レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

yojikとwandaの”ナツ三部作”

夏の終わりにとても素敵なプレゼントが届いたので、おすそ分け。
↓ここのサイトで、男女二人組ポップデュオyojikとwandaの夏にまつわる未発表音源3曲"ナツ三部作"を期間限定(10/31まで)でフリーダウンロードできます。

yojikwanda.bandcamp.com

第一弾「ナツ / Summer」
第二弾「夜は終わらない / Night's not closing」
第三弾「午前5時 / AM5:00」

私は以前からyojikとwandaという名前は知っていて、とても良いらしいという噂は聞いていても、音源をちゃんと聴いたことなかったぐうたら人間だったので、この機会はありがたいとダウンロードしてみました。無料なので、デモみたいな感じかなと思いきや、強力なメンバーでのバンド演奏で完全にしっかりレコーディングされた音源だったので、嬉しい驚き!そして、何と言っても、どれもがホント魅力的な名曲だったので、もっと嬉しい驚き‼‼無料なのが申し訳ないくらいです。

第一弾を聴いたときは、今流行の(?)ゆるふわ系ほのぼのシティポップスかなと思っていたら、第二弾はマリア・マルダーみたくノスタルジックでジャジィなオトナムード、第三弾は二胡のサイケな響きとたたみかけるボーカルがなにか鬼気迫るようなエモーショナルなナンバーで、三曲ともまるで表情が違っていたのにすっかり心惹かれました。また、共通して漂う心地良い倦怠がニッポンの夏風情を感じますね(こういう夏が好きなんです)。楽しみ方としては、第一弾がお昼、第二弾が夜、第三弾が明け方と時間が流れていくので、順番に三曲続けて聴くと、物語性を帯びてきて、よりグッときちゃいますよ。”ナツ三部作”ですからね。

何よりもひとつ試しにダウンロードしてみて下さい!私はこれでファンになりました。


↓二人だけで演奏する「午前5時」も素晴らしい、緊張感と色気。

yojikとwanda 201412月

BAND EXPOな人たち③ 西村哲也さん

Sitting on the highway...夏は終わった...。まだまだ残暑は厳しいらしいですが、いよいよ9月になりましたので、嗚呼、BAND EXPOの1stアルバム『BAND EXPO』の発売(9/28)が待ち切れない!自分勝手にメンバー紹介シリーズ第三弾。は、もちろん西村哲也さんです。個人的にいろいろ思い入れの強い方であり、最も好きなギタリストがレコード・コレクターズ誌2013年1月号の『特集 ニッポンのギタリスト名鑑』に載らなかった恨みつらみも込めて(笑)、やたら長くなるのは目に見えてますが、どうぞひとつお付き合いを。

BAND EXPO

BAND EXPO

まずは西村哲也さんとの出会いについて。西村さんと言えば、グランドファーザーズのギタリストとして知られているでしょう。私は高校時代にカーネーションをラジオで聴いてからひねくれた音楽リスナー人生を歩み始め、自然とカーネーションに関連のあるアーティストやバンドを調べて聴いていく作業に入っていくのですが、そんな中で青山陽一さんソロからグランドファーザーズを知ります(西村さんの存在を把握)。初めて西村さんの生演奏を観たのは、2003年9月21日『音楽感謝 Vol.4』@京都クラブメトロで、青山陽一さんのサポートメンバーとしてでした(アコースティック編成。もう一人のメンバーがダリエさん、という不思議なトリオ)。確か西村さんはソロ曲「Snowbird」だったかを歌ったような記憶がありますが、共演にカーネーションがいたので、大田譲さんが加わってプチ・グランドファーザーズ再結成!?「Slit No.1」が聴けたのが至福の喜びでした。そして、しばらく経ったある時、カーネーションを通じて知り合ったOさんという方から、「けいすけさんは、見た目や喋ってる雰囲気が西村哲也さんとよく似ているので、きっと気に入ると思います」と西村さんのソロアルバム『ヘンリーの憂鬱』を焼いたCDをいただきます(運命的!?)。聴いてみれば、まさしく私の大好きな音世界で、まんまと気に入ってしまったのでした(笑)。で、これがまたいいタイミングで、ベスト盤的ミニアルバム『ウォーターメロン砦』(2005年作品。花*花こじまいづみさんや面影ラッキーホールのメンバーが参加。なんと神戸タワレコでは試聴機に入ってプッシュされていた!)がリリースされ、アーシーな黄昏スワンプロックに完全にヤられます。その年の年末12月18日に拾得(人生初拾得!)でKID AT A-LOW'Sのゲストで西村さんが出るというので(チャージ1000円だし)、雪降る中、観に行きました。アコースティックギターの弾き語りでライ・クーダー「Great Dream From Heaven」をサラリと完璧に演奏したり、セッションでwanDerさんのエレキギターを借りてサラリと粋なフレーズを弾いたり、なんかもうずっと静かに興奮していました。エレクトリックバンド編成(PORK PIE HATSというバンド名)では、2006年9月7日に京都アバンギルドでの芸妓ジャズシンガーMAKOTOさんとの共演ライヴが初めてでしたが、何と言っても、同年12月8日拾得での初ワンマンライヴが最大のターニングポイントでした。出演者5名(ゲストのwanDerさん含む)に対して客席7名という切ない状況にも関わらず、ライヴ自体は非常に気持ちの入った熱演で胸打たれました。西村ファンは漏れなく何かいけないスイッチが入った時の西村さんの狂気っぷりを愛していますが、この時の半ばヤケクソ気味の暴れ方は過去最狂でした。「何でもいい」間奏での、ギター背中弾き、歯弾き、靴弾き(失敗)、胴上げ、激しい足踏み...もはやギターソロを超越したただただエネルギーの暴発。西村さんはソロから曲に戻るときに手を上げてメンバーにサインを送るのですが、この時はテンションが上がりすぎて何度も腕を振り上げるものだから、凄腕揃いのバンドメンバーでもそのタイミングが判別つかず、もうしっちゃかめっちゃかに。比較的クールに鑑賞する私でもこのシーンには拳を握りしめて燃えたぎりました、これがロックや!と。きっと拾得マスターのテリーさんも感銘を受けてらしたと思います。終演後、PORK PIE HATSドラマーの五十川清さん(あのEP-4の!)曰く「ギターソロは一番盛り上がったところでスッと止めるのがいいんだよ。でも、西村くんはそこからまだ続けるから、最後尻つぼみしちゃう(笑)」。五十川さんは後ろでドラムを叩きながら、西村さんのギタープレイがキレ始めると、来たよ!といつもニコニコ楽しそうでした(2010年に残念ながら亡くなられました。未だ悲しい)。とにかく、この日を境に西村さんの大・大・大ファンになり、もっと応援せねばならない、広く音楽愛好家たちに知らしめないといけないと(勝手に)心を決めたのでした。


Good Bye/GRANDFATHERS

西村哲也さんのそんなライヴでキレるパフォーマンスも然ることながら、真っ当にロックギタリストとして最高なのです。グラムロックプログレから洋楽に入り、はっぴいえんどよりも四人囃子や外道が好きで、ロバート・フリップジミー・ペイジ、ロイ・ブキャナン、フランク・ザッパライ・クーダーといった一癖も二癖もある偉大なギタリストから血肉を受け継いでいる(と感じている)。すぐにそれと判る土の香り芳しい温もりのある音色(66年製フェンダーテレキャスターがメイン)や独特に泣くフレージング、もう何もかもがグッときて仕方がない。レコード・コレクターズ誌2014年4月号での小川真一さんによるソロ作『運命の彼のメロディ』レヴューの中で、ギタリストとしての西村さんを「ともかくオブリガートがべらぼうに上手い。そのフレージングのすべてがそのまま一曲になっていくほどで、これは作曲といってもいいだろう」と評しておられて、まさしくそう!と膝を打った。歌伴に徹する時のボーカルの傍らで微かに鳴っているほんの些細なフレーズも歌心たっぷりで、それは鈴木茂、徳武弘文、告井延隆、村松邦男伊藤銀次...70年代のイナたいシティポップスを彩ったギタリストの系譜にもあるのだろうけど、時に譜面に起こせないような謎の奇怪なフレーズが飛び出したり、胸をえぐるように掻き鳴らされるギターソロはニューウェイヴどっぷり世代ならではなのかもしれない。また、西村哲也節の大きな特徴として、スライドギターを多用し、ここぞという時のスライドソロのあまりに美しいメロディアスぶりは天下一品(面影ラッキーホール「おみそしるあっためてのみなね」聴かれたし!号泣必至)で、歌メロと同じように思わず一緒に口ずさんでしまうほどである。西村さんが奏でるそんなハッピー・サッドな響きは私の心の栄養だ。


面影ラッキーホール "好きな男の名前腕にコンパスの針でかいた" @ WWW

京都にいながらOnly Love Hurts面影ラッキーホール)やメトロファルスのリードギターを務める西村哲也さん、その事実だけでも名ギタリストの称号を与えてもいいだろうし、福岡史朗さんも西村さんのことを「達人」と称しているけれど、存在をあまり知られてなさそうなのは、その控え目なお人柄も関係しているのかもしれない。クラスではおとなしくて目立たず、昼休みは静かにひとり本を読んでいる心優しきオタク少年が、そのままオトナになったような方(あくまでも例えですよ)。西村さんの生誕50周年記念ライヴ@拾得にゲストで出ていたこじまいづみさんがMCで「花*花がメジャーデビューすることになって、初めて東京でレコーディングする時に、どんなスタジオミュージシャンが来るのだろう?いかにも業界人みたいな気取った人なのだろうなとドキドキしていたら、えらく腰の低い人が入ってきて。レコーディング中も、すいません、すいませんとずっと謝ってるし。それが西村さんでした(笑)」面白いくらいにハッキリと絵が浮かぶ。そういういかにも穏やかな空気をまとった人がステージに上がってエレキギターをガッと弾き出したら狂人に豹変する、あの瞬間を目撃するために足繁くライヴに通う。普段の私は自分を抑えて地味に生きているような人間なもので、観ているだけでもあの瞬間にスーッと解放される。ありがたいお兄ちゃんです(兄弟と間違われる)。


50/西村哲也

シンガー&ソングライターとしてもまったくもって素晴らしい西村哲也さんですが、そのことについて書いていたら終りが見えないので、今回はギタリストとしての西村さんの魅力を中心に書いてみました(あとはBAND EXPOのアルバムの感想で)。一度だけ観たBAND EXPOのライヴでは、ニール・ヤング「Down By The River」を西村さんがロイ・ブキャナンになりきってカヴァーしていましたが、凄まじいギター演奏で呆気にとられ、終わった後しばらく会場がシーンと静まり返ったのを付け加えておきます。では、最後にBAND EXPOのライヴ映像を観ていただきましょう。西村さんらしいダークな質感を持ったじっとりとしたナンバーです。アルバム楽しみだなぁ、ホントに。


渇き/BAND EXPO

ミュージックビデオが公開されました!3人のボーカル回しが泣ける感動の名曲「Memories」です。ギターはもちろんですが、ペダルスティールやマンドリンの温かい響きは西村さんによるものでしょう。


Memories/BAND EXPO

『BOOGIEST BAND IN TOWN』 HERSHEY's

リオオリンピックや甲子園が終わり、もう夏も終わりですね...なんて感傷に浸るどころか、ますます死ぬほど暑い毎日。まだまだ、ギンギンギラギラの夏なんです。うむ、ギンギンギラギラ...ギンギンギラギラなロックと言えば、そう、グラムロックだ。という絶好の!?タイミングで、最高のグラムロック名盤が我が家にやってきた!HERSHEY'sの2ndアルバム『BOOGIEST BAND IN TOWN』、邦題は”町一番のブギーバンド”。

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HERSHEY'sは大阪の男女混成4人組グラムロックバンド(ROLLYの由緒正しき後輩と言えそうな)。彼らを知ったのはつい最近のことで。毎年ゴールデンウィークに、神戸の人情味溢れるディープスポット新開地で行われている地域密着型音楽フェス新開地音楽祭(神戸に長く住んでいながら、実は知らなかった...)。何やら京都のパワーポップバンドThe Mayflowersが出演するというので、観に行きました。他にも中島孝withカンバスやサウストゥサウスのクンチョーさんのバンドなどが観れたり、美味そうな匂いを放つお店もいっぱい出ていて、地元のおっちゃんおばちゃんが気持ち良さそうに音楽に酒に酔っていたり、派手なメイクのおっかない人たちがいたり、ああ素敵な祭りだなぁなんて、すっかり楽しみました。その後、新開地音楽祭の映像が何かあがってないかなぁとYouTubeをチェックしていると、うん?もしやあの派手なメイクのおっかない人たちでは?と思しきサムネイルがあったので、そのライヴ映像を観てみたら、ワォ!なんてカッコイイんだ!と一瞬で惚れてしまいました(同時に、生で観なかったことを激しく後悔)。それがHERSHEY'sというバンド。彼らの風貌に違わぬ怪しくキャッチーな楽曲にバンドサウンドの鳴りの良さとやたらウマい演奏。特に、女王様ベーシストHERSHEYの華麗なプレイにやられたのでした。


神戸 新開地音楽祭 2016 【HERSHEY'S】スクエアステージ .2

そんなわけでライヴ映像を毎日のように観ては恋い焦がれ、文字通り待望のニューアルバム『BOOGIEST BAND IN TOWN』は彼らのHPの通販で購入。ペライチのジャケットの裏側には色付きボールペンでメンバーのサインが書いてあって、家内制手工業ぶりにほっこり...したのもつかの間、再生ボタンを押してみれば、2016年とは思えない狂暴なサウンドで面食らう。まるで60年代のThe Moveみたいだ。狙いというよりは録音環境がなかなか厳しくて、結果こうなっちゃったのだろうな。まぁ普段からいろんな音質の音源を聴いているので、問題ナッシング。いや、むしろ、何度も聴いてみれば、この音楽にはこのワイルドで濃厚な音がふさわしいんじゃないかとさえ思えてしまう。アイデアをふんだんに盛り込んで、良い楽曲、良いアレンジ、良い演奏をしっかり録音すれば、ちゃんと伝わるのですよ。

彼らの音楽はひと言で言えば、グラムロック(曲名見てるだけでもニヤける)。なのだが、もっと広く60~70年代の英国ポップロックの旨味がこれでもかと凝縮されている。デヴィッド・ボウイT.レックスモット・ザ・フープルレッド・ツェッペリン、スレイド、スウィート、ロイ・ウッド、ロキシー・ミュージックコックニー・レベル、クィーン、パイロット、ビートルズモンキーズモンティ・パイソン、バブルガム・ポップ勢、サディスティック・ミカ・バンドなどなど、ボーカル&ギターのAICHANはA級もB級もたぶんきっと全部聴いているのではないだろうか(70年代の日本の歌謡曲、ニューミュージック、フォークまでも)。そういったマニアックな記号を散りばめながら、とびきりチャーミングで退廃的でゴキゲンなポップナンバー目白押しで、私のポップのツボを押されまくっている。どの曲もグラムロックらしく芝居がかっていて、1曲1曲歌の世界の主人公が変われば、AICHANのボーカルも千変万化(鮮やか!)、そこに絡むHERSHEYの舌足らずでキュートな歌声もたまらない。まるでモット・ザ・フープル「土曜日の誘惑」でのイアン・ハンターとリンジー・ディ・ポールのよう、つまり大大大好物。とか言っていると、なんかこう懐古趣味的なバンドかと思われるかもしれないけど、そもそもグラムロックは性別や時代を超えた人類離れした人間臭い音楽なのだから、新しいとか古いとかで語るのはナンセンスである。AICHANの多彩に爆裂するギター、HERSHEYのクールにドライヴするベース、HATOのシンプルに跳ねるピアノ、HYGZOのスカッと痛快なドラム、ただただ彼らの町一番のロックンロールにまみれて歌って踊るべし。TO BE PLAYED AT MAXIMUM VOLUME!!


HERSHEY's もっとだ!!フープル2016.3.23 代々木Zher the ZOO

もっともっと!もっともっと!もっと頂戴よロケンロー!
ライヴ観に行かないとなぁ、おっかないなぁ(笑)。いつかジャック達とB級ロック対決してほしいな。


『BOOGIEST BAND IN TOWN』 HERSHEY's(2016年)

01. ハーシーズのテーマ
02. ボウイフレンド
03. 恋のバブルガムサマー
04. 電流Boogie
05. デカダンス黄金狂時代
06. おしゃまな日曜日
07. すべての若き馬鹿野郎ども
08. ウサギノハミング
09. ROCK★STAR
10. Cat in suicide
11. 恋のロンドンポップ!!
12. blue velvet skirt
13. WILD HONEY
14. もっとだ!フープル
15. 町一番のブギーバンド!!

HERSHEY's are...
AICHAN (Gt,Vo) HERSHEY (Ba,Vo) HATO (Key, Cho) HYGZO (Dr, Cho)

※先着100名にもらえるカヴァー曲集の特典CDがまた最高で、花の名前のバンドとか座布団運んでる人のグループとか、見事にHERSHEY's流グラムロックアレンジでアッと驚く為五郎。もう残り少ないらしいので、お早めに。

『PLUG AWAY+』 大なり><小なり

暑すぎる夏をさらに熱くする熱中症必至?な大なり><小なりの新作EPが8/15にOTOTOYでハイレゾ配信された。早速ダウンロードし、部屋や街でも聴きまくり、すっかり熱中している。

ototoy.jp

『PLUG AWAY+』は、彼らがリスペクトしてやまないグランドファーザーズとの共演ライヴのセッション用に書き下ろされた新曲「PLUG AWAY」に、昨年リリースされた1stフルアルバム『フレット』から元カーネーションの鳥羽修さんが新たにミックスした4曲をプラスした5曲入りEP。

まずは何はともあれ最新曲「PLUG AWAY」が素ん晴らしい傑作ロックチューンで嬉しくなっちゃうのだ(作詞曲:えみコバーン/編曲:宙GGPキハラ/プロデュース:安部OHJI/ミックス:鳥羽修)。1stにして集大成的な渾身の力作『フレット』レコーディングからレコ発ツアーを経て、バンドアンサンブルは更に強化され、勢いと脂がノリまくった今の大なり><小なりの魅力が余すことなく大爆発している。イントロのTHE WHO「Baba O'riley」での壮大なシンセサイザーを彷彿とさせるスペーシーなギターの響きから、もうワクワクが止まらない。そこにドラムがズシャーン ズシャーン ズシャーンと来て、ベースがドドッ ドドッ ドドッと入ってくる女性リズム隊、姐さんどれだけ男前なんだ!プログレ的に変化するリズム展開に、ヨナフィとキハラさんのダイナミックな熱血ギターソロバトル、QUEENばりの分厚くサイケなコーラス。そう、ロックは生きている。歌詞もとてもユニークな視点で、1000年後の人類?が1000年前の現代の人類を振り返って、ちょっと呆れている。そう言えば、KIRINJIがRHYMESTERとコラボした新曲「The Great Journey」は現在に至るまでの人類の進化と歴史を歌っているようだが、それとは逆の発想と言えるかもしれない。ともかく、「PLUG AWAY」はサウンド&アレンジや詞の世界ともにスケールが果てしなくデカい曲である。それでいて、決して高尚なアートにはならず、近所の(ちょっと変わった)気のいいお兄ちゃんお姉ちゃん的な親しみやすさが滲み出るのが大なり><小なりのチャーミングさだろう。映画ではなく、漫画のようなロック。最高である。

残りの『フレット』収録の4曲は日本のチャド・ブレイクこと鳥羽修さんの手によって、驚くほど変身している(新曲と言ってもいいくらい)。グランドファーザーズGRANDFATHERS』、青山陽一『Blues For Tomato』、西村哲也『運命の彼のメロディ』、加藤千晶『蟻と梨』、青木孝明『さようなら、夢』...名盤の陰に鳥羽修ミックスあり。私も全幅の信頼を置いている方なので、どう生まれ変わるか楽しみにしていたが、想像を軽く超えていた。『フレット』はライヴ盤に近いようなワイルドなミックスだったが、今回の鳥羽修ミックスバージョンでは、よりメリハリのある洗練されたアンサンブルに仕上がっている。主役から脇役までどの楽器の音もしっかり聞かせながら、メンバーの歌やコーラスをより前に押し出し、テンポを速くしているわけでもないのに疾走感がやたら増していたり、随所に遊び心のあるニクイ演出もあったり、鳥羽マジック炸裂しまくりだ(心から楽しんでいる鳥羽さんの顔が目に浮かぶ)。そして、ミックスというのはほとんどアレンジなのだな、ということを思い知らされる。そんな風に『フレット』と比較しながら聴くのも面白い、面白すぎる。

配信音源は気軽にすぐに入手できる(しかも、ハイレゾなので当然音が良い)ので、少しでも気になる方は是非。特に、カーネーションやKIRINJIの新譜が最高だと思っている人にも聴いていただきたいな。負けてないよ。


『PLUG AWAY+』 大なり><小なり(2016年)

1. PLUG AWAY
2. かんたんです
3. ハトなんですが
4. 変身
5. フレット

BAND EXPOな人たち② 青木孝明さん

嗚呼、BAND EXPOの1stアルバム『BAND EXPO』の発売(9/28)が待ち切れない!

BAND EXPO(仮タイトル)

BAND EXPO(仮タイトル)

そんなわけで、自分勝手にメンバーを紹介しちゃいます第二弾は、BAND EXPOリーダーの青木孝明さん。そもそもは青木さんのお店オルタネイティヴカフェでの、青木さんと河野薫さん、西村哲也さんとの共演ライヴがきっかけで、余ほどウマが合ったのでしょう、バンドやろうぜ!BAND EXPOが生まれたのです(ありがたい)。私はこれまで一度だけBAND EXPOのライヴを観たことがあるのですが(2013年7月@吉祥寺マンダラ2。まだオリジナル曲がなく、それぞれのソロ曲を演奏するスタイルでした)、その時の青木さんの心から楽しそうなお顔がとにかく印象的でした。大好きな人たちとバンドやれて超嬉しい!というオーラが眩しかったです。そんなどこまでも音楽にピュアなシンガーソングライターで演奏家です。


君がここにいる-BAND EXPO

私が青木孝明さんの存在を最初に知ったのは、青山陽一さんのバンドthe BM'sのベーシストとしてでした。青山さんは98年に徳間ジャパンからメジャーデビュー、青木さんはその勢い最高潮の徳間時代(『SO FAR, SO CLOSE』『EQ』『Bugcity』)での無敵なグルーヴを支えていました。特に、「難破船のセイラー」の荒波のようにうねりまくる(フレットレス)ベースプレイは日本のロック史に残る名演だと思います。なんてことを書きながら、この時期のBM'sのライヴを観なかったのを激しく後悔してきました...。現在のBM'sの千ヶ崎学さんは黒っぽいファンキーさが売りのベーシストですが、青木さんはもっとブリティッシュ寄りのスタイリッシュでロックなベースプレイでしょうか。背もシュッと高くてニック・ロウを思わせるような雰囲気ありますね。

そう言えば、テレビでは2001年にNHKスタジオパークからこんにちは」で、あがた森魚さんのバックで12弦アコースティックギターを弾いている青木さんの姿を観ました(ビデオ録画して何度か)。それから随分と時は流れて、実際に生で青木さんが歌っているのを観たのは、2010年1月@梅田ムジカジャポニカでのアコースティックライヴ。青木さんの他の出演者は、鈴木博文さん、青山陽一さん、西村哲也さんというメトロトロンなイベントでした。青木さんの生真面目でポップ職人的な弾き語りも素敵でしたが、アンコールの全員セッションが終わっても拍手が鳴り止まず、しょうがないなと博文さんが、じゃあ「くれない埠頭」なら出来るでしょうとみんなに無茶ぶりした時の、青木さんの見事な困り顔を未だに鮮烈に覚えています(笑)。以下の映像は、その時の青山さんと青木さんのセッションの模様、青木さんのギター伴奏も完璧です。


Yoichi Aoyama - Seed Song

そこからまた時が経って、2012年発表の最新作『さようなら、夢』で遅ればせながら初めて青木孝明さんのレコードを買いました。発売前にtwitterで西池崇さんが「傷ついた翼」のMVを紹介されていたのがきっかけだったと思います。そのMVを観て、あまりにも心に染み入ったので、これは絶対に聴かないといけないと。ほとんどをミドル~スローな曲で構成されたシンガーソングライター然としたじっくりと歌が堪能できる作品です。『さようなら、夢』というタイトルからも分かるように3.11以降の重たい気分は漂ってはいますが、瑞々しいメロディーと絶妙にカラフルなアレンジが素晴らしく。合間にインスト曲を挟み込んだりして、アルバムとしての流れも実に美しいです。ギター、ベース、ドラム、キーボードは青木さん自身の演奏というのがまた驚きで、スコーンと抜けるドラムがとても心地良いです(レーベルTOKYO MORの田中さんが「Band On The Runのポール・マッカートニーみたいなドラムだね」と仰っていて、まさしく!)。ギターがあればなんとかなるさ!と無邪気にロックンロールする篠原太郎さんとの「ギター」も最高で...おっとアルバムレヴューみたいになってしまいましたが、この年は加藤千晶『蟻と梨』と共に本当に何度も聴いて、精神的にしんどい時に救われました。そうやって一気に青木さんの音楽に惚れ込み、そこから旧譜を集めることになります。年末に大阪チャクラでのワタフェイ西村哲也さんを迎えた『さようなら、夢』レコ発ライヴを観に行き(ゴンチチチチ松村さんも来られていた!)、青木さんに西村さんがギター弾きまくっているのでと薦められて『Melody Circle』('96)を買ったり。


青木孝明+西村哲也 傷ついた翼 大阪・チャクラ

これまでのどの時代のどのアルバムも本当に名盤ばかりで、感動しながら今まで何をしていたんだという反省(出会った時がベストタイミングと思い込みます)。2014年に2枚組ベスト盤『タイムトラベラー』が発売されましたが、1992年から2014年までの新曲・再録曲を含む全30曲、名曲だらけです。ベスト盤から漏れた曲で更にベスト盤が作れてしまうくらい。青木という苗字が表すように、青々と茂った新緑の木々のようなまさしくエヴァーグリーンなポップソングの数々はもっと多くの人に聴かれるべきです。今からでも遅くないです、未体験の方はまずはベスト盤を聴いてみて下さい。そうすれば、私みたいに取り憑かれたように速攻で旧譜を買ってしまうことになります(笑)。青木さんのライヴ映像もYouTubeにたくさん上がってますので、チェックして、ライヴにも足を運んでみましょう。


Takaaki Aoki 青木孝明 アンソロジー 1992~2014 タイムトラベラー

メトロトロン25周年記念ライヴを収めたCD&DVD収録の青木さんがメトロトロンオールスターズを従えて演奏した「傷ついた翼」はザ・バンドのROCK OF AGESみたいでめちゃくちゃ泣けるとか、あれもこれもまだまだ言いたいことはありますが、あまりに長くなるので、また別の機会に。最後は、BAND EXPOの青木さん作詞曲のオリジナルナンバー「Switch」のライヴVerで。何も言いますまい、ただひたすらカッコイイ!グレイト!西村さんのテレキャスターの鳴りの凄まじさが映像越しにもよく分かると思います。


Switch/BAND EXPO
ミュージックビデオが公開されました!3人のボーカル回しが泣ける感動の名曲「Memories」です。青木さんと矢部浩志さんとのリズム隊の優しく胸にこみ上げてくる歌うグルーヴにも注目です。


Memories/BAND EXPO

BAND EXPOな人たち① 河野薫さん

BAND EXPOという私にとっての夢のスーパーバンドがついに9/28に1stアルバムを発売する、という嬉しすぎるニュースが届きました!まだ聴いていないにも関わらず、今年のベストアルバムではないかという勢いです。青木孝明、西村哲也、河野薫、という知る人ぞ知る国内屈指のメロディーメイカー揃い踏み、もちろんそれぞれ優れたシンガーであり演奏家でもあるわけで、言うなれば表情の違うポール・マッカートニーが三人もいるかのようなロックバンドです。そんな三人が互いに刺激しあい創られたアルバムでしょうから、素晴しい傑作に仕上がっているのは間違いないですし、きっと1stアルバムらしい魔法がかったフレッシュさに満ちているはずです。あとは予想・想像をどれだけ超えてくれるか?楽しみで仕方ありません。なんかもうやたら気分が盛り上がってきたので、ここからはそのBAND EXPOのメンバーを私なりに紹介していきたいと思います。まずは最年少(!)の河野薫さんから。

BAND EXPO(仮タイトル)

BAND EXPO(仮タイトル)

河野薫(コウノカオル、コーノカオル)さんと言えば、セロファンのメンバーとして最も知られていると思います。関西出身のバンドで90年代から活動していたオルタナギターポップバンド、メジャーデビューも果たして、ヤング・カーネーションとかポスト・スピッツなんて言われてましたっけ。ちょうどメジャーデビューした頃、ラジオで聴いた「Maybe Tomorrow」という曲でセロファンの音楽を知りました(存在自体はもう少し前から知っていましたが)。彼らのCDを買ったのは、私が大学生の頃、2000年発表の『WANDERING MAN』を京都三条の十字屋にて。まるで古今東西のポップス万華鏡のような作品で、今聴いてもワクワクする名盤です。前年に発表されたカーネーション『Parakeet & Ghost』よりも愛聴していましたね。その『WANDERING MAN』の中で、「恋はグルグル」というまさしくグルグルしたヘンテコな曲を最初に気に入ったのですが、それが河野さん作曲ナンバーでした。確か、NHK-FMミュージックスクエア(か別の特番)で、音楽評論家が次にブレイクしてほしいバンドを紹介するコーナーがあって、萩原健太さんがセロファン推しでその曲をかけていたと記憶しています。セロファンでは河野さんの曲はそれほど多くは無いのですが、彼の得意とするロマンチックでメロウなナンバーがアルバムの良いアクセントになっています。2001年の『HALF LIFE』に収録されている「クランベリー」なんて、Pilot「Girl Next Door」を思わせるリズムの小粋なポップナンバーで、ファンの間でも人気のある曲ではないでしょうか?そんな名曲は、BAND EXPOでも西村哲也さんボーカルで度々演奏されているようです(観たい!)。しかし、セロファンはいいバンドです。前にムジカジャポニカでジャック達のライヴが終わった後、ぱぱぼっくすのたるたにさんがかけていたセロファンの曲を聴きながら(たるたにさんはセロファン最初期のライヴから観ていたそう)、一色進さんが「セロファンはカッコイイよ」と仰っていました。今でもよく聴きますし、ずっと活動再開を願っているバンドの一つです。

HALF LIFE

HALF LIFE

結局、セロファンはレコードは聴いていても、ライヴは観たことないまま活動休止してしまいました。それで、私が初めてライヴで動いている河野薫さんを目撃したのは、タマコウォルズというバンドでした。2008年の5月ですかね、拾得で西村哲也さんとの対バンでタマコウォルズを観ました。河野さんに、西池崇さん、鳥羽修さん、中原由貴さん、佐藤友亮さん(sugarbeans)、高橋結子さん、という猛者揃いの最狂のライヴバンドでした。竜巻を真正面から身体に浴びているかのようなグルーヴの嵐がもうとにかく凄まじかったです。その彼らの豪快なステージで私が密かに目を奪われていたのは、河野さんのクールに熱いベースプレイでした。グルーヴをグイグイと推進させながらも、各人の派手なプレイと音を渋く一つに束ねているように感じたのです。ベーシスト河野薫を強力に印象付けられたライヴなのでした。とか思っているうちに、このバンドもアルバムは一枚残してくれましたが、いつの間にか活動休止してしまいました。うーん、惜しい...


2008/5/18 「シナンノワザ」タマコウォルズ@京都拾得

さて、現在の河野薫さんはTRICKY HUMAN SPECIALという名義でソロ活動もしておられます。2014年発表の『孤独の巨人』は隠れたシンガーソングライター名作、ピアノを中心としたどことなくスペーシーな味付けで、胸をじわりと打つメロウな佳曲揃いです。ギターで青木孝明さんも参加されていますよ。そして、それ以来のTRICKY HUMAN SPECIALの新アルバム『黄金の足跡』がBAND EXPOと同時発売されるそうです。参加メンバーも主にBAND EXPOなので、ここはひとつ2枚買いで行っておきましょう!


陽は沈みまた昇る

黄金の足跡

黄金の足跡

あ、そうだ!河野薫さんは最近取り上げたdodo specialのメンバーでもありまして、『ドードーよ永遠に!』収録の「月待人」はしっとりした色気のある河野さんらしい逸品ですので、是非チェックしてみて下さいね。では最後に、BAND EXPOでの河野さん作詞作曲ナンバーのライヴVerをご覧頂きましょう。エンディングで意外な展開を見せます、ワンダフル!


The End of Century - BAND EXPO

ミュージックビデオが公開されました!3人のボーカル回しが泣ける感動の名曲「Memories」です。何と言っても、この普遍的な愛に満ちた歌をバンド最年少のコーノさんが書いているというのが素敵じゃないか。


Memories/BAND EXPO

『Multimodal Sentiment』 カーネーション

ニッポンの夏、カーネーションの夏。

この感じ、なんだか久しぶりのような気がします。カーネーションの4年ぶり通算16枚目(!!)のニューアルバム『Multimodal Sentiment』が届きました。私的には、前作『Sweet Romance』が周囲の大絶賛に反して、3.11の暗い影に覆われたどことなくフォークシンガーな雰囲気に気分良く乗れなかった(ごめんなさい)ので、今作はどうなのだろう?とちょっと身構えたりしていたのですが、これがスコーンと左中間スタンドに飛び込んでいくような痛快なポップ&ロックアルバムで、嬉しくなってニヤニヤが止まりませんでした。私の好きなカーネーションの要素である気だるくグルーヴィーも復活、とは言え、あのコロムビア時代のソウル風味とはまた違ったギターロックサウンド、とは言え、トリオ時代のあのやさぐれたビンテージな質感でもない、スペーシーなオルタナティヴギターロックで、これまでとも雰囲気が異なる、またしても新しいカーネーションサウンドが堪能できます。大田譲さんのリードボーカル曲が無いのはやや寂しいですが、その代わりに、ベースの存在感はいつにも増して強力のように感じます。気持ちよくブルンブルン弾いておられる顔が目に浮かびますね。そのあたりも注目して聴いて、踊ってみましょう。

Multimodal Sentiment

Multimodal Sentiment

カーネーションはいつもそうではあるのですが、曲調がこれまで以上にこれでもかとバラエティに富んでいて、それでいてアルバムとしての一貫性があるのは流石のひと言。それはやはり直枝政広さんが綴る歌詞の影響も大きいのでしょう。アルバムの至るところに散りばめられた、だらしなさや情けなさ。特に今作はストレートにさらけ出されているような気がします。私が初めて買ったカーネーションのアルバムは『GIRL FRIEND ARMY』('96)で、高校二年の夏でした。当時の直枝さんは37歳、ちょうど今の私の年齢なのですが、「Garden City Life」で”どうすれば大人になれるんだろう”と歌っていて(私も実感を持ってまさしくそう思ってます)、それから20年経ったアルバムの1曲目が「まともになりたい」ですからね。巷ではびこる夢や希望を持とうという前向きなメッセージなんかよりも、はるかに勇気が湧きます。50を過ぎてもそんな風に相変わらず思い悩んでいていいんだ、という(笑)。アルバムタイトルのMultimodal Sentimentとは、多様な感情という意味だそうですが、喜怒哀楽だけでは割り切れないようなあやふやな切なさを歌うのが直枝節でカーネーション節でしょうか。だからこそグッとくるのです。


カーネーション「いつかここで会いましょう」MUSIC VIDEO

ウィルコをお手本にしたような幾何学的なギターアンサンブルで吠える「まともになりたい」、ロックやポップスで初めて聞く”土器”という言葉に衝撃を受ける。トーキング・ヘッズよろしくアフロファンキーな「WARUGI」は、直枝さんのデヴィッド・バーン唱法や大田さんの激ヤバなベースプレイ、グレイプバイン西川弘剛さんとの白熱ギターバトルと聴きどころだらけ。宇宙空間を星くず蹴散らし切なく疾走する「Lost in the Stars」コロムビア期を思わせる直枝さん曰くEdo Riverの続編的メロウグルーヴ名曲「いつかここで会いましょう」を聴きながら、自分の原風景を思い浮かべてみる、そして涙。ジャック達やタイツの一色進さんっぽいと言ったらアレだけど、妙な展開がクセになる捻じれロック「Pendulum Lab」。沼の底からジワジワと這い上がってくるようなフォークロック風「跳べ!アオガエル」。先行シングル曲のアルバムミックス、鋭く燃え上がるSFパワーポップアダムスキー大谷能生さんのラップ?をフィーチャーした「Autumn's End」はとにかく謎すぎるエレクトロポップ、エンケンの哀愁の東京タワーを思い出したり。直枝さんお得意のニール・ヤングもの(実際のモデルはティーンエイジ・ファンクラブだそうだが)「E.B.I.」鈴木博文さんにも通じるやるせなさ、海老フライがやたらカッコよく響くのは一体。大森靖子さんとの狂おしいデュエットナンバー「続・無修正ロマンティック~泥仕合~」は後半戦のハイライト、佐藤優介さんアレンジのキラめくストリングスが夜の街の孤独なふたりを包み込む。折り重なるひしゃげた轟音ギターの艶めかしい快楽に浸る「Blank and Margin」。かったるいしやる気が出ないという疲れた心情だけで描き切った「メテオ定食」、でも何か忘れてないか?ズーンと胸に落ちる。仕掛けがいっぱいで、1周目より2周目の方がぐんと旨味が増す、これからもずっと聴き続けたくなるアルバム。そういう意味でも、実にカーネーションらしい作品だと思う。

やっぱり、カーネーション先輩にはいつだって刺激を受けます。ありがたい。


『Multimodal Sentiment』 カーネーション(2016年)

01. まともになりたい
02. WARUGI
03. Lost in the Stars
04. いつかここで会いましょう
05. Pendulum Lab
06. 跳べ!アオガエル
07. アダムスキー (Album Mix)
08. Autumn's End
09. E.B.I.
10. 続・無修正ロマンティック~泥仕合
11. Blank and Margin
12. メテオ定食 (Album Mix)

カーネーション直枝政広、大田譲

参加メンバー:大谷能生大森靖子川本真琴佐藤優介、sugarbeans、徳澤青弦、西川弘剛、張替智広、松江潤 etc