レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

2018.11.11 『靴音までメロウに vol.28』冬支度with渡瀬千尋、藤江隆/rallypapa(チョウ・ヒョンレ)/スーマー@絵本カフェholo holo

チョウさんに楽しみにしていると言われたので(笑)、久しぶりにライヴレポートを書き留めようかと。昨日は11月11日の夕刻から、大阪のアコースティックデュオ冬支度が主催するイベント『靴音までメロウに』が大阪難波の絵本カフェholo holoにて、ラリーパパ&カーネギーママのリーダーrallypapaことチョウ・ヒョンレさんと横浜からスーマーさんを迎えて開催されました。継続は力なり、イベントは今回でなんと28回目、冬支度は今年で結成10周年(!!)なので、単純に1年に2~3回はやっているという計算。ひとつイベントをやるだけでも準備や宣伝や集客とかかなり大変だと思うのですが、地元関西以外のアーティストも積極的に呼び、いつもフレッシュな組み合わせで楽しませてくれます。今回は特に靴音を鳴らしながら弾き語るメロウな歌心のあるシンガー&ソングライターが揃い、そのイベント名にふさわしい一日になりましたね。客席も賑やかで和やかに盛り上がりました。ミックスジュース風味の西成の地ビール「新世界ニューロマンサー」も美味しく、歌に人にお酒に酔える喜び。

2018.11.11(sun) 16:30~
『靴音までメロウに vol.28』@難波・絵本カフェholo holo
■ 冬支度with渡瀬千尋藤江
 安田支度 vocal, a.guitar, mandolin
 斎藤祢々子 vocal, accordion, flute
 渡瀬千尋 percussion
 藤江隆 e.guitar
■ rallypapa(チョウ・ヒョンレ) vocal, a.guitar
■ スーマー vocal, a.guitar, banjo

トップバッターは、主催者の冬支度with渡瀬千尋藤江隆。このカルテット仕様の冬支度は今年のライヴ納め。何度も演奏を積み重ねてきた成果、インスト曲でゴキゲンに肩慣らしして始まる堂々としたステージング。冬支度のフォーク&ソフトロックな独特で完成されたポップス(と言っていいと思う)をパーカッション渡瀬千尋さんとストラトギター藤江隆さんが職人的な味付けでググッと歌物語の風景を広げてくれます。歌と音量とリズムのバランスも良く、思いがけずかぶりつき席でアンプの目の前で観ていた私は、モノラルレコードのように一塊になった4人の音を心地良く身体に浴びていました。今回は、私の大のお気に入り「初雪」が聴けたのが何より嬉しかったです。安田支度さんのジェイムス・テイラー風の洒落たメロディーとアコースティックギターのリズム。斎藤祢々子さんの歌の続きでフルートに移るところがとても好きで、初雪がハラハラと舞い降る様子が見える歌詞も素敵だし、斎藤さんの魅力がよく出ている曲だなぁと思うのです。千尋さんの小粋なパーカッションが入ればますますジェイムス・テイラー色、そこに藤江さんのトロトロのエレキギター荒井由実「卒業写真」の鈴木茂ばり)が重なり、それこそザ・セクションのようなバンドの艶やかな音の粒立ちで、ウットリしました。メロウという意味では、もしかしたらこの日の個人的ハイライトだったかもしれません。

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冬支度のレパートリーが終った後、そのまま2番手のチョウ・ヒョンレさんを呼び込み、一緒にラリーパパ&カーネギーママの「白い雲の下」をセッション(安田さんはマンドリン)。私はラリーパパ&カーネギーママは2nd『dreamsville』から聴き始めたので、思い入れが...なんて感傷的になることはなく、ただのんびりとリラックスしたリズムに身体が揺れました(チョウさんが間奏で冬支度にアシッドフォークな感じで!とハードな要求してた・笑)。冬支度の二人は元々ラリーパパ&カーネギーママのファンとして出会い、10年前にラリーパパが(第一次)解散してから何もすることなくなって、どうせなら自分らでやろうと冬支度を始めたそうです(すごい理由)。ちなみに、私もラリーパパのファンとして安田さんとは知り合っていて(斎藤さんの存在も知っていた)、何年か後にステージで演奏しているのを観てビックリしたのでした。そして、いよいよ機は熟した!念願の初共演セッションの後は、チョウさんのソロコーナーが続きます。そのラリーパパが解散を発表した直後から、チョウさんはソロ活動を開始、その頃のライヴも何度か観ています(西村哲也さんとの共演とか。実は西村さんにチョウさんを薦めてたり)が、チョウさんの弾き語りを観るのはそれ以来になるのでしょうか。何を偉そうにと怒られるのを承知で、当時のチョウさんは歌は当然のごとく圧倒的に素晴らしいのですが、ギター演奏がちょっと不安定でハラハラして観ているところがありました...が、今回はそんな不安は微塵も無く、ギターの響きと一体となって、歌が淀みなくスコーンと入り込んできて、とにかく痛快でした。ザ・バンドのリヴォン・ヘルムと堺正章が混ざったようなカラッとした人情味があるソウルフルな歌声で、これでもかと伸びやかに歌い上げてくれます。ボサノバタッチの「枯葉のブルース」や70年代のホームドラマの主題歌が似合う歌謡曲ちっくな「グッドバイ」最高でしたね。ステージ後半、チョウさんがどれやろうかと曲を探しながら、あっ!と閃いて、これを一緒にやりたいんだけどと冬支度の藤江隆さんを無理やり引っ張り出して(笑)、「狼の好物は迷える子羊」をぶっつけセッション。藤江さんは全く知らないチョウさんのソロ曲だと思うけども、徐々に曲のことが分かってきてブルージーなオブリやソロをキめ始め、最後は自然とスライドに切り替えていた(元々スライドギターが大活躍する曲)のは流石!チョウさんも客席も大興奮していました。そんな興奮冷めやらぬ思いつきセッションの後でチョウさんコーナーの最後は、前もって用意していた(笑)トリのスーマーさんとのセッション。いつか出会えると思っていましたけど、ついに出会えましたね、とスーマーさん。曲はラリーパパ&カーネギーママ「ふらいと」、スーマーさんのカラカラと転がるバンジョーが風を吹かし、今なら飛べるような気がしました。

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しばし休憩してから、スーマーさんのソロコーナー。2年前に音凪で冬支度with藤江隆との共演ライヴで観た以来のスーマーさん。アコースティックギターバンジョーの弾き語りで、ホーボーソングを。人生経験豊富な!?含蓄のある深みとコクのある歌声、でも、どこか軽妙なところがあるのが魅力的。曲自体もそうで、日本的なじめじめと湿ったフォークソングにならないのが私の好みです。特にバンジョーの弾き語りはユニークで、何気ない旅でも珍道中になる感じがしますよね。それにしてもバンジョーという楽器は弦を弾いてああいうパーカッシヴな音が出るのが不思議です。ライヴで聴いた方からお葬式に合いそうな歌ですねと言われたらしい「ちょいと寂しい夜の歌」は確かにお葬式に流れたらグッとくるような...お葬式でグッとくるというもおかしいですが、”ちょいと”泣けるというのが何かお葬式にイイんですよ。その曲の前だったでしょうか、いよいよスーマーさんも閃いてしまいました。この曲を一緒にやりたいんだけどと冬支度の藤江隆さんを無理やり引っ張り出して(笑)、なんと!かまやつひろしの大名曲「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」をぶっつけセッション。藤江さん曰く”ちょっとは(曲を)知っています”ながら、最初から最後まで熱くなる素晴らしいフレーズを連発!痺れまくりました(天国のムッシュに聴かせたい)。この日の藤江さんの装いはヒョウ柄キャスケットを被ったまるでデヴィッドTウォーカーのようで、冬支度では演奏もまさしくデヴィッドT的な引きの美学を見せてくれましたが、こういったぶっつけセッションでは思わずロック魂がドバッと噴出する瞬間が見れて、心の中では女の子のようにキャーッ!と叫んでいました。客席全体もこの日一番の盛り上がりでした、今宵の裏テーマは藤江隆祭り2018。最後は冬支度のみんなを招き入れて、「人生行きあたりばったり」を行きあたりばったりではないセッションでほのぼのした気分。そして、アンコールは更にチョウさんが加わり出演者全員でロジャー・ティリソン「ロックンロール・ジプシーズ」(日本語カヴァー)を。アコースティックギターエレキギターマンドリンバンジョーと弦楽器が勢揃い、斎藤さんのフルートがまたジプシー感を演出し、4人のボーカル回しもちょっと感動的で、幸せな大団円となりました。

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↑大活躍の藤江さん、チョウさんもスーマーさんも藤江さんのギターがもっと見たいからという理由で呼んだそうです。あ、千尋さんの写真無くてごめんなさい...彼女も歌バッキングのツボを心得ている素晴らしいドラマー&パーカッショニストです。独創的でもあり、ミカンのシェイカーを指で叩いて?愉快なリズムを出していました。

打ち上げの席も実に楽しく、この日は人と人が繋がっていく嬉しさを感じましたね。ここからまた面白いことが起きていくのでしょう。

【私の好きな歌023】「ちゃんばらロックンロール」子供ばんど

10月8日なかい山での湯川トーベン/冬支度with渡瀬千尋藤江隆のライヴは何とも思い出深いものになった。冬支度・斎藤祢々子さんがトーベンさんの長年のファンで、いつか共演したいという想いがついに実った(とは言え、なんと!トーベンさんからのご指名であった)2マンライヴ。

湯川トーベンさんは1973年に神無月でデビューしてから今年で音楽活動45周年!子供ばんどエンケンバンドのメンバーとして知られる...なんて説明不要な偉大すぎるロックベーシスト。なので、怖い人でもおかしくないとドキドキしながらなかい山に向かったが、店の前でトーベンさんが冬支度メンバーと和やかに喋っている...良い人かもしれないと少しほぐれる。先行の冬支度with渡瀬千尋藤江隆のステージの時は、ここいい?と私の前の椅子にトーベンさんが座られ、彼らの演奏を楽しそうにしっかり観ておられる。冬支度がしつこく繰り出す終わりそうで終わらない謎のブレイクに、それを知らないトーベンさんは最初は罠に引っ掛かり間違えてフライング拍手をしてしまったが、次の曲では拍手しかけた時にブレイクに気づき手を止め「危ねぇ」と一言、最終的には後ろにいる私に向かって「終わった?」と確かめてから拍手していた(笑)。後で、トーベンさんのステージで曲の終わりに彼らの真似をして謎のブレイクを入れて「冬支度を観ていて、曲って終わらなくていいんだと思った」と呆れながら笑っていた。また、トーベンさんは浪速のエイモス・ギャレット藤江隆さんの滋味溢れるギター演奏を間近で観て感銘を受けたのだろうか、「こんなことやってたでしょ?」と藤江さんの真似をしてギターソロを弾くというお茶目さも。言わば世間的に無名の演奏家でも腕があればすんなりと認める懐の深さで、パーカッション渡瀬千尋さん(砂ずりモグモグ中)や藤江さんは何度も駆り出され無茶ぶりセッションさせられていた(最高でした)。MCの途中で冬支度・安田支度さんの顔をじっと見て「誰かに似てるんだよなぁ、誰だろう?」とつぶやくと、いっこく堂に似てると言われますと安田さんが答えれば「そうだ!いっこく堂だ。ああ、スッキリしたぁ」とそれ以来安田さんを「いっこく」と呼んでいた。そんなとっても気さくな方。トーベンさんの歌や演奏も一緒に歌おうと言われずとも思わず歌いたくなる親しみやすさと大らかさ、いやぁもう、でっかい人である。遠藤賢司さんが全幅の信頼を置くのもむべなるかな、好きにならずにいられない。

終演後の談笑の席でも、トーベンさんはどこの誰だか分からない私にも優しく接してくれた(酒をダラダラこぼしながら話しかけてすみません)。持参した子供ばんど「ちゃんばらロックンロール」のシングル盤とハート・オブ・サタデイ・ナイトのCDにもサインを頂いた、宝物である。「ちゃんばらロックンロール」は、数年前に今は無き神戸元町レコード屋リズムキングスで、レジ横のシングルコーナーを漁っていた時に、店のオヤジさんから「これ面白かったよ!」と薦められたシングル盤だった。映画『ちゃんばらグラフィティー 斬る!』の主題歌とエンディング・テーマ「Early Times Junction」(沁みるバラード)をカップリングしたもので割とレアなのだろうか(CD化されてない?)、熱心なトーベンファンに見せてもピンと来ていなかった。トーベンさんはシングル盤を眺めながら、「これは宇崎竜童の作曲でね、元々はマイナー調の完全な演歌だったんだよ。子供ばんどのメンバーみんなでどうしよう?と困ってねぇ...悩んだ末にハードロックにした」と教えてくれた。前代未聞のちゃんばらハードロック。トーベンさんのぶっといベースに乗って、ちゃんばらでの刀がぶつかり合うカキンカキンと鳴る甲高い音をギターで表現し巧みにアレンジに取り込んでいるのが秀逸...と真面目に語るのは野暮だろう。ただただゴキゲンでふざけた愛すべきナンバーである。

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「ちゃんばらロックンロール」子供ばんど(1981年3月)
作詞:島武実/作曲:宇崎竜童/編曲:子供ばんど

子供ばんど...うじきつよし(ギター・ボーカル)、谷平こういち(ギター)、山戸ゆう(ドラムス)、湯川トーベン(ベース)

※10月14日に京都五条のカフェすずなりでフリーマーケットがあり、敬愛するギタリスト&シンガーソングライター西村哲也さんが出品されているという噂を聞きつけ行ってきました。ちょうど西村さんも来られていたので色々お話ししたのですが、西村さんは大学生の頃に79~82年くらいまで京都サーカス&サーカスでぎゅうぎゅうの満員の中で子供ばんどのライヴをよく観たと仰ってました。ライヴが終わった後に、ドーンと子供ばんどと書かれたバンが近くの銭湯に止まっていたよ(笑)というエピソードも教えてくれました。

『sweet twilight』 roppen

長い一週間だった...。火曜の関西への巨大台風直撃。労働中に1階のフロアに水が浸入してきたと思えば職場付近は見る見る冠水し、これはヤバイと2階に全員が一時避難、窓の隙間から見た水浸しの光景に背筋が凍る...帰りは信号や街灯が消え真っ暗闇でドブ川を歩く場面もあった。今でも道の真ん中にコンテナが転がっている。翌日、欠勤していた同僚に大変だったよと言ったら「そもそも、行っちゃダメですよ」と返され、ハイ、その通りです。体力、精神力共に大ダメージ、いっぺんに口内炎が出来た。水曜もヘトヘトながら働き、帰ってからは木曜休みなので夜更かししていたら、北海道で巨大地震のニュース...もうどうなっちゃってるの?幸い生きているし、家も停電とかもなく無事ではあったので、結果私自身には大した被害は無かったのだけど、ほとほとに疲れた。

冠水によるドブ川で泥まみれになった足で駅から家までトボトボ帰る道すがら、私のiPodからふと流れてきたB.J.トーマス「雨にぬれたら」。もはや雨にぬれるどころの状況ではなかったが、バート・バカラックによる完璧なポップソングのあまりの美しさにただ聴き惚れた。その3分の間は現実なんかどこかに行って、音楽ってええなぁと単純に感動。少しだけ気分がシフトする、癒しとは違う何か。私は労働帰りのバスの中で、意図的にroppen「スイートトワイライト」をよく聴く。バスから見える夜の街の風景とまろやかに溶け込み、疲れた身体と心に沁み込んでくる。現実なんかどこかに行って、ただひたすら、メロウな名曲に沁みているメロウな俺、に酔いしれる。三文役者のような人間だが、映画やドラマの主人公になった気分、音楽聴いている時くらいええやないの。


roppen 「Sweet Twilight」MV

東京発ウッドストックサウンドを標榜するroppenの待望の1stフルアルバム『sweet twilight』は、表題曲のみならず、全体的にメロウな空気に包まれた、まさしくスイートでトワイライトな名盤だ。前作のミニアルバム『旅の途中』よりもバラエティに富んだ楽曲を聴かせてくれ、サウンドもグッと洗練された印象。フロントマン中村浩章さんの生々しいアコースティックギターとちょっと頼りなくも色っぽい歌声も前面に出てきて堂々と響き渡る、意外にハートは熱い。名人・渡瀬賢吾さんの歌心たっぷりのオブリとソロをキメまくるエレクトリックギターと松野寛広さんの水面を揺れる光の粒のごとく柔らかいエレクトリックピアノの響きはやはりroppen特有なメロウの肝。ジョー・ママのジョエル・オブライエン&チャールズ・ラーキーを彷彿とさせる新加入のドラムス竹川悟史さん(ex.森は生きている)&ベース橋本大輔さんのリズム隊による隙間を活かした熟練のグルーヴ心地良し。ゲスト陣の仕事ぶりも素晴らしく、山田竜輝さんのサックスはオトナのムードをムンムンに演出し、「みちかけ」での鳥羽修さんVS渡瀬賢吾さんの白熱のギターソロ合戦は愉快痛快で、dodoうちだあやこさんのコーラスは今作でもしっとり艶やかに花を添える。私は来年で40歳を迎える若さにかまけていられなくなってきて草臥れてきた(笑)年齢だが、ほぼ同世代の彼らの音楽&サウンドは、そんな自分にジャストフィット。勝手に同志と思ってます、嬉しい。

SWEET TWILIGHT

SWEET TWILIGHT

アルバムは軽やかなグッドタイムポップ「走馬灯」でスタート、影絵の馬がスキップするようなドラムにスライドギターがゴキゲンに歌っている。イントロから一瞬にして昼間から夜明け前へ、メロウすぎる名曲「スイートトワイライト」。間奏のエイモス・ギャレット風味の星屑ギターソロとラストのむせび泣くサックスソロに酔いどれ朝帰りのスイートな悲哀、うちだコーラスは酔っぱらいに優しい。二日酔いの寝起きは「曇り空」が似合う晴れないセンチメンタル、アコースティックギターのフレットをキュッキュッと滑るノイズが切なく響く。ニューオーリンズなリズムに乗ってはっちゃけるドンチャン騒ぎ「みちかけ」、切れ味鋭い憧れの鳥羽ギターを迎え撃つ渡瀬ギターの奮闘ぶりに注耳。そんな賑やかな興奮はすぐさま涙へと変わるロマンチックなバラード「小さな羽根」、溢れんばかりのロンリネス...にジーンときてウットリしていたらムーディー極まりないサックスが鳴り響いてきて背筋がゾクッとする「セピアの馬車」、サビに向かってどんどんと開放されていく曲展開が堪らない。この2曲の繋ぎが私的ハイライトかも。都会の喧騒を緩やかに風を切るシティポップ「話の続き」、曲調が似ているからか前作の「ときめきの花」のギターフレーズを密かに入れ込む遊び心にニヤリ。見事なまでに文字通りのトレインソング「発車のベルが鳴り響く」はナイスグルーヴ!の一言、間奏のメンバーソロ回しセッション燃える!roppenいいバンドだねぇと酒が進む。ラストは新機軸か?どこか風変わりなポップナンバー「喫煙所」、打ち込みではないがテクノポップのような質感で謎の疾走感に満ちている。煙草を吸わない松野さんが書いたやけっぱちな喫煙者の歌詞も最高で、曲も含めなぜだかはっぴいえんど「抱きしめたい」が思い浮かんだり。と言いながら思いついたが、別名『夜街ろまん』とでも名付けたいアルバムである。


roppen 1st Full Album 「Sweet Twilight」trailer

『sweet twilight』 roppen(2018年)

01. 走馬灯
02. スイートトワイライト
03. 曇り空
04. みちかけ
05. 小さな羽根
06. セピアの馬車
07. 話の続き
08. 発車のベルが鳴り響く
09. 喫煙所

roppen
中村浩章 Vocal, A.Guitar
橋本大輔 Bass, Chorus
渡瀬賢吾 E.Guitar, Chorus
松野寛広 Keyboard
竹川悟史 Drums, Chorus

Guest Musician
鳥羽修 E.Guitar (M4)
山田竜輝 Sax (M2,M6,M9)
うちだあやこ Chorus (M1,M2)

All songs written by 中村浩章
(except M7 lyrics by 渡瀬賢吾、M9 lyrics by 松野寛広)

Produced & Arranged by roppen
Recorded by 小谷和秀、アダチヨウスケ
Mixed by 谷口雄
Mastered by 鳥羽修 (smalltown studio)

Photography by サイダカオリ
Design by アヤ

※roppenとメンバーが重なる弟分的バンドbjons『SILLY POPS』も併せて聴くと楽しいよ!音楽的な違いを例えるとbjonsがシュガー・ベイブなら、roppenはセンチメンタル・シティ・ロマンス?ちょっと違うか。


bjons / roppen Live at パイドパイパーハウス 2018.07.27

「メトロノーム/アスリート」 CHAINS

twitterで流行している?「ほんとうに衝撃を受け、かつ今でも聴き続けている生涯のお気に入りアルバムを10枚」選ぶ企画のバトンが冬支度の安田支度さんから回ってきて、20代くらいまでに驚き愛聴していた盤を選びながら振り返りが楽しかった。

では、ごく最近に受けた大きな衝撃と言えば何?と訊かれたら、随分と久しぶりに体感したCHAINSのライヴだろう。6月9日ロックの日に京都アバンギルトで開催された、チョウ・ヒョンレとPiCas with 中井大介西村哲也と彼のラビッツ、CHAINSという関西のバンド3組が集結したイベント。三者三様のロックであるも、素晴らしい楽曲と素晴らしい歌唱と素晴らしい演奏しかない凄味を堪能、互いが刺激し合って最後のセッションまで熱のこもった名演が数多く観れた今年上半期屈指の充実したイベントだった。皆キャリアをしっかり重ねもう若くは無いけども(失礼)、今が一番カッコイイと思えるなんて最高じゃないですか!中でも、CHAINSの闘志をメラメラと燃やす気迫と迫力に満ちたROCKとしか言いようのない演奏が半端なかった。彼らのライヴを観るのは、2003年5月30日の心斎橋KNAVEで観たイベント(w/倉橋ヨエコ残像カフェRUNT STAR)以来の15年ぶり(!)2回目。当時から今でもレコードは愛聴しているのにご無沙汰しすぎて申し訳ないと思いつつも、15年後の彼らの地に足が着いた幹の太いたくましい演奏を目の前にして、嗚呼、地道にライヴを積み重ね年輪を増やしてきたのだなぁと感じ入り、猛烈に感動した。カーティス・メイフィールドニール・ヤングの歌声を併せ持ち、ローウェル・ジョージばりの凄まじいスライドギターを弾く新村敦史さんの圧倒的な存在感はもちろんであるが、その後方で、ギターソロは新村さんに任せ、ひたすらリズムギターを弾き続ける横山道明さんの頑固職人ぶりに痺れまくった。ラリー藤本&伊藤拓史リズム隊の歌心が躍動するグルーヴ、丸山桂さんのさりげなく小技の効いた鍵盤の味付けも絶妙で、息を合わせ一致団結して楽曲を盛り立てCHAINSの音楽世界を築き上げていく様に、つくづくBANDだなぁと感じ入り、猛烈に感動(2回目)。彼らの関係は、もはや腐れ縁ならぬ鎖縁ですな(ウマい!?)。

chains-kyoto.blogspot.com

そんなCHAINSも今年で結成25周年だそうで、それを記念して15年ぶり(!!)にニューシングルが配信された(私はOTOTOYハイレゾ購入)。「メトロノーム」と「アスリート」という2曲のカップリングで、件のライヴでも演奏されていたが、どちらもミドルテンポでじわじわと身体が熱くなるイカしたロックナンバーだ。メトロノームのイントロでドラムがスタンッと鳴ってちょっとトレモロがかったギターが入りキーボードがヒャ~と鳴り始めた瞬間に、嗚呼、これぞCHAINSだ...とニヤリ。ビバ☆シェリーのSATOさんがコーラスで友情出演しているのも嬉しい。良い時と悪い時をメトロノームのように行ったり来たり、バンドを続けて行く大変さと喜びを歌っているのだろうと私的勝手な拡大解釈。「アスリート」はオリンピックを目指すアスリートを歌った曲だが、まさしくCHAINSは寡黙でストイックなアスリートのよう、腰の入った軸がぶれないロック。しかも、京都のリトル・フィート!と思わず叫びたくなるファンキーな粘り腰だ。この最新の2曲も不変のCHAINS節で、奥に潜むブルーズ魂とどこかアングラな匂いを醸し出すサウンドは、やはり他の誰よりも京都を感じる。そうだ、京都にはCHAINSがいる。もうずっとすごいし、これからもすごいぞ先輩。


アスリート CHAINS@paradice 4th.Jun.2017

↑ドラムス伊藤さん中心の「アスリート」ライヴ映像ですが、伊藤さんのニュアンス豊かな粋なドラミング大好きです!

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メトロノーム/アスリート」CHAINS(2018年)
CHAINS are 新村敦史、横山道明、ラリー藤本、丸山桂、伊藤拓史

【PLAYLIST】『西村哲也、魅惑のギターサウンド』

相変わらず茹だるような熱すぎる夏は続きますが、そんな暑さを吹っ飛ばすにはエレクトリックギターに限る!というわけで、私の敬愛するギタリスト西村哲也さんの歌伴エレクトリックギター名演集プレイリストを作ってみました。しっかりと歌を支え盛り立てながら、とても骨太でロックな調べを堪能できます。気づいたらスライドギター多め!そして、名曲ばかりの名アルバムになっちゃいました(自画自賛)。全11曲50分。

西村哲也、魅惑のギターサウンド』

01.「何処へ(History)」 BAND EXPO
02.「クレイジークリシー」 河野沙羅
03.「蛙」 西村哲也
04.「君の名前」 青木孝
05.「二つの魚影」 Grandfathers
06.「グッド・ルゥは待ってる」 一色進
07.「余白」 福岡史朗
08.「誰か虹を見た」 コルネッツ
09.「日向へ」 柴山一幸
10.「リチャードの帰宅」 鈴木博文
11.「陽は沈みまた昇る」 TRICKY HUMAN SPECIAL

M01:『BAND EXPO』(2016)/M02:『Saramountain』(2010)/M03:『ORANGE』(2010)/M04:『Melody Circle』(1996) /M05:『BBB』(1991)/M06:『歪』(2012)/M07:『Let's Frog!』(2013)/M08:『乳の実』(1992)/M09:『Everything/(2001)/M10:『凹凸』(2008)/M11:『黄金の足跡』(2016)

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『SILLY POPS』 bjons

猛暑を通り越して全くもってSILLYな夏なので、クーラーの効いた部屋で涼やかなPOPSを聴いて、おとなしく過ごしましょう(汗)。

当ブログにおける西村哲也さんと並ぶ看板ギタリストと言えば、渡瀬賢吾さんですね。彼が参加しているアルバムはとにかく買っちゃいますし、そのどれもが素晴らしい作品で、名盤請負人なんて呼びたくなります(褒めすぎか・笑)。そんな渡瀬さんが新しく始めたバンドがbjons。私は思い切りビジョンズと読んでいましたが、正しくは”ビョーンズ”と読みます。風変わりですが、思わず声に出したくなるバンド名ですよね。渡瀬さんが静岡の学生時代からの音楽仲間である今泉雄貴さんを熱心に誘い、roppenのクールなグルーヴ職人ベーシスト橋本大輔さんを加えた3人でbjonsとしてスタートしたのが2017年だそう。私の耳にも噂が届いてきて、おおそうなんだ!と気になった途端に、早くも名刺代わりの1stアルバム『SILLY POPS』が出る、というスピード感。それゆえに、ライヴでもサポートしている売れっ子奇才キーボーディスト谷口雄さんと素敵な敏腕ドラマー岡田梨沙さんと共に、生まれて間もないバンドの新鮮な勢いをパッケージした瑞々しい作品に仕上がっています。CITY POPSをモジってSILLY POPS、そんなお茶目な捻りが効いた洒落たポップス集。と言っても、70年代のアメリカンポップスの匂いがする都会的でありながら人肌の温もりのあるバンドアンサンブルは、堂々とシティポップスと名乗っても良いのではないでしょうか。彼らとは世代が近いので、オレたちのシティポップス登場!とまで言いたくなりますが、オレたち照れ屋なのでやめときます(笑)。渋谷の憧れのレコード名店パイドパイパーハウス(店長は音楽の魔法を信じる長門芳郎さん!)がroppenの弟バンドとして激烈プッシュしていますが、もうビョーンと行ってほしいですね!

SILLY POPS

SILLY POPS

プレイボタンを押すと意表を突かれるくらいゆったりとしたリズムが心地良い、ある意味お見事なオープニングナンバー「けもの」。今泉さんの気怠く少し鼻にかかった歌声は、女性に甘えるのが上手そうな、ズルい歌声で羨ましい...。渡瀬さんのワウワウギターが冴え渡る艶めかしくグルーヴィーな「lonestar」は、私にとってはキラーチューン。”あのね”で始まり”I Don't Care”で韻を踏んで終わるという実に巧みな構成のニクいポップナンバー「I Don't Care」。旧いラジオから聞こえてくるような録音でピアノと歌だけの裸の「ダーティーボーイ」。みんなでワイワイ賑やかなグッドタイムミュージックハンバーガー」、いたずらっぽく”下着をなぞって戯れている”ちょっぴりエッチだよね今泉さん。セクシーな”んああぁ...”が痛快な夜のシティポップストレンジャーは、オトナな雰囲気だけどオトナになりきれてないところがお気に入りポイント。ジョージ・ハリスン味のスライドギターとバンジョーが芳しい中期ビートルズ風ポップバラード「いらっしゃいませこんばんは」は、梨沙さんのコーラスも効いて聴けば聴くほどじわじわとくる名曲(カーネーション「レオナルド」を思い出したり)。謎だけど妙にしっくりくるbjonsらしい声に出したくなるタイトルで歌いたくなるサビの「そろりっそわ」、ほんわかしてそうだがギターソロ始めバンド全体がそろりとぞわぞわ燃える、そろりっぞわな演奏でちょっと感動的なエンドロール。


5/30発売 bjons(ビョーンズ) 1stアルバム「SILLY POPS」トレイラー

『SILLY POPS』 bjons (2018年)

01. けもの
02. lonestar
03. I Don't Care
04. ダーティーボーイ
05. ハンバーガ
06. ストレンジャー
07. いらっしゃいませこんばんは
08. そろりっそわ

bjons are...
今泉雄貴 Vocals, Acoustic Guitar, Electric Guitar
渡瀬賢吾 Electric Guitar, Electric Slide Guitar
橋本大輔 Bass

谷口雄 Piano, Electric Piano, Organ, Accordion, Synthesizer, Clavinet, Toy Piano, 12strings Guitar
岡田梨沙 Drums, Percussions
アダチヨウスケ Banjo

All songs written by 今泉雄貴
Produced & Arranged by bjons
Recorded by 平野栄二(Studio Happiness), 谷口雄, 今泉雄貴
Mixed by 今泉雄貴
Mastered by 中村宗一郎(PEACE MUSIC)

※なんとパイドパイパーハウスから「ハンバーガー/そろりっそわ」を7インチシングルで発売するとのこと!マジかよ

『Trickster Sessions』 西村哲也

グランドファーザーズ、BAND EXPO、三匹夜会、Only Love Hurts (a.k.a. 面影ラッキーホール)、メトロファルスにおけるバンドサウンドの肝。私のハートを最も熱くするギターヒーロー、極上のメロディーメイカー&アレンジャーであり深遠な詩人、そして、じわりと胸を打つシンガー...もう何から何まで(シャイでオタク気質なお人柄も含め)敬愛してやまないシンガーロックライター西村哲也さんの5作目のニューアルバム『Trickster Sessions』がいよいよ届いた。前作『運命の彼のメロディ』から4年をかけて(いつものごとく)じっくり精魂込めて丹念に練り上げられたまたしてもロック名曲集。このロック暗黒時代に恐れを知らぬ!?ゲーテの『ファウスト』をテーマにした(ほぼ)コンセプトアルバムという点からも、今作はより一層聴き応えある、聴き応えしかない傑作だ。

Trickster Sessions

Trickster Sessions

前作ではそれ以前のアメリカンロック的要素は薄まりヨーロピアンロックの香りが漂うほの暗くメランコリックな作品であったが、今作ではその路線を引き継ぎつつ切なさよりも躍動感に満ち溢れたグルーヴィーなバンドサウンドで攻めまくるアグレッシヴなアルバムだ。何と言っても、今回は東京のライヴバンドメンバーであり盟友の大田譲ベース!矢部浩志ドラム!伊藤隆博ピアノ!にもちろん西村哲也ギター!のベーシックな4リズムはスタジオでせーので一発録りだそうで、これまで以上にライヴ感と迫力と太さがぐぐぐいっと前面に出ている。スピーカーでもヘッドホンでも出来るだけ大きめの音で聴いて、リズムに身体を任せて、踊るべし。更にそこに西村さんはリズム以外のギターパートはもちろん、ペダルスティールやエレキシタールシンセサイザーなどを重ね、川口義之さんはサックスやフルートでMVP級の大活躍、大田真緒さん&ほりおみわさんのクールに寄り添う女声コーラス、これまでの西村ソロでもお馴染み田辺晋一さんのユーモラスなパーカッションと様々な音を絶妙に組み合わせ、一筋縄でいかない極彩色のポップロックに仕上げている。スピーカーでもヘッドホンでも出来るだけ大きめの音で聴いて、踊りながら、細部の音にも耳を注ぐべし。ライヴで再現できないような実験もたくさんで、まさにトリックスター達のセッションだ。レコードは録音芸術であるということをいつも西村さんは教えてくれる。

ロキシー・ミュージックの1stを意識している」「デヴィッド・ボウイから受けた影響を全部出します」は制作過程中のライヴでの西村さんのMCで飛び出ていた言葉で、ミックスを務めている鳥羽修さんからも同じような感想を聞いたが、それに違わぬ内容だと思う。そんなファンキーなグラムロック魂だけではなく、合間に挟まれる静かでダークな楽曲ではジェネシスあたりのプログレ魂がかなり濃厚に噴出している。アメリカンロックやブリティッシュロックをやる人は多くても、このあたりの退廃美ロックをやる人はあまりいないので、後方宙返り3回ひねりして今ではとても新鮮に響くのではないかと思うのだが、どうだろう。

ところで、コンセプトになっているゲーテファウスト』については?...読んだことが無いので何も語れないが、もちろん読んでいなくても存分に楽しめるので大丈夫。『ファウスト』ってなんかわからんけどスゴイような気がする、でいいんです(笑)。ウィキペディアとかであらすじだけでも調べてもいいかも(ちゃんと物語通りに曲は並んでいる)。西村さん曰く「なんか『ファウスト』読むの難しそうだと思う人は、手塚治虫が漫画で描いてますので。3回描いてます」とのこと。西村哲也も『ファウスト』をロックで描きました。


西村哲也「Trickster Sessions」

01. 円環の終わり Loop End
プレイボタンを押せば謎めいたエレキシタールの響き...終わりのような始まりなのか始まりのような終わりなのか「円環の終わり」で物語は始まる。とても短い寂しげな曲だが、リピートでまたこの曲に帰ってくると魅力が増す。歌詞については『魔法少女まどか☆マギカ』を参照(観たことない)。

02. 愛の再生 Reincarnation Love
悪魔の黒い犬メフィストーフェレスの登場シーンは、ベルリン三部作の頃のデヴィッド・ボウイを彷彿とするミドルテンポのスペーシーなロックナンバー。後半に行くに従って、じわりじわじわと力強くロックのスイッチが入る。ひしゃげたヘヴィーなリズムギターロバート・フリップ風?伸びていくギターの絡み合いや粘っこくハネてウネるベースが聴きどころ。”犬 in the sky” ”黒 in the sky”という言い回しは斬新だ。

03. 黒犬の勧誘 Black Dog Guidance
黒犬メフィストファウスト博士がそそのかされ契約を結ぶシーン?ロキシー・ミュージックの1stとはまさにこの曲、グルーヴの鬼。間違いなく序盤のハイライトだ。強力ファンキーなクラヴィネットにドゥーンドゥーンと吠えるベース、アンディ・マッケイ顔負けにブロウしまくる川口さんのサックスからは炎が見える!けたたましいブルースハープもほりおさんのエモいコーラスも全部が猛烈に熱い、最高!の一言。

04. 彼女の愉しみの選択 Grateful Girl's Story
若返ったファウストが普通の町娘グレートヒェンに恋に堕ちるシーン?ちょっと分からなくなってきました(笑)。「黒犬の勧誘」で一気に沸騰した興奮をこの曲で少しクールダウン、ペダルスティールが隠し味の初期スティーリー・ダンのごとく洗練されたバンドサウンドに酔いしれる(カーネーション『Suburban Baroque』収録の「Little Jetty」と併聴されたし。同じリズム隊だし、同い年の直枝さんと西村さんが思い描くスティーリー・ダンは一緒!)。終盤はジャムセッションっぽくなるのだけど、実は本来終わるべきところで気づかずに大田さんがベースを弾き続けてしまったために、それに皆が合わせて演奏が長くなっているのだそう。西村さんと矢部さんはミスに気づいてなかったようだが、気づいていた伊藤さんはチッと若干キレ気味にピアノを叩いているのが凄まじくロックで、結果オッケーテイクに。一発録音の嬉しい誤算、そのおかげで私的にかなり好きな曲。

05. 光の庭 Sunshine of Our Garden
ファウストとグレートヒェンが光の庭で戯れるシーン?心がウキウキ弾む、ちょっとおどけたようなリズムが楽しい曲。途中で曲調が変わり、ポール・マッカートニー&ウイングス「幸せのノック」みたいなベースラインが飛び出てくるところがお気に入り。そして、西村さんお得意のユニゾンギターソロに滅法弱い私です。

06. 堕天使ハープ Harp
堕天使ハープってメフィストのこと?いよいよどういうシーンなのかわかりません(笑)。ハープというだけあってブルースハープを狂おしく吹きながらアコースティックギターをかき鳴らす、ボブ・ディラン風のフォークロック。と言っても凡百のフォークロックで終わってないのは、矢部さんが何度も繰り出すハイハットのスコーッ(説明できん)があまりにも痛快だから。最後の伊藤さんの砂嵐のようなオルガンソロも流石の名人ぶり、アガります。

07. 逢瀬 A Secret
ファウストとグレートヒェンの秘めやかな愛の育み?最初からほりおみわさんとデュエットすることを意識して書かれた曲だという。繊細に奏でられるアコースティックギターの美しいを超えてサイケデリックアルペジオハーモニー、二人の歌声の重なりの清らかな色気にうっとり。川口さんのフルートソロ(要望はイアン・マクドナルド)はもはやあの世からの幽玄な響き...意識が遠のきます。密かに、強烈に、印象に残る名曲。

08. 彼女を救い出せ Save Her Before Sunrise
あれやこれや不幸の連続で地に堕ちてしまったグレートヒェンをファウストが救い出そうとするシーン?『ファウスト』物語はここでフィナーレを迎える。イントロの勇猛果敢なドラムソロに唸り声をあげるバリトンサックス、ほりおさんの逞しいコーラスなどから並々ならぬファウストの気合いを感じるが、果たして彼女を救い出せたのだろうか?

09. 妖精の指輪 Red Ring
それでもアルバムは続く。この曲はアルバム曲の中で初めてライヴで聴いた曲で、それから幾度となく聴いてきたが、聴くたびになんて素敵な曲なんだ!とどんどん引き込まれていく。こうやってレコードとして聴いても同じだ。怪しくもロマンチックでエロティック、オトナのムードロック。間奏のスティーヴ・ハケットばりのプログレギターソロは渾身の名演、あまりにも滑らかに撫でるように感情を掻きむしられる。ベストトラックかもしれない。

10. 去っていった鳩 Isomers of The Soul
大なり><小なり「ハトなんですが」、コルネッツ「鳩」に続く、(私的)鳩の名曲。隠れ人気曲のような気がする。コンガ&ボンゴの軽やかなリズムとエレキシタールのエキゾチックな響きは、シールズ&クロフツを匂わせる穏やかなフォークポップ。隅々まで神経の行き届いた歌唱、西村さんの切ない歌声の魅力を堪能できる。タイトルは鳩であるが、歌詞は絵本の「ねずみ女房」にインスパイアされているそうだ(読んだことない)。

11. 崩壊の涙 Tear of A Fall
ラストナンバーは前作「ケヴィンのブルース」でも披露されたシンセベースが奔放に弾むテクノポップ調、そこにペダルスティールやマンドリンなど土臭い楽器が絡むのが面白い。一人多重オクターブユニゾンボーカルも心地良いが、歌詞に込められたメッセージは...憤ってます。


Trickster Sessions』 西村哲也(2018年)

01, 円環の終わり Loop End
02. 愛の再生 Reincarnation Love
03. 黒犬の勧誘 Black Dog Guidance
04. 彼女の愉しみの選択 Grateful Girl's Story
05. 光の庭 Sunshine of Our Garden
06. 堕天使ハープ Harp
07. 逢瀬 A Secret
08. 彼女を救い出せ Save Her Before Sunrise
09. 妖精の指輪 Red Ring
10. 去っていった鳩 Isomers of The Soul
11. 崩壊の涙 Tear of A Fall

大田譲:Bass, Chorus
矢部浩志:Drums
伊藤隆博:Piano, Organ, Clavinet, Wurlitzer
川口義之:Sax, Flute
田辺晋一:Conga, Bongo, Percussions
大田真緒:Chorus
ほりおみわ:Chorus
西村哲也:Other All Instruments

Recorded by TETSUYA NISHIMURA (Heron Studio), EIJI HIRANO (Studio Happiness), SHINICHI TANABE (Amigo Studio)
Mixed and Mastered by OSAMU TOBA (Smalltown Studio)

Art Direction and Design by HIDEAKI SUZUKI (ahg)

※なんと!ディスクユニオンの6/12付 週間日本のロックチャート3位を記録しました(aikoの上!)。ちなみに、ディスクユニオンでの購入特典はデモ音源CD-R(9曲も!)なのですが、それがまた非常に素晴らしい内容なのですよ(レヴュー書こうかなと思うくらい)。