レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

【私の好きな歌026】「Lonesome Lover」Steve Ferguson

平成31年3月2日、梅田ムジカジャポニカにて嶌岡大祐ワンマンライヴを観た。嶌岡大祐さんとは...2002年神戸発ピアノトリオロックバンド”SGホネオカ”でデビュー、FM802でパワープレイされたり人気を博したが、バンドは上京を機に解散!?東京ではソロ活動を行いながら、鍵盤奏者としてライヴやレコーディングでゲントウキ一十三十一など様々なアーティストをサポート、その腕が認められ何と!鈴木茂『LAGOON』セッションにも呼ばれるという快挙(最近でも、昨年末の紅白歌合戦ユーミンのバックで涙モノの演奏をしていたあの鈴木茂+林立夫+小原礼のSKYと一緒にセッションしたりと交流は続いている)、2014年には1stソロアルバム『白いベンチ』を発表した。近年、関西に戻ってきてからは、西村哲也さんの京都のバンド”西村哲也と彼のラビッツ”に参加...という私が勝手にまとめた略歴。SGホネオカというバンド名は聞いたことはあったが、実際に彼の演奏を初めて観聴きしたのは2016年12月23日、拾得での西村哲也と彼のラビッツのライヴ。彼は私よりも2つ年下同世代の若武者だが、新加入とは思えないグルーヴィーかつエレガントにガンガン弾き倒す姿に感動、もはや西村さんが暴れる必要もないくらい。その上、彼のソロナンバーを1曲「ゴールデンベイビー」を披露してくれたのだが、いきなり始まる饒舌な前口上に意表を突かれるも、素晴らしくポップでめちゃくちゃゴキゲンな歌と演奏にまるで70年代のスティーヴィー・ワンダーのよう!驚き、参りました。彼のジャジィでソウルフルな音楽性とバンド演奏との相性もバッチリで、その瞬間に強く抱いたこのバンドでソロライヴをやってほしいという願いが、ついに叶ったこの日の思い切ったワンマンライヴ。家族友人知人関係の人たちや、SGホネオカからの根強いファン、私のような彼のラビッツ経由で知ったファンも混ざり合い、立ち見が出る満員御礼ぶり(彼のラビッツでこんなにお客さんがいたことないのでちょっとビビる・笑)で大いに盛り上がった。嶌岡大祐(Vocal, Keyboard, Piano)、西村哲也(Electric Guitar, Vocal, Chorus)、前島文子(Drums)、木田聡(Electric Bass)、ほりおみわ(Chorus)という関西屈指の百戦錬磨凄腕メンバーによるハートフルで歌心溢れるグルーヴに支えられて、これでもかと気持ち良く歌いに歌って弾きに弾いての熱演3時間。SGホネオカ時代の若気の至りイキってたんやろうなと思わせるどこか屈折したポップナンバー(西村さん曰く、青山陽一さん並みのややこしさ)から最近の日々の生活から滲み出たシンガーソングライター然りとした深みのあるしっとり聴かせるバラードまで、まぁ時に挟まれる歴史モノがご愛嬌というか謎ではあるが(笑)、底知れぬ魅力の嶌岡大祐ワールドを心行くまで堪能した。彼がMCで言っていた「ライヴハウスに通うようなコアな音楽好きの人もそうじゃないライトな音楽好きの人も一緒になって楽しめる音楽をやりたい」という思いにグッと来たし、きっとやれる人だと思う。打倒、星野源や!?出来ればこのメンバーで最高のシティポップスアルバムを作ってほしいが、それはまぁチクチク言っていこう(笑)。それはともかく、これで味を占めたのか?早速、5月に次のバンドライヴも決まったようで、嬉しい楽しみがまたひとつ増えた。

↑ ムジカジャポニカさんのツイートより。SGホネオカ時代のベン・フォールズに捧げる?最高に盛り上がる名曲「BENに首ったけ」の映像。熱く爽快な演奏は、きっとBENも首ったけでしょう。

以前、嶌岡さんに、西村さんと一緒に演奏する時にどういう風にギターを弾いてほしいとか何か要求しているのですか?と訊いてみたら、「基本的には自由に弾いてもらいますけど、デヴィッドTウォーカーのような感じでとは言ったかなぁ」と答えてくれた。なるほど確かに、西村さんはいつも以上にメロウなオブリガートを決めていたように感じたし、珍しくフェイザー?を使って音色自体にも甘やかさを出す場面もあったりとデヴィッド哲也ウォーカーしてた。...とか言って、実はデヴィッドTウォーカーがギターを弾いているレコードをそんなに持っていなくて、ややぼんやりとしたイメージなのだが...。私の頭の中にあるデヴィッドTのプレイスタイルのイメージの大半を占めているのが、米国西海岸ロックの名門アサイラム・レコード唯一の黒人シンガーソングライター&ピアニストのスティーヴ・ファーガソン(Steve Ferguson。NRBQの初代ギタリストとは同名異人)のタイトル通りの切ない名曲「Lonesome Lover」で弾いているムード。手数は多くないし音量も控えめだが、スティーヴのソウルフルというよりは人間味のある歌声で感情の起伏の激しい狂おしい歌に呼応して、いちいちクールにメロウなフレーズを繰り出すデヴィッドT、その余韻や弾いていない間合いまでメロウな頭から爪先までトロトロの全身メロウ職人だ。アルバム『Steve Ferguson』でデヴィッドTが弾いているのはこの1曲のみなのに、異常に印象に残る。ロマンチックな寂しさに浸りたい時は、この曲を聴くのです。

「Lonesome Lover」 Steve Ferguson
(Steve Ferguson)
from 『Steve Ferguson』(1973)

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『Steve Ferguson』ジャケットより。薔薇の似合うロンサムな男。

※滑らかにグルーヴするエド・グリーン(Drums)&ウィルトン・フェルダー(Bass)のリズム隊も最高のレコードだが、彼のラビッツの前島文子&木田聡リズム隊も負けていないよ。是非、西村哲也と彼のラビッツのライヴも観に来てほしいです!