レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

2020.1.26 『白井良明 Solo Live in Osaka 2020 ~ギター番長、大阪2Days~』白井良明/ラリーパパ&ファウンデーション@雲州堂

今冬は暖冬で冬らしい冬ではないけども、それなりに寒い大寒の1月26日。大阪では東京五輪の出場権最後の一枠をかけた女子マラソン大会があり、松田瑞生選手の鍛えられた腹筋で力強く圧巻の走りに熱くなる。東京の大相撲初場所では西前頭17枚目の徳勝龍関がまさかまさかの幕尻優勝を決めた驚きの日でもあった。そんな夜、大阪北浜の雲州堂でムーンライダーズ白井良明さんのソロライヴが行われた。共演は、関西の歌心代表 ”ラリーパパ&ファウンデーション”。

開場10分前に雲州堂に到着すると既に熱心なムーンライダーズファンが和気あいあいと集っている、そこへ私のような半端なファンも混ざる。外では冬支度の安田支度さんが誘導(というのか?)していて、受付には斎藤祢々子さんがいる。内に入れば、2月発売予定の冬支度のニューアルバム『こんな風に』が一足先に流れている。どうやら最終形の一つ前のミックスバージョンらしい。カフェで流れている趣味の良いソフトロックのようにイイ感じにBGM化している(最終形はボーカルの音量を上げたそう)。冬支度のライヴを何度も観ている雲州堂で聴いているとライヴバージョンのようにも聞こえる。これから転換の間も終演後もずっとリピートでかかっていたので、何ステージ分聴いたのか、宣伝が激しいなと笑ってしまった。そんなこんなで気がつけばテーブルを取っ払った客席は満席の大盛況、期待とワクワクが充満していた。

まずはラリーパパ&ファウンデーションから。浪花のザ・バンド ”ラリーパパ&カーネギーママ” のミスター、チョウ・ヒョンレさんの別動バンドで、ラリーパパ&カーネギーママとパイレーツ・カヌー(PiCas)の融合、そこにQuncho with THE THIRD STONE BANDの女性ホーン隊が加わるという大所帯の華やかなルーツロック楽団。楽器としてはエレキギター2本にバンジョー&スライドギターにマンドリンウッドベースという弦楽器全部盛りのような編成にサックス&フルートとトロンボーン、もちろんドラムもいて、どんだけ~と思わず言いたくなるが、雲州堂の広くはないステージにひしめき合ってるというかはみ出てる(笑)。ライヴははっぴいえんどにも負けてない名曲「冬の日の情景」でスタート。記念すべきラリーパパ&カーネギーママの1stアルバムの1曲目であるが、サックス浦朋恵さん加入後のやや迷走していた?頃に演奏していた長尺プログレバージョン(私は勝手にグレイトフル・デッド・バージョンと呼んでいる)を元にしたであろうアレンジ。じわじわ~と熱を帯びていく。続く米国南部リズムが賑やかなスワンプロック「どこへ行こう」でギアがぐいっと上がり、のんびりメロウな「ふらいと」でのChicago「Saturday In The Park」のようなホーンアレンジにニヤリ。鍵盤がいない代わりにホーンセクションやカントリーの弦楽器がいる、温もりのある陽気な音が雲州堂(元そろばん会社の倉庫)のウッディな空間に溶け合っている。音数減らしてシンガーソングライターのように歌う「ベイビー」を聴きながら、ラリーパパ&カーネギーママ解散直後の試行錯誤していた頃のチョウさんのソロを思い出し、ジーンとくる。この編成でハマりまくりの泥臭いカントリーブルース「狼の好物は迷える子羊」もその時期のソロ曲であった。すっかり定番になっているスタックス系列のファンクバンドRound Robin Monopoly「Peace Of Mind」の日本語カヴァー、もう大好き。チョウさんの刻むウラのリズムが気持ちいい、70年代のシンガーソングライター系のアルバムで1曲だけ入っているレゲエ風の曲ってめっちゃ良くないですか?そういう感じ。The Bandの大名曲カヴァー「夏の夜の出来事(The Night They Drove Old Dixie Down)」も日本語詞があまりに見事に乗っているので、カヴァーということを忘れるくらい、いつ聴いても素晴らしい、グッとこみ上げてくる。ホーンセクションが入っているThe Band『Rock Of Ages』は最も好きなライヴ盤なのだ。駄洒落で作り上げた(笑)ユーモアいっぱいの故ロジャー・ティリソンへの哀悼歌でラリーパパ&カーネギーママの最新曲「路上」、サウス・トゥ・サウスを目指してる(そうやったん!?)豪快にホーンが鳴り響くファンキーでソウルフルな「まちとまち」。基本的に雲州堂はアコースティックなハコなので、音量は抑えめなのだけど、それゆえにそれぞれの楽器の生音がよく聞こえ、いい塩梅にリラックスした歌と演奏がすこぶる心地良い。最後はラリーパパ&ファウンデーション名義の新作EPからチョウさんの静かな熱唱を堪能できる「帰路」、オールドタイミーなグッドタイムチューン「月に願いを」というムーンライダーズの月にちなんだ曲で朗らかに白井良明さんへバトンタッチ。

ファンの大歓声に迎え入れられる白井良明さん、私は初めましての良明さん。ムーンライダーズのメンバーとしてはもちろんのこと、ギタリストやアレンジャーとして様々なジャンルの数多くの作品を手掛けておられる偉大なポップ職人。松田聖子ガラスの林檎」でのロバート・フリップばりの強烈なギター、松尾清憲「愛しのロージー」のスーパーウルトラミラクルキャッチーなアレンジ、堀ちえみ「Wa・ショイ!」の気が狂ったかのぶっ飛んだテクノポップアレンジなど、今、大人気の80's和モノでもものすごい名仕事だらけ。ムーンライダーズでは、白井良明という名は体を表す持ち前の明るさを音楽的にも人間的にもバンドに持ち込んだ方という印象で、良明さんがいなかったらもっともっとマニアックな存在になってたのではないだろうか...。そんな多彩な顔を持つ白井良明さんの弾き語りソロライヴ。どんなことされるのかなぁと思ったら、この日はフォークシンガー白井良明さん。のっけからボブ・ディランの「風に吹かれて」からのアンサーソングのオリジナル曲へと。良明さんが18歳の頃、若き哲学者こと斉藤哲夫さんのバッキングミュージシャンとしてフォーク系の事務所(如月ミュージック?)に入られたそう。岡林信康高田渡加川良斉藤哲夫...フォークの偉人大集合。ムーンライダーズの「犬にインタビュー」の合間にそれらの先輩方の曲をメドレーで歌ってくれた、斉藤哲夫ファンとしては「吉祥寺」に悶絶。3月19日の渋谷クアトロでのムーンライダーズのライヴは一瞬で売り切れたそうで、会場にいたファンも買えなかった人多数...なので、ムーンライダーズの曲をいっぱい歌うよとサービス精神溢れる優しい良明さん。とにかく明るい歌とギターとステージングが楽しい、盛り上げ名人。ライダーズナンバーでは自発的に巻き起こるファンのコーラスにホント愛されてるんだなぁと思い知る。栃木弁マンボ話からのかしぶち哲郎さん作の「D/P」では明るさの中にもほの暗さが感じられた時に私はグッときたり、「ゆうがたフレンド」のサビのメロディーもそう。前もって歌詞カードが配られていた「マネーを吸い取ろう」という曲では、お客さんみんなでコーラスした。特にどういう曲か説明されずに練習が始まったが、イントロですぐに分かった、ジョージ・ハリソン「My Sweet Lord」の替え歌だ...駄洒落やん(笑)。コーラスと言えば、「ゆうがたフレンド」の金はない金はない~♪でお金のある人コーラスしてと良明さんが言ったら、しーん...となったのが可笑しかった。金はないが愛はある。ムーンライダーズパワーポップ名曲「Sweet Bitter Candy」、良明さんの明るさの富士山大噴火「トンピクレンッ子」はもちろん大盛り上がり、「ヤッホーヤッホーナンマイダ」の奇天烈ブルースから、最後は還暦になって生まれたという音楽を作り続ける演奏し続けることの喜びや愛情に満ち満ちたソロ曲「愛の仕事"musician"」で大粒の涙...。良明さんも感謝しておられましたが、「長い間、ずっと音楽をやり続けてくれてありがとうございます」と「長い間、ずっと聴き続けてくれてありがとうございます」という互いの想いが通じ合う幸せな場面でした。

...って、これで終わりじゃないよアンコール、ここからがまた大きなお楽しみ、白井良明さんとラリーパパ&ファウンデーションの夢のセッションコーナー。二組の異なる音楽世界がどのようにミックスされるのか?とても興味深かったのだけど、いきなりの「トラベシア」が感動的に素晴らしかった。ムーンライダーズ版ともまた一味違う異国情緒、ラテンというよりはヨーロッパの香りがしていた。彼らにもこういう演奏が出来るのか!と驚きの発見...とりわけ時折挟まれるガンホさんの色気あるオブリが絶品だった。お次は、ムーンライダーズでの良明さんの代表曲「青空のマリー」。これもラリーパパにはまず見られないポップな曲調で、チョウさんが苦労しながら頑張って歌い上げていた(笑)。おまけに、ガンホさんのギターにはエフェクトがかかっているというレアな光景も見れ、最後の唐突なエンディングもギリギリセーフでキまった(汗)。そんな借りてきた猫から今度は水を得た魚へ、ラストはThe Bandの日本語カヴァー「重荷(The Weight)」。これはもう大得意、自信満々に歌うチョウさんに自信満々に演奏するラリーパパ&ファウンデーションの面々。良明さんからチョウさんやガンホさんとガッツリ握手していたのが物語る最高のセッションでございました。ここでただひとつ、惜しむらくは良明さんがエレキギターを弾きまくるシーンが無かったこと...次回は是非に。

それでもまだまだ鳴り止まない拍手と歓声...に応えてステージに上がってくれた良明さん。それも、な、な、なんと!あがた森魚さんを引き連れて。ウソだろ、おい...これはもう誰も想像していなかったまさしくサプライズ。「良明に元気もらいに来た。ラリーパパも良明も本当に素晴らしかった、元気出たよ」とあがたさん。私の未だ観たことない偉人の一人があがたさんだったわけだが、思いがけず観れることになるとは。そして、あがたさんと良明さんの文字通りぶっつけ本番の「大寒町」を...あの歌声が聴けて感無量です(泣)。新年早々いろんな感情が湧き上がってくるライヴが観れた、こいつぁ春から縁起がいいわぇ。

【出演】
白井良明
■ ラリーパパ&ファウンデーション
(チョウ・ヒョンレ、キム・ガンホ、水田十夢、岩城一彦、吉岡孝、kaori、ヨシカワヨシコ、大間知潤)

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当代きっての白井良明ファンである眼福ユウコ画伯のイラストによるフライヤーとチケット

それにしても主催者たまたさんは引きが強い、愛と熱意の賜物でしょう。お疲れ様でした、ありがとうございます。

【私の好きな歌029】「うわさの男」ニルソン

暑中お見舞い申し上げます、メリークリスマス、良いお年を、あけましておめでとうございます...随分ご無沙汰してしまいました、お元気でしょうか?前回の記事から半年の間、昨年の後半にもDJやライヴのBGM選曲させてもらったり、観客としても素敵なライヴやかっこいいライヴ(ああ、ジャック達よ、鈴木さえ子さん!)目白押しで全部が全部楽しかったですねぇ。中でも、三匹夜会の熊谷太輔さんより依頼がありまして、12/1と12/8の二週にわたって渋谷七面鳥で行われた西村哲也さんの還暦お祝いライヴでBGMを選曲させてもらえたことは至極光栄ありがたき幸せ、西村ファン冥利に尽きるというのはまさにこのこと、そりゃあもう気合いを入れて選曲しました(開演ギリギリまで呑んでる出演者たちは聴いてないだろうけど・笑)。そして、昨年最後に観たライヴも音凪での西村さん、新しい友だち鶴来正基さん(ピアノ)の創意にあふれた美しいアレンジでまた新たな西村さんの魅力を発見できたかと思ったら、ソロライヴ活動お休み宣言があり...ちょっとしんみりしてしまった年の瀬。ということもありましたが、2019年はDJという思い切ったチャレンジ(矢野一希さんのおかげです・涙)でちょろっと人前に出るようになったこともあり、内向的な自分も外に気持ちが開いてきたのか、新たな出会いがたくさんあって本当に充実した一年になりました。音楽やレコード愛を通じて人と出会える、こんな嬉しいことはないですねぇ...とますます実感。出会ってくださった皆様、遠くから優しく見守ってくださった皆様、ありがとうございました!2020年も引き続きヨロシクお願いいたします。

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映画『真夜中のカーボーイ』オリジナル・サウンドトラック版

年が明けて早速1/5に塚本エレバティでDJさせてもらったのですが、その1曲目にかけたのがニルソンの「うわさの男(Everybody's Talkin')」でした。これまで聴いた中で一番好きな歌は?という超難問を訊かれたら、気分によってコロコロ変わりますが、かなりの確率で答えるだろう曲がこれです。ずっと前にテレビで観たドキュメンタリー番組で、故郷が近くのトータス松本が「レコード屋も映画館も何もないこんな田舎からとにかく早く都会に出たかった」と言っていたのに大いに共感した私ですが、それでもやはり根は田舎者、この曲のイントロのアコースティックギターのカントリー風アルペジオの旋律に美しく絡むストリングスの古めかしくも新鮮な響きが聞こえてくるとどうにも故郷の風景を思い出し、郷愁のすきま風がすうっと吹き込んできます。ニルソンのユーモラスで伸びやかな歌唱も何とも言えないドリーミーな心地良さで、私にとっては最も心洗われる曲です。そして、このニルソンの「うわさの男」が主題歌で使われていた映画『真夜中のカーボーイ』(1969年)も大好きで、ジョーとラッツォのはみ出し者どうしの奇妙な友情に憧れてます。ちょうど5年前の今頃、心斎橋club WONDERでの青木孝明さんのソロライヴを観に行った時に、帰りがたまたま青木さんと一緒になったのですが、その青木さんの衣装がプレスリーみたいな袖に紐がいっぱいついたカウボーイジャケットを着ておられたので、夜の心斎橋の街を歩く長身のカウボーイ青木さんと小男の私との並びがまるでジョーとラッツォのようだと心の中でつぶやいた...という密かな思い出もあったり(つまり、私はダスティ・ホフマンか!?)。

「うわさの男」という日本語タイトルがまたイカしてるから私のDJネームにしようかな...と一瞬思ったけど、変に期待されそうなので止めます(笑)。

「Everybody's Talkin'(うわさの男)」Nilsson (1968年)
written by Fred Neil

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DJうわさの男!?

【私の好きな歌028】「ほんとに久しぶりだね」寺尾聡

令和元年6月16日(日)。塚本エレバティにて「dancin' the 荒城」というイベントにDJとして参加...と書いていてなんだかむず痒いですが、生まれて初めてDJしてきました。シンガーソングライターでDJお米炊き廉太郎の顔も持つ矢野一希さんに誘っていただきました。赤毛のケリー、DJ特攻一番機のケツ持ち DJ麗泥子、OBBA、よだこういち(わがし屋よだもち)という共演DJ陣にpainful(矢野一希+梅田麻美子+渡瀬千尋)のライヴ、様々な美味しそう面白そうなお店の参加もあって、盛りだくさんで緩やかに楽しい時間が流れているイベントでした。私がDJで参加することになった経緯は、1月の雲州堂での冬支度10周年記念ワンマンライヴで、観に来られていた矢野さんとたまたま話したのがそもそものきっかけで。私が選曲したBGMが会場に流れている中、「けいすけさんはDJやらないんですか?」「いやぁ、DJはちょっと...恥ずかしいし。今度、矢野さんのDJイベント観に行きますよ」「いや、観に来なくていいんで、出てください」というやりとりが始まりでした。選曲すること自体は好きだけど、自分は人見知りで引きこもり気質の非パーティーピープルな人間だし、DJはやりたいようなやりたくないような...なんとも言えない複雑な気持ちでしたが、その後すぐに矢野さんから正式にお誘いがあり、それは初めてレコードをまわすDJばかりが出るイベントだったのですが、どうにも日が合わずお断り...するとまたすぐに来た次のお誘いが今回のイベントでした。「dancin' the 荒城」はなんとなくリラックスした心地良さそうなイベントのイメージがあったので、きっとガチガチじゃないだろう、顔をよく知ったpainfulのみんなもいることだし、この感じなら出てもいいかなぁと思い、参加することにしました。初めてフライヤーに自分の名前が載って嬉し恥ずかし、ツイッターで告知なんかもしてみたり(たくさんの応援ありがとうございます!)。

DJイベントに行ったことないし、DJとは何たるものか?イマイチよく分かっていない、もちろんDJミキサーなんてまともに見たことない、普段安物のしょぼいベルトドライブのレコードプレイヤーでレコード聴いているので、ちゃんとしたターンテーブルも使ったことない、こんなんで大丈夫なのか?と不安で打ち震えながらも、とにかく選曲だけは私らしくしっかりしておけば何とかなるやろうという妙な楽天家ぶりも発揮したり、ゆらゆらしながら当日を迎えました。始まる30分前にエレバティに行って、painfulのリハを横目に早速、DJ練習。事前にYouTube見てチラッと勉強してみたが全く歯が立たず、DJ機器を目の前にしたら茫然自失...何をどうすればいいか分からない。エレバティの細見さんや矢野さんに軽く教えてもらい、サーファリースやジャン&ディーン、セルメンのレコードで遊んでみる。いっぱいあるツマミは怖いので触らない、とりあえず頭出しと曲の最後でなんちゃってフェードアウト&フェードインできればいい(それしか出来ない)。私のDJとは、ディスクをじっくりかける人。15分ほど触ってたらそろそろ開始時間、赤毛のケリーさん(赤毛の男性だと思い込んでいた...)とOBBAさんも来られてBtoBでプレイボール、交互にレコードをかけていくやつです。私一人VSケリー&OBBA組というまるで修行のような...冷や汗脂汗いろんな汗をかきながら目に入ったレコードを必死にかけるだけ(笑)。シカゴ、ダニー飯田とパラダイス・キング、ヤン・シスターズ、ポピーズ、ジェームズ・ギャングをかけたかどうだったか?記憶が定かでありません...スレイド「ムーヴ・オ-ヴァー」をかけた時にケリーさんが「あ、被った!あれ、でも、なんか違う」と仰って、後でオリジナルのジャニス・ジョプリン版も聴けました(オリジナルは持ってない)。私が今最も気になってるDJの薬師丸さんが来られていたようで、この時の慌てふためいた姿を見られてこっ恥ずかしい...。さて、ここからは一人20分ずつ(2セット)レコードをまわしていくDJショーの時間です。OBBAさんは謎のコミックソング?や野球モノからパンクも何でも飲み込んで攻めのカットインでめっちゃカッコイイ、私を意識してくれたのか子供ばんどかけたりニック・ロウコステロイアン・デューリーのSTIFFモノも随所に入れ込んでくれ、ウキウキしました。赤毛のケリーさんは私の趣味と割と近いようなロック系を中心にオールディーズからラーナーズなどの最近のものまで、奥田民生やサザンという有名どころもかけたり、これまた楽しいです。DJ特攻一番機のケツ持ち DJ麗泥子さんは、ハードコアな爆音世界にフロアを走り回るピカチュウというなかなかカオスな...知らない曲だらけでお客さんにザ・ラプチャーを教えてもらいました。トリを飾ったよだこういちさんは、和菓子屋さんらしからぬ?アゲアゲナンバー連発容赦なくぶった切りの華麗なカットインでダンスグルーヴの洪水、フロアも大盛り上がり踊りまくりです(それにしても、今はBOØWYが熱いんでしょうか?)。真ん中にはpainfulのライヴ演奏もあり、矢野さんのシティポップ風味の洒落た曲に甘やかな声がよく似合うし、都会的なテレキャスのリズムもグッド、ペーさんのフルートと千尋さんのドラムがコーラス含め素敵な華を添えて、涼やかな風が吹いていました。

そして、私はと言うと...MCで矢野さんが「今日のDJはみんな結構ゴリゴリだったからやりづらい...」と思わず嘆いていたように、私も同じことを感じていましたが(笑)、今更セットは変えられないので、後はもう野となれ山となれの開き直り精神で何とかやり切りました。1セット目は洋モノで、ハーロー・ウィルコックスとオーキーズ「西部野郎」、ナンシー・シナトラリー・ヘイゼルウッド「ジャクソン」、ジェリー・リード「アラバマのワイルド・マン」、デオダート「キャラバン」、ポインター・シスターズ「一人寝」、スターバック「恋のムーンライト」、ブレントン・ウッド「恋のラヴィ・ダヴィ」(裏返して「ギミ・リトル・サイン」も)。2セット目は和モノ、ベンチャーズ「京都の恋」、モップス「あかずの踏切り」、寺尾聡「ほんとに久しぶりだね」、西郷輝彦「グッド・ナイト・ベイビー・グッド・ナイト」、和田アキ子「夏の夜のサンバ」、荻野達也とバニーズ「悲しき雨音」、ザ・ゴールデン・カップス「蝶は飛ばない」。こんなのんびりしたプレイリストでお送りしました。これまで作ってきたライヴ会場BGMでもそうですが、1曲目にインスト曲をかけるのが私の流儀、もうBPMとか無視して、ついついアルバムを聴いているかのような流れにしたくなる感じは自分のリスナー気質なのでしょう。あと、バリバリのソウルミュージックのレコードをかけてるわけではないけど、OBBAさんに「ソウルが好きなんがよう分かるわ」と言われたのが嬉しかったです。まさしくその通りで、どんなジャンルでもソウルフルな音楽が好きなんです、どうしても滲み出ちゃうんですねぇ。DJ先輩の皆さんのキレキレのプレイのおかげで、逆に、自分の持ち味が浮き立ったような気がしないでもないような...結構楽しんでもらえたし、面白かったと言ってもらえたので、初めてにしては上出来でしょう(と思いたい)。今かけているレコードのジャケットを台に載せる度に、え、何だろう?とみんなが集まって来てくれたり、曲のことを訊いてくれたのが、興味持ってくれてるんだなぁと何より幸せな気分になりました。2セット目の時に、冬支度の安田さんとキョーコさんがわざわざ天満のなかい山からハシゴして駆けつけて来てくれたのも心強かったです。終わりのBtoBは安堵感とちょっと酔っぱらっていたので色々やらかしましたが(笑)、すっかりゴキゲンさんでした。最後の最後はDJお米炊き廉太郎さんがかけた大橋純子&美乃家セントラル・ステイション「シンプル・ラブ」、”生きている悩みなんか 此処では忘れて” 身も心も踊った一日になりました。矢野さん、お誘いありがとうございました。遊びに来て下さったお客さま、共演者の皆さま、出店の皆さま、スタッフの皆さまもありがとうございました(一度言ってみたかった)。今後ともよろしくお願い致します。

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寺尾聡「ほんとに久しぶりだね」

このイベントの4日後、令和元年6月20日に40歳の誕生日を迎えました。嗚呼、若かったあいつがとうとう...そんな今の自分に捧げる曲は、DJでもかけて好評だった寺尾聡「ほんとに久しぶりだね」。中年になっても、できればこの曲のムードやジャケットの寝そべる寺尾聰のように呑気に生きていきたいものです(そうはいかない)。喫茶ロック本でも紹介されていた1974年のシングル。昔付き合っていた彼女にほんとに久しぶりに会ったら、彼女の話し声やお酒を呑んでる時の湿った唇、作ってくれた味噌汁の味に当時のことをいろいろ思い出して、また恋してしまいそうになるのだけど、そこをグッと堪えるオトナの?歌です。もちろん、あの寺尾聰の歌声ではあるけど、その後の「ルビーの指環」の色気あるダンディな雰囲気とはまた違って、ちょっと情けなく憎めない可愛さがあって、私はこの寺尾聰がすごく好きなのです。親近感というのでしょうか。作編曲はミッキー吉野で演奏もミッキー吉野グループなので、ほのぼのしていてもどこかグルーヴィーなのもツボで、大きな音で聴いたら意外に踊れました。B面の「何処かへ」もボッサ歌謡のお洒落ムーディーな佳曲です。今は無き元町リズムキングスで300円くらいで買ったんじゃなかったかなぁ...

「ほんとに久しぶりだね」 寺尾聡(1974年)
作詞 ケン田村/作編曲 ミッキー吉野/演奏 ミッキー吉野グループ

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冬支度安田さんが撮った写真を拝借...

【私の好きな歌027】「スプリンクラー」山下達郎

平成31年4月8日、塚本ハウリンバーで伊藤広規・Nacomi・前島文子によるユニット ”NA-KOKI with FUMIchan" のライヴを観る。言わずもがな山下達郎バンドの40年にも渡って不動のベーシストである伊藤広規さんと大好きな京都屈指の可憐なブルースドラマー前島文子さんがリズム隊を組むというので、居ても立ってもいられなくなった。数多くのセッションで引っ張りだこの前島さんですが、私にとっては京都版の西村哲也バンドでの彼女がお馴染み。西村バンドの前ドラマー五十川清さん(あのEP-4三条通さんです)が亡くなられて、失意の西村さんを救ってくれた(つまり、私にとっても救世主)前島さんは、2010年11月15日の拾得ライヴ以来PORK PIE HATS~彼のラビッツとかれこれ9年のお付き合い。様々な音楽要素が散らばる西村ワールドにも柔軟に対応し、歌心を真ん中にしなやかにキレキレのビートを叩き出す姿にいつも惚れ惚れする。私と同い年なので、そういう意味でも、特別な存在で自慢のドラマー。西村さんのライヴの時は、もしかしたら彼女の気持ちになって観ていたりするかもしれない(怖い)。そんな前島さんに「好きなドラマーは誰ですか?」と訊くと、即座に「青山純さん!」と返ってくる。7年前に前島さんがNacomiさんのバンドで伊藤広規さんのバンドと共演した時に、憧れの青山純さんのドラムセットで叩いたという話を聞いて驚いたのだけど、今回はついに青山さんの相棒の広規さんとのセッション、想いは通じるんだなぁとまざまざと実感。心から楽しそうに演奏する前島さんを観ていると、私まで嬉しくなる。広規さんからも「ドラムいいねぇ~、青山純子に改名したら?」という最上の誉め言葉をもらっていた。この日のライヴは、ボニー・レイットみたく粋で麗しいブルースシンガー&ギタリストNacomiさんのオリジナル曲(『Bluesy Pop』というアルバムは広規さんのプロデュース)だけでなく、カヴァーも多数演奏。クリーム「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」やレッド・ツェッペリン「ブラック・ドッグ」(マジかよ!と客席から)、スティング「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」からレディオヘッドまで!Nacomiさん曰く「普段はアンプ直結かエフェクター1個つなぐくらいですが、今日は4個つないでます」というロックナンバーがズラリ。カッコイイのになんか可笑しくて、ニヤニヤが止まらない。1曲デュエットで歌ったTAKU&ブギーロケッツというバンドのボーカル&ギターTAKUさんの見た目も歌声も男前な歌いっぷりも印象的だった。そして...皆が頭の片隅で思っていた演るのか?演らないのか?のモヤモヤが晴れる時!本編ラストは満を持して達郎ナンバーを。しかも、まさかの「アトムの子」だ!! 生フィル・スペクターというべき大人数で生み出すグルーヴと音圧の塊のような曲をたった三人のトリオ(+お客さんのタンバリン)で演奏、広規さんも初めての試みだったそうだが、前島さんがアフリカの陣太鼓のごとくタムを乱れ打ち始めた途端に興奮マックス、そこに絡みつく広規さんのあのベースライン!あの音!が...ここは何千人規模ではなく40人でぎっしり満員の空間と距離感で浴びる贅沢な幸せよ(涙)。この多幸感溢れる余韻で今年は生きていけそうな気さえする。とにかくこんな夢のような機会を作ってくれたNacomiさんに感謝感謝、もちろん歌もギタープレイ(青山純さんが言うところのイイ塩梅にレイドバックした感じ)も最高でした。

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山下達郎スプリンクラー」シングル盤。鈴木英人さんのイラストジャケ。

伊藤広規さんにお会いできるので、あわよくばサインをもらおうとバッグに忍ばせていたのが、山下達郎「アトムの子」ではなく、スプリンクラーのシングル盤。結局、いろんなお客さん(人生の先輩方)と話されている中を突っ込んでいく勇気はなく、サインはもらえなかったが...。「スプリンクラー」は1983年の11作目のシングルで、オリジナルアルバムには未収録。”君なしでは生きられない 悲しい言葉さ” 達郎さんのロック魂がジリジリと滲み出たこの曲がもう好きで好きで堪らない。歌だけでなくバンドの演奏からも、雨に降られずぶ濡れになった孤独で寂しい都会の男の背中が見える。伊藤広規さん特有のゴリゴリと鳴る音色で奏でる、雨を含んだ革靴で物憂げに歩く重たい足取りのベースラインはロックの名演だろう。もちろん、アスファルトを冷たく打ちつける雨のように刻まれるドラムは青山純さん。そして、間奏でブルーコメッツ井上大輔さんがブロウする愛の炎を吹き消すテナーサックスソロに泣き濡れるのだ。ナイーヴなハードボイルド、憧れる。

スプリンクラー山下達郎(1983年)
作詞・作曲・編曲:山下達郎

カーネーション「One Day」は「スプリンクラー」のグルーヴやムードに影響を受けているのではないかと勝手に思っている...

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ライヴ終了後の記念撮影。左から前島文子さん、伊藤広規さん、Nacomiさん。まさしく両手に花の広規さんの図。ハウリンバーの雰囲気もグッドでした。

『丘をこえて』たけとんぼ

世の中は”平成最後の”祭り絶賛開催中、なんだか浮かれてる感じで終わりって気がしませんが。そんな中で、ロックスターのユーヤさんとショーケンが続けて逝ってしまうという悲しみと寂しさで頭が冷静に...やはりひとつの時代の終わりを感じざるを得ません。それは平成というよりも、私の心の中で続いている昭和の終わりというか...(思わず顔が思い浮かんだジュリーには長生きしてもらわないと)。とか言いながら、年号が変わっても私自身は相変わらずだろうし、音楽が無くなるわけでもないし、別に悲観してるわけでもないですよ。気軽にいろんな時代の音楽にアクセスできる環境を生かして、今の若い人たちでもえらく昭和の香りを放っているバンドが思いの外たくさん出てきているような印象もあります。むしろ、リアルタイム世代じゃないからこその面白さや新しさがあったり。なので、もうすぐ中年入りする私も「最近の若いモンわ~」なんて偉そうに分かったようなこと言わないように気をつけねばと改めて戒める今日この頃です。

そんな私が今最も期待しているナウなヤングのロックバンド、平成最後の、もとい、心の昭和最後のブライテストホープ”たけとんぼ” です。ギター&ボーカル平松稜大さんとドラムス&ボーカルきむらさとしさんによるフォークロック歌謡バンド。はっぴいえんどはちみつぱい、ごまのはえ...70年代のひらがなバンドの系譜にあるフォーキーでアーシーな味わい、AMERICAやCS&Nなどから影響を受けた米国西海岸系コーラス、ふぉーくや昭和歌謡にも通ずる一緒に歌いたくなる親しみやすいメロディーがとても魅力的。72年くらいからそのまま飛び出てきたようなルックスやギター弾いて歌い出したら止まらない心から歌が溢れてるキャラクターも人懐こくチャーミングで、老若男女幅広い世代から愛されるでしょう。三年ほど前のある日の夕方サンテレビでテレ東「5時に夢中」(ゲストが弘田三枝子さんだった!)を観ていると、途中の追跡ベスト8のコーナーで今若者の間で昭和歌謡ブームが来てるらしいが本当か?を調査するということで、インタビューを受けていたディスクユニオン昭和歌謡館から出てきたある青年が、昭和歌謡の想いを饒舌に語り歌いまくり、何だコイツは?ヤバイ奴がいると思っていたら、それが平松さんだったというエピソードも(笑)。昨年、拾得での世田谷ピンポンズのレコ発でバックバンドやサポートアクトとして一緒に来ていたたけとんぼの面々と初めて会って話して、いーはとーゔの菊地芳将さんと共に三人が並んで歌ったりキャッキャしてる感じが微笑ましくずっと観ていたかった(平松さんは私の音楽語りを愛情があって好きですと褒めてくれたし)。また、私の持論に ”斉藤哲夫好きは信用できる” というのがあるのだけど、彼らもまさにそう...どころか、今や哲夫さんから可愛がられているほど。たけとんぼは、斉藤哲夫さんが若き哲学者と呼ばれていた初期のURCフォーク期からCBSソニーに移って以降の肩の力が抜けてビートルズ的なポップセンスがふわりと表に出てきた頃の音楽性に近いかもしれない。あるいは『東京』のサニーデイ・サービスなんかも思い出したけど、それよりもむしろ70年代のサニーデイと呼ばれた?銀河鉄道だろうか(メガネのボーカルと似てるし)。とかなんとか思い浮かぶものがいっぱい、話すと長くなるのでここらで止めよう(笑)。

では、昨年のその拾得ライヴに合わせて持って来てくれた、たけとんぼの2nd EPというかファーストミニアルバム『丘をこえて』の話を。このレコードは、平松さんの田舎のおばあちゃん家に機材を持ち込んで気の合う演奏仲間たちと合宿生活しながらセッション録音した文字通りのホームレコーディング作品。70年代のシンガーソングライター系の音楽を愛するものならきっと憧れる、細野晴臣HOSONO HOUSE』やジェイムス・テイラー『One Man Dog』のあの独特な風合いの温もりサウンドを目指したのだろうが、まさしくそれが成功しているし、彼らの音楽やキャラクターになんのストレスもなくハマっている。部屋のスピーカーで鳴らして炬燵の中で聴くとホント気持ちいいバンドサウンド、心と体がポカポカだ。みんなでせーので録っているので、演奏が始まる前の合図の”ハイっ”や”行きまぁす”とか曲終わりのノイズまでが愛おしい。そんな見事なバランスの録音とミックスは足立洋介さん、「あいつらは音楽以外のことはどうしようもない何も決められないから、オレがやるしかないんですよ(笑)」と話してくれた面倒見のいい頼りになる先輩だ。集ったゲストミュージシャンのニクイばかりの歌心で渋く瑞々しいレイドバック感溢れる演奏もまた素晴らしく、平松&きむらの青春のハーモニーをしっかり引き立てている。全5曲のミニアルバムというボリュームではあるが、みそさざい氏が描く雰囲気バッチリの素敵すぎるジャケット含め、今のたけとんぼワールドが余すことなくパッケージされている軽やかに濃い名盤だと思う。さぁ、空高く丘をこえてどこまでも飛んで行け、たけとんぼ。

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たけとんぼ『丘をこえて』。ジャケットのイラストのテイストが似てるなぁと思った中川イサト『お茶の時間』の中ジャケと共に

電車にガタゴト揺られて弾むようなリズムで青年のむず痒い苦悩を歌う「こころにテレフォン」、似ているというわけではないが、イントロでつまびかれるアコースティックギターの調べを聴いてGAROのファーストアルバムA面1曲目「一人で行くさ」と同じ景色が思い浮かんだ。アルバムタイトル曲「丘をこえて」ザ・バンドの「ザ・ウェイト」を彷彿とさせるフォークロックの名曲、マンドリンが効いたイナタいグルーヴにグッと酔いしれてると切り込んでくる三輪卓也さんの熱くロックなギターソロにジリジリと胸を焦がす。「水平線」はほのぼのとしたフォークソングでほっこりするが、ひと夏の淡い恋心を思い出し、ちょっぴりしょっぱい気持ちに。ハーモニカが狂おしく鳴り響くニール・ヤング「孤独の旅路」調のヘヴィーな「ぼくはトマトくん」はTHE FOWLSというバンドの金延幸子に名前が似た安延沙希子さんという方の曲、不思議な歌詞だがヌメリと突き刺さるものがある。一転してラストは曲名通りの儚く爽やかなAMERICA直系のメロウなソフトロック「秋風の少女」、ルルルーと歌うハミングとアコースティックギターの音色との美しい重なりにときめきが止まらない。さぁて、炬燵から出ようか。


たけとんぼ 2nd EP「丘をこえて」トレイラー

『丘をこえて』 たけとんぼ(2018年)

01. こころにテレフォン(平松稜大)
02. 丘をこえて(平松稜大)
03. 水平線(平松稜大)
04. ぼくはトマトくん(安延沙季子)
05. 秋風の少女(平松稜大)

たけとんぼ...
平松稜大(vo, a.guitar)、きむらさとし(drs, cho)

Guest Player...
三輪卓也(e.guitar)、ベラ氏(e.guitar, ba)、菊地芳将(ba, mandolin)

録音・ミックス・マスタリング...
足立洋介
録音場所...
伊那市 平松邸

イラストレーション...
仲本直輝(みそさざい)
デザイン...
きむらさとし、仲本直輝(みそさざい)

『rooftop talks』夢見る港

春ですね、春ですか?ここ最近の寒暖差の激しさになかなか身体がついて行けませんが、春先っていつもこんな感じでしたっけね。季節の記憶力が悪すぎて、思い出せませんが...。そんな今のこの気温よりあともう少し暖かい春らしい春になってくれたら、自然と聴きたくなる曲がありまして。それがメリー・ホプキンの「夢みる港(Temma Harbour)」(1970)、春の光が差してキラキラ反射する海の水面が目に浮かぶフォーキーでキュートなポップナンバーです。聴きながら日本盤シングルのジャケットに写る美しいメリー・ホプキンを眺めてほっこりし、その上の曲名に目を遣れば、続けて聴きたくなるのが...

”夢見る港” という、まさにその春の名曲の邦題を名前に頂戴した素敵なバンドの『rooftop talks』 という素敵なアルバム。夢見る港とは、長坂雅司さん(ex. chikisounds)率いる6人組の大所帯フォークロック楽団(roppenやbjonsのメンバーがいてややこしいとパイドパイパーハウスでもっぱら話題に・笑)で、『rooftop talks』は昨年発表された彼らの2ndアルバム(配信)。トロンボーンやフルートの温もり、バンジョーマンドリンが効いたアーシーでありながら足取りは軽やかなバンドサウンド。ふわりと心地良い潮風が吹く。プロコル・ハルムが ”海のザ・バンド” であれば、夢見る港はそのまんま ”波止場のザ・バンド” とでも呼びたいような。とか言うと渋いルーツ系のバンドかと思われそうだけど、決してそういうわけではなく、色んな音楽の要素がまぶされた今の時代にもしっかり通ずる開かれたポップなイイ曲満載。エモい、なんていう流行りの言葉があてはまるような瞬間も多々ある。そして、アルバムを聴き終えた時に、長坂さんのじんと胸に響く気だるく色っぽいソウルフルなボーカルが耳に残るのが、何より素晴らしい。もう大好きなボーカリストだ。『rooftop talks』というタイトルの通り、屋根の上で気の置けない人と温度や匂いや風を感じながら他愛ない世間話だったり思い出話だったりシリアスな話だったり時間を忘れて緩やかに続くお喋りのようなアルバム。リリースは秋だったけど、これからの春から夏にかけてピッタリだと思う。

rooftop talks

rooftop talks

  • 夢見る港
  • J-Pop
  • ¥1650

力強くも切ないイントロがワクワクと不安が混ざり合う春の到来を告げるオープニングナンバー「spring」、軽快なマンドリンのリズムに乗って桜並木をスキップしたくなる。続く「run run run」はその名のごとく疾走する夏の風切るポップナンバーで、今度は海に向かって全速力で駆け出したくなる。ウキウキする二曲の後はしっとりと「夜の夏」、夏の夜ではなく夜の夏というちょっと捻じれたノスタルジー、都会に滲む風鈴の音色や蚊取り線香の匂い。アナログ7inchでシングルカットされたA面曲「コーヒー」は想像以上にエモく迫ってくる、一杯のコーヒーを命がけで淹れるマスターと命がけで飲む人、奥田民生以来の「コーヒー」ロックの名曲だろう。休みが必要だ、インスト曲の「真夜中にレオーネを想ふ」でふっと一息、とは言えdodoのハミングは摩訶不思議な味わい。風吹けよ風吹けよ、じわりじわりと感動的な「白い部屋」、歌心溢れる穏やかで狂おしいバンドの演奏にうっとりしながら白い壁をただぼんやり見つめ物思いに耽る。ヘヴィーにひしゃげたリズムにオルガンとワウギターによる強力なイントロやサイケに絡みつくフルートがトラフィックを思わせる「時間」、最初から最後まで淀みなく謎の展開を見せるヤバイ曲...と、ズブズブとディープな底なし沼に引きずり込まれそうなところでマリオのようにピョーンと跳ね上がりアルバム序盤に戻ったかのような清涼感溢れるギターポップならぬマンドリンポップ「8月の神」、高らかに鳴るトロンボーンよ、やたらと眩しい多幸感に包まれる。熱いスープを息吹きかけて冷ますかのように小刻みに刻まれるフルートのリズムが印象的な「日々のスープ」、ドラマチックに心を揺さぶられながら日々のささやかな喜びに感謝して、アルバムを閉じる。では、御茶ノ水あたりで会いましょう。


夢見る港 「rooftop talks」トレイラー

『rooftop talks』 夢見る港(2018年)

01. spring
02. run run run
03. 夜の夏
04. コーヒー
05. 真夜中にレオーネを想ふ
06. 白い部屋
07. 時間
08. 8月の神
09. 日々のスープ

夢見る港 ...
長坂雅司(Vo, A.G)、並木万実(Trombone, Flute, Cho)、アダチヨウスケ(Banjo, Mandolin, Cho)、橋本大輔(Ba)、北山昌樹(Drs)、松野寛広(Key)

Guest Player ...
kami(E.G)、コウノハイジ(E.G)、塚田直(E.G)、うちだあやこ(dodo. Cho)、不知火庵(dodo. Cho)


夢見る港「コーヒー」MV

☝なかなか衝撃な...失礼を承知で言いますが、長坂さんは女子にコーヒーをかけられるのが似合うような(笑)。昨年大阪の雲州堂で冬支度や大場ともよさんが出演のライヴで長坂さんと並木さんにお会いしましたが、とってもええ人たちでした。冬支度にも紹介できたので、関西でもフルメンバーの夢見る港のライヴが観れたらなぁと望んでいます。

【私の好きな歌026】「Lonesome Lover」Steve Ferguson

平成31年3月2日、梅田ムジカジャポニカにて嶌岡大祐ワンマンライヴを観た。嶌岡大祐さんとは...2002年神戸発ピアノトリオロックバンド”SGホネオカ”でデビュー、FM802でパワープレイされたり人気を博したが、バンドは上京を機に解散!?東京ではソロ活動を行いながら、鍵盤奏者としてライヴやレコーディングでゲントウキ一十三十一など様々なアーティストをサポート、その腕が認められ何と!鈴木茂『LAGOON』セッションにも呼ばれるという快挙(最近でも、昨年末の紅白歌合戦ユーミンのバックで涙モノの演奏をしていたあの鈴木茂+林立夫+小原礼のSKYと一緒にセッションしたりと交流は続いている)、2014年には1stソロアルバム『白いベンチ』を発表した。近年、関西に戻ってきてからは、西村哲也さんの京都のバンド”西村哲也と彼のラビッツ”に参加...という私が勝手にまとめた略歴。SGホネオカというバンド名は聞いたことはあったが、実際に彼の演奏を初めて観聴きしたのは2016年12月23日、拾得での西村哲也と彼のラビッツのライヴ。彼は私よりも2つ年下同世代の若武者だが、新加入とは思えないグルーヴィーかつエレガントにガンガン弾き倒す姿に感動、もはや西村さんが暴れる必要もないくらい。その上、彼のソロナンバーを1曲「ゴールデンベイビー」を披露してくれたのだが、いきなり始まる饒舌な前口上に意表を突かれるも、素晴らしくポップでめちゃくちゃゴキゲンな歌と演奏にまるで70年代のスティーヴィー・ワンダーのよう!驚き、参りました。彼のジャジィでソウルフルな音楽性とバンド演奏との相性もバッチリで、その瞬間に強く抱いたこのバンドでソロライヴをやってほしいという願いが、ついに叶ったこの日の思い切ったワンマンライヴ。家族友人知人関係の人たちや、SGホネオカからの根強いファン、私のような彼のラビッツ経由で知ったファンも混ざり合い、立ち見が出る満員御礼ぶり(彼のラビッツでこんなにお客さんがいたことないのでちょっとビビる・笑)で大いに盛り上がった。嶌岡大祐(Vocal, Keyboard, Piano)、西村哲也(Electric Guitar, Vocal, Chorus)、前島文子(Drums)、木田聡(Electric Bass)、ほりおみわ(Chorus)という関西屈指の百戦錬磨凄腕メンバーによるハートフルで歌心溢れるグルーヴに支えられて、これでもかと気持ち良く歌いに歌って弾きに弾いての熱演3時間。SGホネオカ時代の若気の至りイキってたんやろうなと思わせるどこか屈折したポップナンバー(西村さん曰く、青山陽一さん並みのややこしさ)から最近の日々の生活から滲み出たシンガーソングライター然りとした深みのあるしっとり聴かせるバラードまで、まぁ時に挟まれる歴史モノがご愛嬌というか謎ではあるが(笑)、底知れぬ魅力の嶌岡大祐ワールドを心行くまで堪能した。彼がMCで言っていた「ライヴハウスに通うようなコアな音楽好きの人もそうじゃないライトな音楽好きの人も一緒になって楽しめる音楽をやりたい」という思いにグッと来たし、きっとやれる人だと思う。打倒、星野源や!?出来ればこのメンバーで最高のシティポップスアルバムを作ってほしいが、それはまぁチクチク言っていこう(笑)。それはともかく、これで味を占めたのか?早速、5月に次のバンドライヴも決まったようで、嬉しい楽しみがまたひとつ増えた。

↑ ムジカジャポニカさんのツイートより。SGホネオカ時代のベン・フォールズに捧げる?最高に盛り上がる名曲「BENに首ったけ」の映像。熱く爽快な演奏は、きっとBENも首ったけでしょう。

以前、嶌岡さんに、西村さんと一緒に演奏する時にどういう風にギターを弾いてほしいとか何か要求しているのですか?と訊いてみたら、「基本的には自由に弾いてもらいますけど、デヴィッドTウォーカーのような感じでとは言ったかなぁ」と答えてくれた。なるほど確かに、西村さんはいつも以上にメロウなオブリガートを決めていたように感じたし、珍しくフェイザー?を使って音色自体にも甘やかさを出す場面もあったりとデヴィッド哲也ウォーカーしてた。...とか言って、実はデヴィッドTウォーカーがギターを弾いているレコードをそんなに持っていなくて、ややぼんやりとしたイメージなのだが...。私の頭の中にあるデヴィッドTのプレイスタイルのイメージの大半を占めているのが、米国西海岸ロックの名門アサイラム・レコード唯一の黒人シンガーソングライター&ピアニストのスティーヴ・ファーガソン(Steve Ferguson。NRBQの初代ギタリストとは同名異人)のタイトル通りの切ない名曲「Lonesome Lover」で弾いているムード。手数は多くないし音量も控えめだが、スティーヴのソウルフルというよりは人間味のある歌声で感情の起伏の激しい狂おしい歌に呼応して、いちいちクールにメロウなフレーズを繰り出すデヴィッドT、その余韻や弾いていない間合いまでメロウな頭から爪先までトロトロの全身メロウ職人だ。アルバム『Steve Ferguson』でデヴィッドTが弾いているのはこの1曲のみなのに、異常に印象に残る。ロマンチックな寂しさに浸りたい時は、この曲を聴くのです。

「Lonesome Lover」 Steve Ferguson
(Steve Ferguson)
from 『Steve Ferguson』(1973)

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『Steve Ferguson』ジャケットより。薔薇の似合うロンサムな男。

※滑らかにグルーヴするエド・グリーン(Drums)&ウィルトン・フェルダー(Bass)のリズム隊も最高のレコードだが、彼のラビッツの前島文子&木田聡リズム隊も負けていないよ。是非、西村哲也と彼のラビッツのライヴも観に来てほしいです!