レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

ブックエンズのシングル三部作「カーニバル2020」「涙でちょうだい」「バイバイサマー」

関西も梅雨に入り、マスクの中はますます蒸し風呂状態で頭が沸騰しそう。そして、ジリジリと続くまるで終わりの見えないコロナ禍...この鬱屈した毎日を何とか乗り切るには胸のすくようなポップソングが必要だ。なので、私はブックエンズを聴く...

ブックエンズとは、関西のエヴリデイピープルとTateFujiという知る人ぞ知る名バンドで活躍してきたソングライターの寺田貴彦さん(ボーカル&ドラム)と中藤世以さん(ボーカル&ギター)が意気投合し、鍵盤は野々村芳嗣さん(エヴリデイピープル)とベースに平田剣吾さんを加えて、2015年に新たに始めた4人組ポップロックバンド。新バンドと言っても決して若手とは呼べない年齢の方々ですが(失礼!)...それゆえの博覧強記ポップフリークぶりと熟成されたポップセンス、卓越したハーモニーと溶け合って驚くほど瑞々しいドリーミーポップスを聴かせてくれる。令和のオフコース!と呼んでいるのは私だけですが(笑)、そう呼んでしまいたい。また、シンガーソングライター肌の寺田さんとポップ職人的な世以さんという色合いが異なるソングライティングが味わえるのもバンドとしてユニークで、一粒でも二度おいしいのはリスナーとしても嬉しい。ニコイチで本を立てるブックエンドをバンド名にしているのは言い得て妙である。4人の演奏もさすがの腕前で、ライヴだって素晴らしく(ロック度少し上昇)機会があれば観て頂きたい。見た目も気持ちも優しいお兄さんたちです。

bookends.me

そんなブックエンズはこれまでシングルという形で3曲を配信リリースしている。全て世以さんの自作スタジオで録音されているがインディー臭くない本格的なサウンド、嫌な音圧もなく、温もりのあるアナログライクな音が心地良い。ジャケットのアートワークは至る所でその絵を目にする人気イラストレーターで寺田さんの奥様でもある寺田マユミさんが手掛けており、洋書ペーパーバックの挿絵のような素敵にキュートなイラストで日本人離れした楽曲とよく似合っている(レコードで出してほしい!)。まず昨2019年の初秋にリリースされた第一弾シングルは「バイバイサマー」(作詞曲&歌唱:中藤世以)、シャーラーララー♪といきなり歌で始まり全身コーラスハーモニーと夢見心地シンセサウンドに包まれる爽やかながらどこか切ないジ・エンド・オブ・サマー・ソング。”君は1000%”という詞に思わずニヤリとし、ビーチ・ボーイズ風のエンディングにキュンとキます。初作にしていきなりパーフェクトなポップ、いわゆるシティポップとも一線を画す凄み。昨冬にリリースされた第二弾シングルは「涙でちょうだい」(作詞曲&歌唱:寺田貴彦)、中期ビートルズを思わせる雰囲気で暖炉の火のようにじわりと沁みるチェンバーポップ。寺田さん曰く、歌い出しのフレーズはタートルズの曲から拝借しているらしい(マニアック!)。間奏でのチェンバロでの優雅なソロ、サビのベースラインが緩やかにレディ・マドンナしている感じとか、たまらんです。そして、今年5月にリリースされた最新シングル「カーニバル2020」(作詞:寺田貴彦 作曲&歌唱:中藤世以)は、この夏に開催される予定だった某ビッグイベントへの揺れ動く複雑な想いを歌ったスケールの大きな感動の名曲。イントロのアコースティックギターアルペジオからキーボードが重なりドッドッドッドッと力強いドラムが鳴り響く瞬間、身震い...間奏での世以さんの渾身のメロディアスな(今剛ばりの)ギターソロに胸が熱くなり...ジャジャジャジャッと狂おしく終わるのはホテル・カリフォルニア風だそうだが、もう徹頭徹尾エモい。全体的なサウンドを味わってから、詞にもじっくり注耳してもらいたい(洒落たリリックビデオもあります☟)。延期された某ビッグイベントは来年開催されるのかも怪しくなってきたが、そういう虚しさ儚さも含めて今年を象徴する一曲になるのは間違いないだろう...


【リリックビデオ】ブックエンズ『カーニバル2020』フルバージョン

中藤曲、寺田曲、共作と3パターンのシングルを聴いて、ますますアルバムへの期待が高まる。もちろんライヴではまだ発表されていない曲も演奏されているし、ディスコナンバーとか既にバラエティに富んだ曲が揃っているので、もう今から楽しみである。ワクワクするようなポップの魔法はまだまだ消え失せず...

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ブックエンズ...!?