レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

【私の好きな歌028】「ほんとに久しぶりだね」寺尾聡

令和元年6月16日(日)。塚本エレバティにて「dancin' the 荒城」というイベントにDJとして参加...と書いていてなんだかむず痒いですが、生まれて初めてDJしてきました。シンガーソングライターでDJお米炊き廉太郎の顔も持つ矢野一希さんに誘っていただきました。赤毛のケリー、DJ特攻一番機のケツ持ち DJ麗泥子、OBBA、よだこういち(わがし屋よだもち)という共演DJ陣にpainful(矢野一希+梅田麻美子+渡瀬千尋)のライヴ、様々な美味しそう面白そうなお店の参加もあって、盛りだくさんで緩やかに楽しい時間が流れているイベントでした。私がDJで参加することになった経緯は、1月の雲州堂での冬支度10周年記念ワンマンライヴで、観に来られていた矢野さんとたまたま話したのがそもそものきっかけで。私が選曲したBGMが会場に流れている中、「けいすけさんはDJやらないんですか?」「いやぁ、DJはちょっと...恥ずかしいし。今度、矢野さんのDJイベント観に行きますよ」「いや、観に来なくていいんで、出てください」というやりとりが始まりでした。選曲すること自体は好きだけど、自分は人見知りで引きこもり気質の非パーティーピープルな人間だし、DJはやりたいようなやりたくないような...なんとも言えない複雑な気持ちでしたが、その後すぐに矢野さんから正式にお誘いがあり、それは初めてレコードをまわすDJばかりが出るイベントだったのですが、どうにも日が合わずお断り...するとまたすぐに来た次のお誘いが今回のイベントでした。「dancin' the 荒城」はなんとなくリラックスした心地良さそうなイベントのイメージがあったので、きっとガチガチじゃないだろう、顔をよく知ったpainfulのみんなもいることだし、この感じなら出てもいいかなぁと思い、参加することにしました。初めてフライヤーに自分の名前が載って嬉し恥ずかし、ツイッターで告知なんかもしてみたり(たくさんの応援ありがとうございます!)。

DJイベントに行ったことないし、DJとは何たるものか?イマイチよく分かっていない、もちろんDJミキサーなんてまともに見たことない、普段安物のしょぼいベルトドライブのレコードプレイヤーでレコード聴いているので、ちゃんとしたターンテーブルも使ったことない、こんなんで大丈夫なのか?と不安で打ち震えながらも、とにかく選曲だけは私らしくしっかりしておけば何とかなるやろうという妙な楽天家ぶりも発揮したり、ゆらゆらしながら当日を迎えました。始まる30分前にエレバティに行って、painfulのリハを横目に早速、DJ練習。事前にYouTube見てチラッと勉強してみたが全く歯が立たず、DJ機器を目の前にしたら茫然自失...何をどうすればいいか分からない。エレバティの細見さんや矢野さんに軽く教えてもらい、サーファリースやジャン&ディーン、セルメンのレコードで遊んでみる。いっぱいあるツマミは怖いので触らない、とりあえず頭出しと曲の最後でなんちゃってフェードアウト&フェードインできればいい(それしか出来ない)。私のDJとは、ディスクをじっくりかける人。15分ほど触ってたらそろそろ開始時間、赤毛のケリーさん(赤毛の男性だと思い込んでいた...)とOBBAさんも来られてBtoBでプレイボール、交互にレコードをかけていくやつです。私一人VSケリー&OBBA組というまるで修行のような...冷や汗脂汗いろんな汗をかきながら目に入ったレコードを必死にかけるだけ(笑)。シカゴ、ダニー飯田とパラダイス・キング、ヤン・シスターズ、ポピーズ、ジェームズ・ギャングをかけたかどうだったか?記憶が定かでありません...スレイド「ムーヴ・オ-ヴァー」をかけた時にケリーさんが「あ、被った!あれ、でも、なんか違う」と仰って、後でオリジナルのジャニス・ジョプリン版も聴けました(オリジナルは持ってない)。私が今最も気になってるDJの薬師丸さんが来られていたようで、この時の慌てふためいた姿を見られてこっ恥ずかしい...。さて、ここからは一人20分ずつ(2セット)レコードをまわしていくDJショーの時間です。OBBAさんは謎のコミックソング?や野球モノからパンクも何でも飲み込んで攻めのカットインでめっちゃカッコイイ、私を意識してくれたのか子供ばんどかけたりニック・ロウコステロイアン・デューリーのSTIFFモノも随所に入れ込んでくれ、ウキウキしました。赤毛のケリーさんは私の趣味と割と近いようなロック系を中心にオールディーズからラーナーズなどの最近のものまで、奥田民生やサザンという有名どころもかけたり、これまた楽しいです。DJ特攻一番機のケツ持ち DJ麗泥子さんは、ハードコアな爆音世界にフロアを走り回るピカチュウというなかなかカオスな...知らない曲だらけでお客さんにザ・ラプチャーを教えてもらいました。トリを飾ったよだこういちさんは、和菓子屋さんらしからぬ?アゲアゲナンバー連発容赦なくぶった切りの華麗なカットインでダンスグルーヴの洪水、フロアも大盛り上がり踊りまくりです(それにしても、今はBOØWYが熱いんでしょうか?)。真ん中にはpainfulのライヴ演奏もあり、矢野さんのシティポップ風味の洒落た曲に甘やかな声がよく似合うし、都会的なテレキャスのリズムもグッド、ペーさんのフルートと千尋さんのドラムがコーラス含め素敵な華を添えて、涼やかな風が吹いていました。

そして、私はと言うと...MCで矢野さんが「今日のDJはみんな結構ゴリゴリだったからやりづらい...」と思わず嘆いていたように、私も同じことを感じていましたが(笑)、今更セットは変えられないので、後はもう野となれ山となれの開き直り精神で何とかやり切りました。1セット目は洋モノで、ハーロー・ウィルコックスとオーキーズ「西部野郎」、ナンシー・シナトラリー・ヘイゼルウッド「ジャクソン」、ジェリー・リード「アラバマのワイルド・マン」、デオダート「キャラバン」、ポインター・シスターズ「一人寝」、スターバック「恋のムーンライト」、ブレントン・ウッド「恋のラヴィ・ダヴィ」(裏返して「ギミ・リトル・サイン」も)。2セット目は和モノ、ベンチャーズ「京都の恋」、モップス「あかずの踏切り」、寺尾聡「ほんとに久しぶりだね」、西郷輝彦「グッド・ナイト・ベイビー・グッド・ナイト」、和田アキ子「夏の夜のサンバ」、荻野達也とバニーズ「悲しき雨音」、ザ・ゴールデン・カップス「蝶は飛ばない」。こんなのんびりしたプレイリストでお送りしました。これまで作ってきたライヴ会場BGMでもそうですが、1曲目にインスト曲をかけるのが私の流儀、もうBPMとか無視して、ついついアルバムを聴いているかのような流れにしたくなる感じは自分のリスナー気質なのでしょう。あと、バリバリのソウルミュージックのレコードをかけてるわけではないけど、OBBAさんに「ソウルが好きなんがよう分かるわ」と言われたのが嬉しかったです。まさしくその通りで、どんなジャンルでもソウルフルな音楽が好きなんです、どうしても滲み出ちゃうんですねぇ。DJ先輩の皆さんのキレキレのプレイのおかげで、逆に、自分の持ち味が浮き立ったような気がしないでもないような...結構楽しんでもらえたし、面白かったと言ってもらえたので、初めてにしては上出来でしょう(と思いたい)。今かけているレコードのジャケットを台に載せる度に、え、何だろう?とみんなが集まって来てくれたり、曲のことを訊いてくれたのが、興味持ってくれてるんだなぁと何より幸せな気分になりました。2セット目の時に、冬支度の安田さんとキョーコさんがわざわざ天満のなかい山からハシゴして駆けつけて来てくれたのも心強かったです。終わりのBtoBは安堵感とちょっと酔っぱらっていたので色々やらかしましたが(笑)、すっかりゴキゲンさんでした。最後の最後はDJお米炊き廉太郎さんがかけた大橋純子&美乃家セントラル・ステイション「シンプル・ラブ」、”生きている悩みなんか 此処では忘れて” 身も心も踊った一日になりました。矢野さん、お誘いありがとうございました。遊びに来て下さったお客さま、共演者の皆さま、出店の皆さま、スタッフの皆さまもありがとうございました(一度言ってみたかった)。今後ともよろしくお願い致します。

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寺尾聡「ほんとに久しぶりだね」

このイベントの4日後、令和元年6月20日に40歳の誕生日を迎えました。嗚呼、若かったあいつがとうとう...そんな今の自分に捧げる曲は、DJでもかけて好評だった寺尾聡「ほんとに久しぶりだね」。中年になっても、できればこの曲のムードやジャケットの寝そべる寺尾聰のように呑気に生きていきたいものです(そうはいかない)。喫茶ロック本でも紹介されていた1974年のシングル。昔付き合っていた彼女にほんとに久しぶりに会ったら、彼女の話し声やお酒を呑んでる時の湿った唇、作ってくれた味噌汁の味に当時のことをいろいろ思い出して、また恋してしまいそうになるのだけど、そこをグッと堪えるオトナの?歌です。もちろん、あの寺尾聰の歌声ではあるけど、その後の「ルビーの指環」の色気あるダンディな雰囲気とはまた違って、ちょっと情けなく憎めない可愛さがあって、私はこの寺尾聰がすごく好きなのです。親近感というのでしょうか。作編曲はミッキー吉野で演奏もミッキー吉野グループなので、ほのぼのしていてもどこかグルーヴィーなのもツボで、大きな音で聴いたら意外に踊れました。B面の「何処かへ」もボッサ歌謡のお洒落ムーディーな佳曲です。今は無き元町リズムキングスで300円くらいで買ったんじゃなかったかなぁ...

「ほんとに久しぶりだね」 寺尾聡(1974年)
作詞 ケン田村/作編曲 ミッキー吉野/演奏 ミッキー吉野グループ

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冬支度安田さんが撮った写真を拝借...