レコードは果てしなく

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『JACK TOO MUCH』 ジャック達 【後編】

ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」楽しかったですね、ガッキー可愛かったですね(星野源は許せん(笑))。『JACK TOO MUCH』聴きすぎの私は、古田新太さんが一色進さんに見えて仕方ありませんでした。いやホント、古田さんは年々一色さんに近づいていると思うのですが、どうでしょう?って、一色さんのことを知っている人がこの世にどれくらいいるのか?という話ですが。知らぬは恥だが役に立つ、いやいや...まぁ一色さんのことはともかく、ジャック達の『JACK TOO MUCH』はそれこそTOO MUCHなくらいたくさんのロックリスナーに知ってほしい聴いてほしいロックの名盤なのです(本心は、私だけのものにしておきたいけど)。あなたにとってのロックとは何?と問われれば、四の五の言わずにスッとこのレコードを差し出し、聴けばわかるよ!とスパッと言い放ちたいところですが、四も五も言ってしまう私です。後編はお馴染み?全曲感想、遠慮なくTOO MUCHに行きますよ。併せて、一色さんの全曲解説(これまたTOO MUCH!)も読んで頂くと面白さ百倍です。

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01. 暁ワンダーボーイ / Wonder Boy On The Red Moon
一音一音、厳粛にかき鳴らされるロックギターの調べで幕を開ける『JACK TOO MUCH』。2016年は大物アーティストの訃報がとにかく多い一年だったが、中でも年始のデヴィッド・ボウイの死はショックだった。ボウイの音楽に興味はあるがイメージしかないし、特別な思い入れがあるというわけでもないのだけど、かなりズシーンと来た。私の敬愛するミュージシャンはボウイの影響をモロに受けている世代の方が多いので、その打ちひしがれている顔が思い浮かんで仕方ないのだ。一色さんもそのひとり、その想いを歌にしないでいられない(振り返れば、前作の「明日、さようなら」「Snow Storm Warszawa」もそうだった...)。ボウイへのレクイエムソング、まるでボウイが天国から降りてきたような宇宙まで拡がる壮大なロックバラードだ。一色さんの哀しみの熱唱を支えるキハラさんのヘヴィーに心のこもったギタープレイにはミック・ロンソンが乗り移っている。あまりにも名曲だが切なすぎる、どうにも胸が掻き毟られる。それはもう真剣に聴くと泣いてしまうので、ぼんやり聴いている。ふと思い出した、一色さんのラジオ番組GO→ST海賊放送局(終了)で、一色さんが夏秋さんに今度ジャック達でこういう新曲をやりたんだと言って、ボウイの「Velvet Goldmine」をかけていた。そして、何やらこの曲の断片は昨年の大なり><小なり&一色ソロレコ発ツアー中に形作られていたそうだ。メドレーでヘイ・ジュードをヘイケ~イ~♪と大合唱したあの馬鹿馬鹿しい(褒めてます)「閉経ベイビー」とか歌っていたような時に、こんな王道の素晴らしい一世一代の名曲を生み出そうとしていたのかと想像すると、奇才ソングライターの精神状態は理解できません(笑)。

02. マイ・ベイビィ・アン / My Baby Ann
一音一音、やんちゃくれにかき鳴らされるロックギターの調べで幕を開ける2曲目。ある意味ジャック達らしからぬバラードから、思い切りジャック達なロックンロールに繋がる快感よ。シンプルにイカしたビートロックに見せかけて、突如としてラテン調になる珍妙な展開や、ズッコケ三人組のドジなコーラスはカルトGS感満載。これぞ永遠のB級ロックバンド、ジャック達!最高すぎる。この曲は昨年1月の通称GO→ST祭りで新曲として初披露されたのだけど、その帰りの最終電車で幸運にも一色さんと柴山一幸さん!(出演者だった)に遭遇し、目の前で生GO→ST海賊放送局が観れた(一生の良き思い出)。一幸「新曲の歌詞がめちゃくちゃいいですね!」私「えっ、聴き取れたんですか?」と思わず突っ込んでしまったが(笑)、ありふれてるけどありふれてない言葉表現は一色さんならではのただのラヴソング。それでもって、一色さんにこっそりアンという女の子のモデルが誰なのかを教えてもらった。もちろん言いませんけどね、ふふふ...

03. カジュアル / Casual
間髪入れずに、超ジャック達節のゴキゲンでカジュアルなロックンロールが続きます。冒頭の、アッ、アッ、アッ、アー、オーイェー♪喉が詰まってるんでしょうか?最狂のロックシンガー。最狂と言えば、一色さんの弾くずーっとミョンミョンミョンミョン鳴っているエレキシタールも。一体どうやって弾いているのか分かりません。そんな本物のような偽物のようなサイケデリック感、後半の怒涛のリズム隊の暴れっぷり、ロックの乱痴気騒ぎへようこそ。

04. スキニー・スキニー / Skinny Skinny
一転してしっとりした切なく美しいバラード、歌うのは宙GGPキハラさん。前作『JOYTIME』に収録された「物憂げ」がキハラさんのリードボーカルデビュー、まだ恐る恐る歌っている感じ(サウンドに埋もれてボーカルがあまり聞こえない)だったけれど、ここでは正面切って歌っている。堂々と頼りない、それがもう泣ける。私が女性だったら、構ってあげなきゃと思うかもしれない。後奏のキハラさんのギターソロがまた歌い上げているんだなぁ。間奏の一色さんのエモすぎるギターソロも素敵な涙の演出だし、夏秋さん弾くメロトロンの幽玄ロマンチックな響きも実に効いている。このアルバムのハイライトと言ってもいいくらいの名曲に仕上がっている。

05. ブロッコリー / Broccoli
そんなスウィートな余韻をぶち壊すかのように、素っ頓狂で奇っ怪な曲をぶち込んでくるのがジャック達の流儀。鬼ころしが似合うアイドル麥野むぎさん(パンタンシノワ)を迎えたデュエットナンバー。カリフラワーを買ってきてと頼んだのにブロッコリーを買ってきた彼(一色さん)への彼女(むぎさん)の”んあああああ~”という言葉で表しきれない異常な呆れ声。とにかく一色さん(61)、めちゃくちゃ怒られている、のが痛快。むぎさんのアンニュイな歌声はジェーン・バーキンのようだが、一色さんはセルジュ・ゲンスブールより情けない。そんな愛すべきだらしなさに憧れる...のはどうかと思うが。※間奏で思わずケータイを探さないように注意!(特にバイブレーションにしてる人)

06. 飛ぶ前に跳べ / Jump Before Fly
見るまえに跳べ、は岡林信康だったか。”飛ぶ”と”跳ぶ”の違いはいかに?他の曲に比べるとイマ風なギターサウンド、と言っても90年代のパワーポップの質感だろうか。そこに絡むウーランランララ~♪という古めかしいコーラスがなんだか微笑ましい。一行目のシェークスピアの有名なフレーズ”to be or not to be”の一色さんの舌足らずな発音がすこぶるキュートなのだが、”to be”はもちろん次に来る”跳べ”と韻を踏んでいる。その後の”神戸、そして長崎”はなんだかムード歌謡のようだ。洋楽のロック歌詞の様式美を意識しながら、中にものすごくベタついた日本語を絶妙に混ぜ込むのが一色さんの詞の特異な素晴らしさ。

07. 君は2こ上 / You Are 2 Years Older
「カジュアル」でティーンエイジャーの恋愛を歌っていたかと思えば、ここで描かれるのは秘めやかな老いらくの恋だ。この振れ幅たるや!もちろん一色さんの年齢だからこそ歌える歌なのだろう。ロックの世界だって年相応のラヴソングがあって然るべきで、それって年下から見ても断然イケてるし、無理して若作りした音楽なんて求めてない(反対に、無理して年を取ろうとしてる音楽は好き)。ロックは十代のモノというのは昔の話、いくつになろうがロックに夢中でいたい。って、そんな大真面目に語るような大それた曲ではなく(一色さんも面白おかしく書いてるだけだと思う)、ささやかに色っぽい哀愁あるポップナンバー。

08. The Time Has Come
フェードインで現れ、勇ましくドラムが鳴り響き、と思いきや儚く透明な歌声で歌い始めた夏秋さん!しかも、英語詞だ。ファンの間では、ジャック達は外タレ扱いだが、とうとう正真正銘に外タレになった?瞬間だ。知らない人が聴いたら、きっと洋楽にしか聞こえないだろう。元々一色さんの書くメロディーは洋楽臭が強い(というか洋楽臭そのもの)とは思っていたが、こうやって英語詞で聴くと身をもって実感できる。「想い出の渚」のザ・ワイルド・ワンズの1stアルバムに入っている英語詞のクールなビートナンバーがあるのだけど、それを思い出した(「All Of My Life」テープ逆回転ノイズを導入している、67年。マニアックな例えですいません)。

09. Stormy April Blues
60年代のロックの名盤にインドものは欠かせない、であれば当然ジャック達もやる。漂うエキゾチックなサイケ感はアルバムのユニークなアクセントになっている。また、この何とも言えない倦怠ムードには一色さんのくたびれたボーカルがよく似合う(同系統の曲ではミニアルバム『RoMAnTic LaBoRatORy』収録の「砂漠のモノレール」もグレイト!)。こんな土着的な曲で、後半いきなりデジタルビートが被さって来るのはスタジオマジックというか何と言うか...タダじゃ済ませられない、TOO MUCHで歪んだサービス精神こそがジャック達、なのである。バックトラックのほとんどは夏秋さんの手によるものらしい、そう、夏秋さんもまた奇才だ。

10. プラスティック・トイ / Plastic Toy
何も言いますまい、男は黙ってツェッペリン!なのだ。言っちゃうけど。鈍く光るギンギンギラギラな爆撃電気ギターで身体中大火傷、またしてもミョンミョンミョンミョンけたたましい電気シタールに脳が痺れ、ドッカンドッカン乱れ打つ狂暴なドラムビートは連続ドロップキックになって胸に直撃腰砕け、トドメは音割れ寸前まで押し出したブンブン振り回すスタン・ハンセンのウエスタン・ラリアットのような極太ベースグルーヴを真芯で食らい、死亡。不謹慎だけど、ロックで死ぬなんて最高じゃない!?一色さんのロックボーカルはさすがにロバート・プラントとはいかないけれど、それとはまた違う形で、バッチリ様になる一色さんはやっぱり凄い。ヘロヘロなのになんでこんなカッコイイのか?永遠の謎だ。とにかくフルボリュームでお楽しみください。

11. Silly Girl
そんなスタン・ハンセン?は実は気の優しいおじさんだった。凶悪ハードロックに続くのは、大田譲リードボーカル(もはやサポートじゃない)の心温まるほっこりナンバーだ。おバカさん♪と野太い声で子犬を抱きしめるようにかわゆく歌う大田さんに悶絶している大田女子が多数出ているらしい!?”Silly Girl”が”尻軽”に聞こえ、”Oh Silly Girl”が”お尻が”に聞こえるのがまたかわゆい。ラヴリー極まりなし。一色さんが歌詞提供(作曲:西村哲也)した大田さんが歌うグランドファーザーズ「恋の元素記号」も併聴されたし。

12. アル・カポネ / Al Capone
これ朝から書き始めてるのですが、さっき紅白歌合戦始まりました。わぉ、審査員でガッキー出てるし!実はアル・カポネはガッキーがモデルで、って違うから。これはアル・カポネ(有名なギャングですよね)と呼ばれる妖艶で近づくと危険な女の歌。打ち込みのリズムをバックに、シネマの盟友・松田信男さん(ミックスも見事!)のドラマチックでマッドなクラシカルピアノ演奏がまるでオペラ座の怪人のよう(よく知らないけど)。うっとり聴き惚れている途中でカットアウトされてラストナンバーへ。

13. 天国行き最終列車 / Last Train To Heaven But I Don't Know Where To Go
最後は、巨大な車輪を軋ませ黒い煙を吐き出しながら天国へ逝くロックトレインソングだ。スーパーヘヴィー級な演奏で、ここでもベースは凄まじい唸り声を上げている。背筋がゾクゾクするようなフィナーレ。激情のJACK TOO MUCH劇場・完

今作はリズム隊を同時にレコーディングしたおかげだろうか、グルーヴの一体感と躍動感がハンパない。特にベースを強調したミックスも相まって、転がり落ちる爆弾岩のようなグルーヴが物凄い勢いでスピーカーからこちらに突進してくる。そして、キハラさんのギタープレイがこれまで以上にキラめいているように感じる。リフ、ソロともにレスポールの男の色気漂う鳴りの良さ、胸を打つ名演がたくさん生まれている。このバンドサウンドを一言でまとめれば、ただの最高にカッコいいロック。という、書き忘れたことを無理やり追記して全曲感想終わり。ご清聴ありがごとうございました、今後とも呆れずによろしくお願い致します。

ジャック達/JACK TOO MUCH

ジャック達/JACK TOO MUCH

『JACK TOO MUCH』ジャック達(2016年)

01. 暁ワンダー・ボーイ Wonder Boy On The Red Moon
02. マイ・ベイビィ・アン My Baby Ann
03. カジュアル Casual
04. スキニー・スキニー Skinny Skinny
05. ブロッコリー Broccoli
06. 飛ぶ前に跳べ Jump Before Fly
07. 君は2こ上 You Are 2 Years Older
08. The Time Has Come
09. Stormy April Blues
10. プラスティック・トイ Plastic Toy
11. Silly Girl
12. アル・カポネ Al Capone
13. 天国行き最終列車 Last Train To Heaven But I Don't Know Where To Go

JACK-TATI
SUSUMU ISSIKI: vocals,guitars,keyboards
FUMIHISA NATSUAKI: vocals,drums,keyboards
HIROMU GGP KIHARA: vocals,guitars
And
YUZURU OTA(CARNATION): vocals,bass

NOBUO MATSUDA: keyboards
MUGI MUGINO(PANTINCHINOIS): vocals