レコードは果てしなく

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【私の好きな歌010】 「Fly Fly Fly」柴山一幸

(しつこく言うけど)9月28日にBAND EXPO『BAND EXPO』とTRICKY HUMAN SPECIAL『黄金の足跡』、そのちょうど一週間後の10月5日にこの柴山一幸『Fly Fly Fly』、と怒涛のように傑作レコードがリリースされ、ロックリスナーな私的に2016年最も熱い週だった(全てドラムス矢部浩志さんだし!)。どれもこれもが聴き応えありまくる名曲名唱名演ばかりで味わうのに忙しい、嬉しい悲鳴ってやつだ。私が背中を見ている先輩は彼らのような世代であって、ベテランとも言えるキャリアがあり、ある程度の高い(足らないけど)評価を受けていた(一幸さんの言葉を借りると)ナイスミドルな音楽家たちが何となく安定した存在として、あまりスポットが当たらないのが歯痒い。こんなにビンビン心に響く刺激的な歌が生まれているのに、聴かないのは勿体ない。全くもってナウな音楽なのだよ。

そんな中でも最高にホットなシンガーが柴山一幸さんだ。2013年の3rd『I'll Be There』から始まり、2014年に4th『君とオンガク』、昨年は5th『YELLING』と毎年オリジナルアルバムを発表し、そして、今年も『Fly Fly Fly』という新たな名盤が届けられた(何だかサラッと言っているが、その全てが全身全霊の作品なので、とんでもないことである)。前作はバンドメンバーを一新し、その勢いに満ち溢れたロックンロールアルバムだったが、今作はしっかりと興奮させながらもじっくりと歌を聴かせる身体の芯からじわりと熱くなるアルバム、という印象だ。リードトラックとして、富士山ご当地アイドル3776の井出ちよのさんと石田彰プロデューサー(実は2nd『涙色スケルトン』にも参加していた)をフィーチャーしたことで話題になった、現代版I Want You Backとも言えそうなキャッチーでクールなディスコナンバー「That's The Way」でツカミはバッチリ。他にも、思わずカーネーションファンもニヤリな爽快なポップロックサーモスタット」、真骨頂の激情バラード「uSOTSUKI」、Be My Babyでナイアガラなリズムで穏やかに語られる亡き父への想い「たとえばこんなレクイエム」、パンクなスタイルカウンシル歌謡「Now Is The Time」など、バラエティに富んでいるのは流石のプップフリークである。


柴山一幸 featuring 井出ちよの、石田彰 / That's the way

何と言っても、このアルバムの凄味は最後の3曲なのだ。全てがここに収斂されていく。ジョニィへの伝言に恋は桃色にニール・ヤングが混ざり合ったような泥沼から這い上がるフォークロック「希望の橋」でググッとこみ上げ、続く、あまりにも美しく儚く壮大なアルバム表題曲「Fly Fly Fly」で羽ばたいていく鳥たちと共に感動が空高く舞い上がる。柴山一幸の祈り、生と死、ゴスペルミュージック...泣きながら多幸感に包まれる。抑制と高揚、完全に詩の世界と一体化した一世一代の歌唱に、自然と引っ張られてバンドの演奏も眩しく光り輝いている。アルバムではフェードアウトしているが、実はディスクユニオンの特典でこの曲のフルバージョンが聴ける。そのフェードアウトしてからの1分50秒の演奏が、また一段と狂おしい(アルバムとしてはフェードアウトで正解)。どうやら終了の合図を出しても、演奏が止まらなかったようだ。そのバンドメンバーの気持ち、分かる。こんな凄まじい名曲を終わらせたくない、みんな感極まりながら演奏していたのではないだろうか。またオマエ大袈裟なことを言っているだろう、と思う前に、まずは聴いてほしい。これはもうロックとしか言いようがないのだ、体験しよう。そして、アルバムは、Natural Womanならぬ「Natural Man」で、高ぶった感情を鎮めるようにしんと静かに幕を下ろす。

Fly Fly Fly

Fly Fly Fly

「Fly Fly Fly」柴山一幸(2016年)
作詞作曲クレジットなし

※『Fly Fly Fly』参加メンバー
柴山一幸:Vo,Guitar,Arrange
杉浦琢雄:Keyboard,Cho,Arrange
矢部浩志:Drums,Arrange
若山隆行:Bass,Arrange
平田崇:Guitar,Arrange
加藤ケンタ:Guitar,Cho,Arrange
森芳樹:Per,Arrange

井出ちよの[3776]:Guest Vo
石田彰:Guest Rap