レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

「2つの魚影」グランドファーザーズ

ちょうど40年前の今日(1975年4月25日)、シュガー・ベイブ『SONGS』がリリースされたそうです。言わずもがなシュガー・ベイブ山下達郎さんや大貫妙子さんを輩出したバンドとして知られ、唯一のアルバム『SONGS』はその都会的でグルーヴィーなサウンドが後世のシティポップバンドに多大な影響を与えた、与え続けているわけです。なのですが、昨今のシュガー・ベイブ・フォロワーと呼ばれているバンドを見ていると、コーラスハーモニーを主体とした爽やかでお洒落なポップスをそう称しているような印象で。もちろん、それはそれで間違いではないと思うのですが、私にとってのシュガー・ベイブは正真正銘のロックバンド、とりわけギターバンドという認識なのです。彼らの演奏は決して流麗ではなく良い意味での粗さがダンサブルな昂揚感を生んでおり、「今日はなんだか」のLIVEテイクなんかはほとんどガレージロックじゃないかというくらいの荒くれぶり。もう村松邦男さんのギタープレイこそがシュガー・ベイブだと思っているほどです。じゃあ、そんな偏屈な私に”最もシュガー・ベイブの遺伝子を感じる作品は?”と問われれば、答えはもう決めています、それはグランドファーザーズの『BBB』。

世間的にグランドファーザーズと言えば青山陽一さんのバンド、というイメージが強いかもしれませんが、西村哲也さん、大田譲さん(現カーネーション)との3人のバラバラの個性が絶妙にブレンドされた非常にユニークなバンドなのです。特に、エモーショナルな西村さんとブルージーな青山さんとのツインギターは魔法のように絡み合い果てしなく刺激的(是非ともライヴを観てほしい!!!)。どんなにギターが暴れようとも大田さんが腰の据わった太いベースでしっかり支えてくれます。そんなグランドファーザーズの2ndアルバムが『BBB』(1991年)。89年の1st『Western-Charnande』では、渋いルーツミュージックとメンバーの数少ない共通項だったXTCTalking Headsなどのニューウェイヴをミックスした何とも不思議な味わいのあるアルバムでしたが、『BBB』ではソウルやファンクなど青山陽一色をより濃くした仕上がりになっています(完全に黒くはならないのがグランドファーザーズらしさなのかも)。当時は解散前のラストアルバムとして発表されており(現在は再結成してマイペースに活動しておられます)、相当に熱のこもったアルバムで、青山さん史上でも屈指の名曲が揃っていると思います。バンドアンサンブルやサウンドも切れ味が鋭くて素晴しい。あと、1stではボーカルは青山さんオンリーでしたが、西村さんや大田さんのボーカル曲も含まれているというのも特徴ですね。西村哲也作詞作曲ボーカル曲である「東京モノリス」はギタリストらしい重ねに重ねたギターロックナンバーで、『SONGS』での村松邦男さんによるスワンプロック「ためいきばかり」を思い出します。その流れで言うと、1曲目のラテンブーガルー「ROUGH MIXのテーマ」は、『SONGS』ラストの「SUGAR」を彷彿とさせ、こりゃあ『SONGS』からそのまま『BBB』へ繋がっているじゃないか!と独り妄想してニヤけております。

『BBB』については全曲語りたいくらいなので、まず今回は私がこのアルバムで最も好きな曲「2つの魚影」について。青山陽一作詞作曲、Todd Rundgrenを思わせるブルーアイドソウル(ブラウンアイドソウルか)な名バラード。結構ストレートにロマンチックなのですが、サビで”油まみれ”という言葉が出てくるところ(湾岸戦争の頃でした)や”バイキングの~船が~逃げてく~”の複雑なハーモニー(主旋律が分からない。鼻歌が困難)はさすが青山さんです。”夕暮れ~”の後の長いタメはちょっと照れ臭い演出ですが、ウットリが止まりません。そう、ウットリと言えば間奏での西村さんのギターソロ!フレーズからはみ出したブゥーンやキュイッと鳴るとこまでもう完璧、Wings「My Love」のHenry McCulloughばりの名演だと思っています。拾得での関西初ワンマンLIVE(2009年1月11日。拾得は74年にシュガー・ベイブもLIVEをやっている!)でこの曲の生演奏を観れましたが、あの時の西村さんが弾くレスポールの艶やかな響きは今でも鮮明に思い出せます...ウットリ...

 「2つの魚影」グランドファーザーズ(作詞・作曲:青山陽一)1991

青山陽一:Vocals, Chorus, Acoustic Guitar

西村哲也:Electric Guitar

大田譲:Bass

棚谷祐一:Keyboards

夏秋冬春:Drums