で呆気にとられ、終わった後しばらく会場がシーンと静まり返ったのを付け加えておきます。では、最後にBAND EXPOのライヴ映像を観ていただきましょう。西村さんらしいダークな質感を持ったじっとりとしたナンバーです。アルバム楽しみだなぁ、ホントに。


渇き/BAND EXPO

ミュージックビデオが公開されました!3人のボーカル回しが泣ける感動の名曲「Memories」です。ギターはもちろんですが、ペダルスティールやマンドリンの温かい響きは西村さんによるものでしょう。


Memories/BAND EXPO

『BOOGIEST BAND IN TOWN』 HERSHEY's

リオオリンピックや甲子園が終わり、もう夏も終わりですね...なんて感傷に浸るどころか、ますます死ぬほど暑い毎日。まだまだ、ギンギンギラギラの夏なんです。うむ、ギンギンギラギラ...ギンギンギラギラなロックと言えば、そう、グラムロックだ。という絶好の!?タイミングで、最高のグラムロック名盤が我が家にやってきた!HERSHEY'sの2ndアルバム『BOOGIEST BAND IN TOWN』、邦題は”町一番のブギーバンド”。

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HERSHEY'sは大阪の男女混成4人組グラムロックバンド(ROLLYの由緒正しき後輩と言えそうな)。彼らを知ったのはつい最近のことで。毎年ゴールデンウィークに、神戸の人情味溢れるディープスポット新開地で行われている地域密着型音楽フェス新開地音楽祭(神戸に長く住んでいながら、実は知らなかった...)。何やら京都のパワーポップバンドThe Mayflowersが出演するというので、観に行きました。他にも中島孝withカンバスやサウストゥサウスのクンチョーさんのバンドなどが観れたり、美味そうな匂いを放つお店もいっぱい出ていて、地元のおっちゃんおばちゃんが気持ち良さそうに音楽に酒に酔っていたり、派手なメイクのおっかない人たちがいたり、ああ素敵な祭りだなぁなんて、すっかり楽しみました。その後、新開地音楽祭の映像が何かあがってないかなぁとYouTubeをチェックしていると、うん?もしやあの派手なメイクのおっかない人たちでは?と思しきサムネイルがあったので、そのライヴ映像を観てみたら、ワォ!なんてカッコイイんだ!と一瞬で惚れてしまいました(同時に、生で観なかったことを激しく後悔)。それがHERSHEY'sというバンド。彼らの風貌に違わぬ怪しくキャッチーな楽曲にバンドサウンドの鳴りの良さとやたらウマい演奏。特に、女王様ベーシストHERSHEYの華麗なプレイにやられたのでした。


神戸 新開地音楽祭 2016 【HERSHEY'S】スクエアステージ .2

そんなわけでライヴ映像を毎日のように観ては恋い焦がれ、文字通り待望のニューアルバム『BOOGIEST BAND IN TOWN』は彼らのHPの通販で購入。ペライチのジャケットの裏側には色付きボールペンでメンバーのサインが書いてあって、家内制手工業ぶりにほっこり...したのもつかの間、再生ボタンを押してみれば、2016年とは思えない狂暴なサウンドで面食らう。まるで60年代のThe Moveみたいだ。狙いというよりは録音環境がなかなか厳しくて、結果こうなっちゃったのだろうな。まぁ普段からいろんな音質の音源を聴いているので、問題ナッシング。いや、むしろ、何度も聴いてみれば、この音楽にはこのワイルドで濃厚な音がふさわしいんじゃないかとさえ思えてしまう。アイデアをふんだんに盛り込んで、良い楽曲、良いアレンジ、良い演奏をしっかり録音すれば、ちゃんと伝わるのですよ。

彼らの音楽はひと言で言えば、グラムロック(曲名見てるだけでもニヤける)。なのだが、もっと広く60~70年代の英国ポップロックの旨味がこれでもかと凝縮されている。デヴィッド・ボウイT.レックスモット・ザ・フープルレッド・ツェッペリン、スレイド、スウィート、ロイ・ウッド、ロキシー・ミュージックコックニー・レベル、クィーン、パイロット、ビートルズモンキーズモンティ・パイソン、バブルガム・ポップ勢、サディスティック・ミカ・バンドなどなど、ボーカル&ギターのAICHANはA級もB級もたぶんきっと全部聴いているのではないだろうか(70年代の日本の歌謡曲、ニューミュージック、フォークまでも)。そういったマニアックな記号を散りばめながら、とびきりチャーミングで退廃的でゴキゲンなポップナンバー目白押しで、私のポップのツボを押されまくっている。どの曲もグラムロックらしく芝居がかっていて、1曲1曲歌の世界の主人公が変われば、AICHANのボーカルも千変万化(鮮やか!)、そこに絡むHERSHEYの舌足らずでキュートな歌声もたまらない。まるでモット・ザ・フープル「土曜日の誘惑」でのイアン・ハンターとリンジー・ディ・ポールのよう、つまり大大大好物。とか言っていると、なんかこう懐古趣味的なバンドかと思われるかもしれないけど、そもそもグラムロックは性別や時代を超えた人類離れした人間臭い音楽なのだから、新しいとか古いとかで語るのはナンセンスである。AICHANの多彩に爆裂するギター、HERSHEYのクールにドライヴするベース、HATOのシンプルに跳ねるピアノ、HYGZOのスカッと痛快なドラム、ただただ彼らの町一番のロックンロールにまみれて歌って踊るべし。TO BE PLAYED AT MAXIMUM VOLUME!!


HERSHEY's もっとだ!!フープル2016.3.23 代々木Zher the ZOO

もっともっと!もっともっと!もっと頂戴よロケンロー!
ライヴ観に行かないとなぁ、おっかないなぁ(笑)。いつかジャック達とB級ロック対決してほしいな。


『BOOGIEST BAND IN TOWN』 HERSHEY's(2016年)

01. ハーシーズのテーマ
02. ボウイフレンド
03. 恋のバブルガムサマー
04. 電流Boogie
05. デカダンス黄金狂時代
06. おしゃまな日曜日
07. すべての若き馬鹿野郎ども
08. ウサギノハミング
09. ROCK★STAR
10. Cat in suicide
11. 恋のロンドンポップ!!
12. blue velvet skirt
13. WILD HONEY
14. もっとだ!フープル
15. 町一番のブギーバンド!!

HERSHEY's are...
AICHAN (Gt,Vo) HERSHEY (Ba,Vo) HATO (Key, Cho) HYGZO (Dr, Cho)

※先着100名にもらえるカヴァー曲集の特典CDがまた最高で、花の名前のバンドとか座布団運んでる人のグループとか、見事にHERSHEY's流グラムロックアレンジでアッと驚く為五郎。もう残り少ないらしいので、お早めに。

『PLUG AWAY+』 大なり><小なり

暑すぎる夏をさらに熱くする熱中症必至?な大なり><小なりの新作EPが8/15にOTOTOYでハイレゾ配信された。早速ダウンロードし、部屋や街でも聴きまくり、すっかり熱中している。

ototoy.jp

『PLUG AWAY+』は、彼らがリスペクトしてやまないグランドファーザーズとの共演ライヴのセッション用に書き下ろされた新曲「PLUG AWAY」に、昨年リリースされた1stフルアルバム『フレット』から元カーネーションの鳥羽修さんが新たにミックスした4曲をプラスした5曲入りEP。

まずは何はともあれ最新曲「PLUG AWAY」が素ん晴らしい傑作ロックチューンで嬉しくなっちゃうのだ(作詞曲:えみコバーン/編曲:宙GGPキハラ/プロデュース:安部OHJI/ミックス:鳥羽修)。1stにして集大成的な渾身の力作『フレット』レコーディングからレコ発ツアーを経て、バンドアンサンブルは更に強化され、勢いと脂がノリまくった今の大なり><小なりの魅力が余すことなく大爆発している。イントロのTHE WHO「Baba O'riley」での壮大なシンセサイザーを彷彿とさせるスペーシーなギターの響きから、もうワクワクが止まらない。そこにドラムがズシャーン ズシャーン ズシャーンと来て、ベースがドドッ ドドッ ドドッと入ってくる女性リズム隊、姐さんどれだけ男前なんだ!プログレ的に変化するリズム展開に、ヨナフィとキハラさんのダイナミックな熱血ギターソロバトル、QUEENばりの分厚くサイケなコーラス。そう、ロックは生きている。歌詞もとてもユニークな視点で、1000年後の人類?が1000年前の現代の人類を振り返って、ちょっと呆れている。そう言えば、KIRINJIがRHYMESTERとコラボした新曲「The Great Journey」は現在に至るまでの人類の進化と歴史を歌っているようだが、それとは逆の発想と言えるかもしれない。ともかく、「PLUG AWAY」はサウンド&アレンジや詞の世界ともにスケールが果てしなくデカい曲である。それでいて、決して高尚なアートにはならず、近所の(ちょっと変わった)気のいいお兄ちゃんお姉ちゃん的な親しみやすさが滲み出るのが大なり><小なりのチャーミングさだろう。映画ではなく、漫画のようなロック。最高である。

残りの『フレット』収録の4曲は日本のチャド・ブレイクこと鳥羽修さんの手によって、驚くほど変身している(新曲と言ってもいいくらい)。グランドファーザーズGRANDFATHERS』、青山陽一『Blues For Tomato』、西村哲也『運命の彼のメロディ』、加藤千晶『蟻と梨』、青木孝明『さようなら、夢』...名盤の陰に鳥羽修ミックスあり。私も全幅の信頼を置いている方なので、どう生まれ変わるか楽しみにしていたが、想像を軽く超えていた。『フレット』はライヴ盤に近いようなワイルドなミックスだったが、今回の鳥羽修ミックスバージョンでは、よりメリハリのある洗練されたアンサンブルに仕上がっている。主役から脇役までどの楽器の音もしっかり聞かせながら、メンバーの歌やコーラスをより前に押し出し、テンポを速くしているわけでもないのに疾走感がやたら増していたり、随所に遊び心のあるニクイ演出もあったり、鳥羽マジック炸裂しまくりだ(心から楽しんでいる鳥羽さんの顔が目に浮かぶ)。そして、ミックスというのはほとんどアレンジなのだな、ということを思い知らされる。そんな風に『フレット』と比較しながら聴くのも面白い、面白すぎる。

配信音源は気軽にすぐに入手できる(しかも、ハイレゾなので当然音が良い)ので、少しでも気になる方は是非。特に、カーネーションやKIRINJIの新譜が最高だと思っている人にも聴いていただきたいな。負けてないよ。


『PLUG AWAY+』 大なり><小なり(2016年)

1. PLUG AWAY
2. かんたんです
3. ハトなんですが
4. 変身
5. フレット

BAND EXPOな人たち② 青木孝明さん

嗚呼、BAND EXPOの1stアルバム『BAND EXPO』の発売(9/28)が待ち切れない!

BAND EXPO(仮タイトル)

BAND EXPO(仮タイトル)

そんなわけで、自分勝手にメンバーを紹介しちゃいます第二弾は、BAND EXPOリーダーの青木孝明さん。そもそもは青木さんのお店オルタネイティヴカフェでの、青木さんと河野薫さん、西村哲也さんとの共演ライヴがきっかけで、余ほどウマが合ったのでしょう、バンドやろうぜ!BAND EXPOが生まれたのです(ありがたい)。私はこれまで一度だけBAND EXPOのライヴを観たことがあるのですが(2013年7月@吉祥寺マンダラ2。まだオリジナル曲がなく、それぞれのソロ曲を演奏するスタイルでした)、その時の青木さんの心から楽しそうなお顔がとにかく印象的でした。大好きな人たちとバンドやれて超嬉しい!というオーラが眩しかったです。そんなどこまでも音楽にピュアなシンガーソングライターで演奏家です。


君がここにいる-BAND EXPO

私が青木孝明さんの存在を最初に知ったのは、青山陽一さんのバンドthe BM'sのベーシストとしてでした。青山さんは98年に徳間ジャパンからメジャーデビュー、青木さんはその勢い最高潮の徳間時代(『SO FAR, SO CLOSE』『EQ』『Bugcity』)での無敵なグルーヴを支えていました。特に、「難破船のセイラー」の荒波のようにうねりまくる(フレットレス)ベースプレイは日本のロック史に残る名演だと思います。なんてことを書きながら、この時期のBM'sのライヴを観なかったのを激しく後悔してきました...。現在のBM'sの千ヶ崎学さんは黒っぽいファンキーさが売りのベーシストですが、青木さんはもっとブリティッシュ寄りのスタイリッシュでロックなベースプレイでしょうか。背もシュッと高くてニック・ロウを思わせるような雰囲気ありますね。

そう言えば、テレビでは2001年にNHKスタジオパークからこんにちは」で、あがた森魚さんのバックで12弦アコースティックギターを弾いている青木さんの姿を観ました(ビデオ録画して何度か)。それから随分と時は流れて、実際に生で青木さんが歌っているのを観たのは、2010年1月@梅田ムジカジャポニカでのアコースティックライヴ。青木さんの他の出演者は、鈴木博文さん、青山陽一さん、西村哲也さんというメトロトロンなイベントでした。青木さんの生真面目でポップ職人的な弾き語りも素敵でしたが、アンコールの全員セッションが終わっても拍手が鳴り止まず、しょうがないなと博文さんが、じゃあ「くれない埠頭」なら出来るでしょうとみんなに無茶ぶりした時の、青木さんの見事な困り顔を未だに鮮烈に覚えています(笑)。以下の映像は、その時の青山さんと青木さんのセッションの模様、青木さんのギター伴奏も完璧です。


Yoichi Aoyama - Seed Song

そこからまた時が経って、2012年発表の最新作『さようなら、夢』で遅ればせながら初めて青木孝明さんのレコードを買いました。発売前にtwitterで西池崇さんが「傷ついた翼」のMVを紹介されていたのがきっかけだったと思います。そのMVを観て、あまりにも心に染み入ったので、これは絶対に聴かないといけないと。ほとんどをミドル~スローな曲で構成されたシンガーソングライター然としたじっくりと歌が堪能できる作品です。『さようなら、夢』というタイトルからも分かるように3.11以降の重たい気分は漂ってはいますが、瑞々しいメロディーと絶妙にカラフルなアレンジが素晴らしく。合間にインスト曲を挟み込んだりして、アルバムとしての流れも実に美しいです。ギター、ベース、ドラム、キーボードは青木さん自身の演奏というのがまた驚きで、スコーンと抜けるドラムがとても心地良いです(レーベルTOKYO MORの田中さんが「Band On The Runのポール・マッカートニーみたいなドラムだね」と仰っていて、まさしく!)。ギターがあればなんとかなるさ!と無邪気にロックンロールする篠原太郎さんとの「ギター」も最高で...おっとアルバムレヴューみたいになってしまいましたが、この年は加藤千晶『蟻と梨』と共に本当に何度も聴いて、精神的にしんどい時に救われました。そうやって一気に青木さんの音楽に惚れ込み、そこから旧譜を集めることになります。年末に大阪チャクラでのワタフェイ西村哲也さんを迎えた『さようなら、夢』レコ発ライヴを観に行き(ゴンチチチチ松村さんも来られていた!)、青木さんに西村さんがギター弾きまくっているのでと薦められて『Melody Circle』('96)を買ったり。


青木孝明+西村哲也 傷ついた翼 大阪・チャクラ

これまでのどの時代のどのアルバムも本当に名盤ばかりで、感動しながら今まで何をしていたんだという反省(出会った時がベストタイミングと思い込みます)。2014年に2枚組ベスト盤『タイムトラベラー』が発売されましたが、1992年から2014年までの新曲・再録曲を含む全30曲、名曲だらけです。ベスト盤から漏れた曲で更にベスト盤が作れてしまうくらい。青木という苗字が表すように、青々と茂った新緑の木々のようなまさしくエヴァーグリーンなポップソングの数々はもっと多くの人に聴かれるべきです。今からでも遅くないです、未体験の方はまずはベスト盤を聴いてみて下さい。そうすれば、私みたいに取り憑かれたように速攻で旧譜を買ってしまうことになります(笑)。青木さんのライヴ映像もYouTubeにたくさん上がってますので、チェックして、ライヴにも足を運んでみましょう。


Takaaki Aoki 青木孝明 アンソロジー 1992~2014 タイムトラベラー

メトロトロン25周年記念ライヴを収めたCD&DVD収録の青木さんがメトロトロンオールスターズを従えて演奏した「傷ついた翼」はザ・バンドのROCK OF AGESみたいでめちゃくちゃ泣けるとか、あれもこれもまだまだ言いたいことはありますが、あまりに長くなるので、また別の機会に。最後は、BAND EXPOの青木さん作詞曲のオリジナルナンバー「Switch」のライヴVerで。何も言いますまい、ただひたすらカッコイイ!グレイト!西村さんのテレキャスターの鳴りの凄まじさが映像越しにもよく分かると思います。


Switch/BAND EXPO
ミュージックビデオが公開されました!3人のボーカル回しが泣ける感動の名曲「Memories」です。青木さんと矢部浩志さんとのリズム隊の優しく胸にこみ上げてくる歌うグルーヴにも注目です。


Memories/BAND EXPO