レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

2018.11.11 『靴音までメロウに vol.28』冬支度with渡瀬千尋、藤江隆/rallypapa(チョウ・ヒョンレ)/スーマー@絵本カフェholo holo

チョウさんに楽しみにしていると言われたので(笑)、久しぶりにライヴレポートを書き留めようかと。昨日は11月11日の夕刻から、大阪のアコースティックデュオ冬支度が主催するイベント『靴音までメロウに』が大阪難波の絵本カフェholo holoにて、ラリーパパ&カーネギーママのリーダーrallypapaことチョウ・ヒョンレさんと横浜からスーマーさんを迎えて開催されました。継続は力なり、イベントは今回でなんと28回目、冬支度は今年で結成10周年(!!)なので、単純に1年に2~3回はやっているという計算。ひとつイベントをやるだけでも準備や宣伝や集客とかかなり大変だと思うのですが、地元関西以外のアーティストも積極的に呼び、いつもフレッシュな組み合わせで楽しませてくれます。今回は特に靴音を鳴らしながら弾き語るメロウな歌心のあるシンガー&ソングライターが揃い、そのイベント名にふさわしい一日になりましたね。客席も賑やかで和やかに盛り上がりました。ミックスジュース風味の西成の地ビール「新世界ニューロマンサー」も美味しく、歌に人にお酒に酔える喜び。

2018.11.11(sun) 16:30~
『靴音までメロウに vol.28』@難波・絵本カフェholo holo
■ 冬支度with渡瀬千尋藤江
 安田支度 vocal, a.guitar, mandolin
 斎藤祢々子 vocal, accordion, flute
 渡瀬千尋 percussion
 藤江隆 e.guitar
■ rallypapa(チョウ・ヒョンレ) vocal, a.guitar
■ スーマー vocal, a.guitar, banjo

トップバッターは、主催者の冬支度with渡瀬千尋藤江隆。このカルテット仕様の冬支度は今年のライヴ納め。何度も演奏を積み重ねてきた成果、インスト曲でゴキゲンに肩慣らしして始まる堂々としたステージング。冬支度のフォーク&ソフトロックな独特で完成されたポップス(と言っていいと思う)をパーカッション渡瀬千尋さんとストラトギター藤江隆さんが職人的な味付けでググッと歌物語の風景を広げてくれます。歌と音量とリズムのバランスも良く、思いがけずかぶりつき席でアンプの目の前で観ていた私は、モノラルレコードのように一塊になった4人の音を心地良く身体に浴びていました。今回は、私の大のお気に入り「初雪」が聴けたのが何より嬉しかったです。安田支度さんのジェイムス・テイラー風の洒落たメロディーとアコースティックギターのリズム。斎藤祢々子さんの歌の続きでフルートに移るところがとても好きで、初雪がハラハラと舞い降る様子が見える歌詞も素敵だし、斎藤さんの魅力がよく出ている曲だなぁと思うのです。千尋さんの小粋なパーカッションが入ればますますジェイムス・テイラー色、そこに藤江さんのトロトロのエレキギター荒井由実「卒業写真」の鈴木茂ばり)が重なり、それこそザ・セクションのようなバンドの艶やかな音の粒立ちで、ウットリしました。メロウという意味では、もしかしたらこの日の個人的ハイライトだったかもしれません。

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冬支度のレパートリーが終った後、そのまま2番手のチョウ・ヒョンレさんを呼び込み、一緒にラリーパパ&カーネギーママの「白い雲の下」をセッション(安田さんはマンドリン)。私はラリーパパ&カーネギーママは2nd『dreamsville』から聴き始めたので、思い入れが...なんて感傷的になることはなく、ただのんびりとリラックスしたリズムに身体が揺れました(チョウさんが間奏で冬支度にアシッドフォークな感じで!とハードな要求してた・笑)。冬支度の二人は元々ラリーパパ&カーネギーママのファンとして出会い、10年前にラリーパパが(第一次)解散してから何もすることなくなって、どうせなら自分らでやろうと冬支度を始めたそうです(すごい理由)。ちなみに、私もラリーパパのファンとして安田さんとは知り合っていて(斎藤さんの存在も知っていた)、何年か後にステージで演奏しているのを観てビックリしたのでした。そして、いよいよ機は熟した!念願の初共演セッションの後は、チョウさんのソロコーナーが続きます。そのラリーパパが解散を発表した直後から、チョウさんはソロ活動を開始、その頃のライヴも何度か観ています(西村哲也さんとの共演とか。実は西村さんにチョウさんを薦めてたり)が、チョウさんの弾き語りを観るのはそれ以来になるのでしょうか。何を偉そうにと怒られるのを承知で、当時のチョウさんは歌は当然のごとく圧倒的に素晴らしいのですが、ギター演奏がちょっと不安定でハラハラして観ているところがありました...が、今回はそんな不安は微塵も無く、ギターの響きと一体となって、歌が淀みなくスコーンと入り込んできて、とにかく痛快でした。ザ・バンドのリヴォン・ヘルムと堺正章が混ざったようなカラッとした人情味があるソウルフルな歌声で、これでもかと伸びやかに歌い上げてくれます。ボサノバタッチの「枯葉のブルース」や70年代のホームドラマの主題歌が似合う歌謡曲ちっくな「グッドバイ」最高でしたね。ステージ後半、チョウさんがどれやろうかと曲を探しながら、あっ!と閃いて、これを一緒にやりたいんだけどと冬支度の藤江隆さんを無理やり引っ張り出して(笑)、「狼の好物は迷える子羊」をぶっつけセッション。藤江さんは全く知らないチョウさんのソロ曲だと思うけども、徐々に曲のことが分かってきてブルージーなオブリやソロをキめ始め、最後は自然とスライドに切り替えていた(元々スライドギターが大活躍する曲)のは流石!チョウさんも客席も大興奮していました。そんな興奮冷めやらぬ思いつきセッションの後でチョウさんコーナーの最後は、前もって用意していた(笑)トリのスーマーさんとのセッション。いつか出会えると思っていましたけど、ついに出会えましたね、とスーマーさん。曲はラリーパパ&カーネギーママ「ふらいと」、スーマーさんのカラカラと転がるバンジョーが風を吹かし、今なら飛べるような気がしました。

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しばし休憩してから、スーマーさんのソロコーナー。2年前に音凪で冬支度with藤江隆との共演ライヴで観た以来のスーマーさん。アコースティックギターバンジョーの弾き語りで、ホーボーソングを。人生経験豊富な!?含蓄のある深みとコクのある歌声、でも、どこか軽妙なところがあるのが魅力的。曲自体もそうで、日本的なじめじめと湿ったフォークソングにならないのが私の好みです。特にバンジョーの弾き語りはユニークで、何気ない旅でも珍道中になる感じがしますよね。それにしてもバンジョーという楽器は弦を弾いてああいうパーカッシヴな音が出るのが不思議です。ライヴで聴いた方からお葬式に合いそうな歌ですねと言われたらしい「ちょいと寂しい夜の歌」は確かにお葬式に流れたらグッとくるような...お葬式でグッとくるというもおかしいですが、”ちょいと”泣けるというのが何かお葬式にイイんですよ。その曲の前だったでしょうか、いよいよスーマーさんも閃いてしまいました。この曲を一緒にやりたいんだけどと冬支度の藤江隆さんを無理やり引っ張り出して(笑)、なんと!かまやつひろしの大名曲「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」をぶっつけセッション。藤江さん曰く”ちょっとは(曲を)知っています”ながら、最初から最後まで熱くなる素晴らしいフレーズを連発!痺れまくりました(天国のムッシュに聴かせたい)。この日の藤江さんの装いはヒョウ柄キャスケットを被ったまるでデヴィッドTウォーカーのようで、冬支度では演奏もまさしくデヴィッドT的な引きの美学を見せてくれましたが、こういったぶっつけセッションでは思わずロック魂がドバッと噴出する瞬間が見れて、心の中では女の子のようにキャーッ!と叫んでいました。客席全体もこの日一番の盛り上がりでした、ズバリ!今宵の裏テーマは藤江隆祭り2018。最後は冬支度のみんなを招き入れて、「人生行きあたりばったり」を行きあたりばったりではないセッションでほのぼのした気分。そして、アンコールは更にチョウさんが加わり出演者全員でロジャー・ティリソン「ロックンロール・ジプシーズ」(日本語カヴァー)を。アコースティックギターエレキギターマンドリンバンジョーと弦楽器が勢揃い、斎藤さんのフルートがまたジプシー感を演出し、4人のボーカル回しもちょっと感動的で、幸せな大団円となりました。

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↑大活躍の藤江さん、チョウさんもスーマーさんも藤江さんのギターがもっと見たいからという理由で呼んだそうです。あ、千尋さんの写真無くてごめんなさい...彼女も歌バッキングのツボを心得ている素晴らしいドラマー&パーカッショニストです。独創的でもあり、ミカンのシェイカーを指で叩いて?愉快なリズムを出していました。

打ち上げの席も実に楽しく、この日は人と人が繋がっていく嬉しさを感じましたね。ここからまた面白いことが起きていくのでしょう。