レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

【私の好きな歌027】「スプリンクラー」山下達郎

平成31年4月8日、塚本ハウリンバーで伊藤広規・Nacomi・前島文子によるユニット ”NA-KOKI with FUMIchan" のライヴを観る。言わずもがな山下達郎バンドの40年にも渡って不動のベーシストである伊藤広規さんと大好きな京都屈指の可憐なブルースドラマー前島文子さんがリズム隊を組むというので、居ても立ってもいられなくなった。数多くのセッションで引っ張りだこの前島さんですが、私にとっては京都版の西村哲也バンドでの彼女がお馴染み。西村バンドの前ドラマー五十川清さん(あのEP-4三条通さんです)が亡くなられて、失意の西村さんを救ってくれた(つまり、私にとっても救世主)前島さんは、2010年11月15日の拾得ライヴ以来PORK PIE HATS~彼のラビッツとかれこれ9年のお付き合い。様々な音楽要素が散らばる西村ワールドにも柔軟に対応し、歌心を真ん中にしなやかにキレキレのビートを叩き出す姿にいつも惚れ惚れする。私と同い年なので、そういう意味でも、特別な存在で自慢のドラマー。西村さんのライヴの時は、もしかしたら彼女の気持ちになって観ていたりするかもしれない(怖い)。そんな前島さんに「好きなドラマーは誰ですか?」と訊くと、即座に「青山純さん!」と返ってくる。7年前に前島さんがNacomiさんのバンドで伊藤広規さんのバンドと共演した時に、憧れの青山純さんのドラムセットで叩いたという話を聞いて驚いたのだけど、今回はついに青山さんの相棒の広規さんとのセッション、想いは通じるんだなぁとまざまざと実感。心から楽しそうに演奏する前島さんを観ていると、私まで嬉しくなる。広規さんからも「ドラムいいねぇ~、青山純子に改名したら?」という最上の誉め言葉をもらっていた。この日のライヴは、ボニー・レイットみたく粋で麗しいブルースシンガー&ギタリストNacomiさんのオリジナル曲(『Bluesy Pop』というアルバムは広規さんのプロデュース)だけでなく、カヴァーも多数演奏。クリーム「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」やレッド・ツェッペリン「ブラック・ドッグ」(マジかよ!と客席から)、スティング「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」からレディオヘッドまで!Nacomiさん曰く「普段はアンプ直結かエフェクター1個つなぐくらいですが、今日は4個つないでます」というロックナンバーがズラリ。カッコイイのになんか可笑しくて、ニヤニヤが止まらない。1曲デュエットで歌ったTAKU&ブギーロケッツというバンドのボーカル&ギターTAKUさんの見た目も歌声も男前な歌いっぷりも印象的だった。そして...皆が頭の片隅で思っていた演るのか?演らないのか?のモヤモヤが晴れる時!本編ラストは満を持して達郎ナンバーを。しかも、まさかの「アトムの子」だ!! 生フィル・スペクターというべき大人数で生み出すグルーヴと音圧の塊のような曲をたった三人のトリオ(+お客さんのタンバリン)で演奏、広規さんも初めての試みだったそうだが、前島さんがアフリカの陣太鼓のごとくタムを乱れ打ち始めた途端に興奮マックス、そこに絡みつく広規さんのあのベースライン!あの音!が...ここは何千人規模ではなく40人でぎっしり満員の空間と距離感で浴びる贅沢な幸せよ(涙)。この多幸感溢れる余韻で今年は生きていけそうな気さえする。とにかくこんな夢のような機会を作ってくれたNacomiさんに感謝感謝、もちろん歌もギタープレイ(青山純さんが言うところのイイ塩梅にレイドバックした感じ)も最高でした。

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山下達郎スプリンクラー」シングル盤。鈴木英人さんのイラストジャケ。

伊藤広規さんにお会いできるので、あわよくばサインをもらおうとバッグに忍ばせていたのが、山下達郎「アトムの子」ではなく、スプリンクラーのシングル盤。結局、いろんなお客さん(人生の先輩方)と話されている中を突っ込んでいく勇気はなく、サインはもらえなかったが...。「スプリンクラー」は1983年の11作目のシングルで、オリジナルアルバムには未収録。”君なしでは生きられない 悲しい言葉さ” 達郎さんのロック魂がジリジリと滲み出たこの曲がもう好きで好きで堪らない。歌だけでなくバンドの演奏からも、雨に降られずぶ濡れになった孤独で寂しい都会の男の背中が見える。伊藤広規さん特有のゴリゴリと鳴る音色で奏でる、雨を含んだ革靴で物憂げに歩く重たい足取りのベースラインはロックの名演だろう。もちろん、アスファルトを冷たく打ちつける雨のように刻まれるドラムは青山純さん。そして、間奏でブルーコメッツ井上大輔さんがブロウする愛の炎を吹き消すテナーサックスソロに泣き濡れるのだ。ナイーヴなハードボイルド、憧れる。

スプリンクラー山下達郎(1983年)
作詞・作曲・編曲:山下達郎

カーネーション「One Day」は「スプリンクラー」のグルーヴやムードに影響を受けているのではないかと勝手に思っている...

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ライヴ終了後の記念撮影。左から前島文子さん、伊藤広規さん、Nacomiさん。まさしく両手に花の広規さんの図。ハウリンバーの雰囲気もグッドでした。

『丘をこえて』たけとんぼ

世の中は”平成最後の”祭り絶賛開催中、なんだか浮かれてる感じで終わりって気がしませんが。そんな中で、ロックスターのユーヤさんとショーケンが続けて逝ってしまうという悲しみと寂しさで頭が冷静に...やはりひとつの時代の終わりを感じざるを得ません。それは平成というよりも、私の心の中で続いている昭和の終わりというか...(思わず顔が思い浮かんだジュリーには長生きしてもらわないと)。とか言いながら、年号が変わっても私自身は相変わらずだろうし、音楽が無くなるわけでもないし、別に悲観してるわけでもないですよ。気軽にいろんな時代の音楽にアクセスできる環境を生かして、今の若い人たちでもえらく昭和の香りを放っているバンドが思いの外たくさん出てきているような印象もあります。むしろ、リアルタイム世代じゃないからこその面白さや新しさがあったり。なので、もうすぐ中年入りする私も「最近の若いモンわ~」なんて偉そうに分かったようなこと言わないように気をつけねばと改めて戒める今日この頃です。

そんな私が今最も期待しているナウなヤングのロックバンド、平成最後の、もとい、心の昭和最後のブライテストホープ”たけとんぼ” です。ギター&ボーカル平松稜大さんとドラムス&ボーカルきむらさとしさんによるフォークロック歌謡バンド。はっぴいえんどはちみつぱい、ごまのはえ...70年代のひらがなバンドの系譜にあるフォーキーでアーシーな味わい、AMERICAやCS&Nなどから影響を受けた米国西海岸系コーラス、ふぉーくや昭和歌謡にも通ずる一緒に歌いたくなる親しみやすいメロディーがとても魅力的。72年くらいからそのまま飛び出てきたようなルックスやギター弾いて歌い出したら止まらない心から歌が溢れてるキャラクターも人懐こくチャーミングで、老若男女幅広い世代から愛されるでしょう。三年ほど前のある日の夕方サンテレビでテレ東「5時に夢中」(ゲストが弘田三枝子さんだった!)を観ていると、途中の追跡ベスト8のコーナーで今若者の間で昭和歌謡ブームが来てるらしいが本当か?を調査するということで、インタビューを受けていたディスクユニオン昭和歌謡館から出てきたある青年が、昭和歌謡の想いを饒舌に語り歌いまくり、何だコイツは?ヤバイ奴がいると思っていたら、それが平松さんだったというエピソードも(笑)。昨年、拾得での世田谷ピンポンズのレコ発でバックバンドやサポートアクトとして一緒に来ていたたけとんぼの面々と初めて会って話して、いーはとーゔの菊地芳将さんと共に三人が並んで歌ったりキャッキャしてる感じが微笑ましくずっと観ていたかった(平松さんは私の音楽語りを愛情があって好きですと褒めてくれたし)。また、私の持論に ”斉藤哲夫好きは信用できる” というのがあるのだけど、彼らもまさにそう...どころか、今や哲夫さんから可愛がられているほど。たけとんぼは、斉藤哲夫さんが若き哲学者と呼ばれていた初期のURCフォーク期からCBSソニーに移って以降の肩の力が抜けてビートルズ的なポップセンスがふわりと表に出てきた頃の音楽性に近いかもしれない。あるいは『東京』のサニーデイ・サービスなんかも思い出したけど、それよりもむしろ70年代のサニーデイと呼ばれた?銀河鉄道だろうか(メガネのボーカルと似てるし)。とかなんとか思い浮かぶものがいっぱい、話すと長くなるのでここらで止めよう(笑)。

では、昨年のその拾得ライヴに合わせて持って来てくれた、たけとんぼの2nd EPというかファーストミニアルバム『丘をこえて』の話を。このレコードは、平松さんの田舎のおばあちゃん家に機材を持ち込んで気の合う演奏仲間たちと合宿生活しながらセッション録音した文字通りのホームレコーディング作品。70年代のシンガーソングライター系の音楽を愛するものならきっと憧れる、細野晴臣HOSONO HOUSE』やジェイムス・テイラー『One Man Dog』のあの独特な風合いの温もりサウンドを目指したのだろうが、まさしくそれが成功しているし、彼らの音楽やキャラクターになんのストレスもなくハマっている。部屋のスピーカーで鳴らして炬燵の中で聴くとホント気持ちいいバンドサウンド、心と体がポカポカだ。みんなでせーので録っているので、演奏が始まる前の合図の”ハイっ”や”行きまぁす”とか曲終わりのノイズまでが愛おしい。そんな見事なバランスの録音とミックスは足立洋介さん、「あいつらは音楽以外のことはどうしようもない何も決められないから、オレがやるしかないんですよ(笑)」と話してくれた面倒見のいい頼りになる先輩だ。集ったゲストミュージシャンのニクイばかりの歌心で渋く瑞々しいレイドバック感溢れる演奏もまた素晴らしく、平松&きむらの青春のハーモニーをしっかり引き立てている。全5曲のミニアルバムというボリュームではあるが、みそさざい氏が描く雰囲気バッチリの素敵すぎるジャケット含め、今のたけとんぼワールドが余すことなくパッケージされている軽やかに濃い名盤だと思う。さぁ、空高く丘をこえてどこまでも飛んで行け、たけとんぼ。

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たけとんぼ『丘をこえて』。ジャケットのイラストのテイストが似てるなぁと思った中川イサト『お茶の時間』の中ジャケと共に

電車にガタゴト揺られて弾むようなリズムで青年のむず痒い苦悩を歌う「こころにテレフォン」、似ているというわけではないが、イントロでつまびかれるアコースティックギターの調べを聴いてGAROのファーストアルバムA面1曲目「一人で行くさ」と同じ景色が思い浮かんだ。アルバムタイトル曲「丘をこえて」ザ・バンドの「ザ・ウェイト」を彷彿とさせるフォークロックの名曲、マンドリンが効いたイナタいグルーヴにグッと酔いしれてると切り込んでくる三輪卓也さんの熱くロックなギターソロにジリジリと胸を焦がす。「水平線」はほのぼのとしたフォークソングでほっこりするが、ひと夏の淡い恋心を思い出し、ちょっぴりしょっぱい気持ちに。ハーモニカが狂おしく鳴り響くニール・ヤング「孤独の旅路」調のヘヴィーな「ぼくはトマトくん」はTHE FOWLSというバンドの金延幸子に名前が似た安延沙希子さんという方の曲、不思議な歌詞だがヌメリと突き刺さるものがある。一転してラストは曲名通りの儚く爽やかなAMERICA直系のメロウなソフトロック「秋風の少女」、ルルルーと歌うハミングとアコースティックギターの音色との美しい重なりにときめきが止まらない。さぁて、炬燵から出ようか。


たけとんぼ 2nd EP「丘をこえて」トレイラー

『丘をこえて』 たけとんぼ(2018年)

01. こころにテレフォン(平松稜大)
02. 丘をこえて(平松稜大)
03. 水平線(平松稜大)
04. ぼくはトマトくん(安延沙季子)
05. 秋風の少女(平松稜大)

たけとんぼ...
平松稜大(vo, a.guitar)、きむらさとし(drs, cho)

Guest Player...
三輪卓也(e.guitar)、ベラ氏(e.guitar, ba)、菊地芳将(ba, mandolin)

録音・ミックス・マスタリング...
足立洋介
録音場所...
伊那市 平松邸

イラストレーション...
仲本直輝(みそさざい)
デザイン...
きむらさとし、仲本直輝(みそさざい)

『rooftop talks』夢見る港

春ですね、春ですか?ここ最近の寒暖差の激しさになかなか身体がついて行けませんが、春先っていつもこんな感じでしたっけね。季節の記憶力が悪すぎて、思い出せませんが...。そんな今のこの気温よりあともう少し暖かい春らしい春になってくれたら、自然と聴きたくなる曲がありまして。それがメリー・ホプキンの「夢みる港(Temma Harbour)」(1970)、春の光が差してキラキラ反射する海の水面が目に浮かぶフォーキーでキュートなポップナンバーです。聴きながら日本盤シングルのジャケットに写る美しいメリー・ホプキンを眺めてほっこりし、その上の曲名に目を遣れば、続けて聴きたくなるのが...

”夢見る港” という、まさにその春の名曲の邦題を名前に頂戴した素敵なバンドの『rooftop talks』 という素敵なアルバム。夢見る港とは、長坂雅司さん(ex. chikisounds)率いる6人組の大所帯フォークロック楽団(roppenやbjonsのメンバーがいてややこしいとパイドパイパーハウスでもっぱら話題に・笑)で、『rooftop talks』は昨年発表された彼らの2ndアルバム(配信)。トロンボーンやフルートの温もり、バンジョーマンドリンが効いたアーシーでありながら足取りは軽やかなバンドサウンド。ふわりと心地良い潮風が吹く。プロコル・ハルムが ”海のザ・バンド” であれば、夢見る港はそのまんま ”波止場のザ・バンド” とでも呼びたいような。とか言うと渋いルーツ系のバンドかと思われそうだけど、決してそういうわけではなく、色んな音楽の要素がまぶされた今の時代にもしっかり通ずる開かれたポップなイイ曲満載。エモい、なんていう流行りの言葉があてはまるような瞬間も多々ある。そして、アルバムを聴き終えた時に、長坂さんのじんと胸に響く気だるく色っぽいソウルフルなボーカルが耳に残るのが、何より素晴らしい。もう大好きなボーカリストだ。『rooftop talks』というタイトルの通り、屋根の上で気の置けない人と温度や匂いや風を感じながら他愛ない世間話だったり思い出話だったりシリアスな話だったり時間を忘れて緩やかに続くお喋りのようなアルバム。リリースは秋だったけど、これからの春から夏にかけてピッタリだと思う。

rooftop talks

rooftop talks

  • 夢見る港
  • J-Pop
  • ¥1650

力強くも切ないイントロがワクワクと不安が混ざり合う春の到来を告げるオープニングナンバー「spring」、軽快なマンドリンのリズムに乗って桜並木をスキップしたくなる。続く「run run run」はその名のごとく疾走する夏の風切るポップナンバーで、今度は海に向かって全速力で駆け出したくなる。ウキウキする二曲の後はしっとりと「夜の夏」、夏の夜ではなく夜の夏というちょっと捻じれたノスタルジー、都会に滲む風鈴の音色や蚊取り線香の匂い。アナログ7inchでシングルカットされたA面曲「コーヒー」は想像以上にエモく迫ってくる、一杯のコーヒーを命がけで淹れるマスターと命がけで飲む人、奥田民生以来の「コーヒー」ロックの名曲だろう。休みが必要だ、インスト曲の「真夜中にレオーネを想ふ」でふっと一息、とは言えdodoのハミングは摩訶不思議な味わい。風吹けよ風吹けよ、じわりじわりと感動的な「白い部屋」、歌心溢れる穏やかで狂おしいバンドの演奏にうっとりしながら白い壁をただぼんやり見つめ物思いに耽る。ヘヴィーにひしゃげたリズムにオルガンとワウギターによる強力なイントロやサイケに絡みつくフルートがトラフィックを思わせる「時間」、最初から最後まで淀みなく謎の展開を見せるヤバイ曲...と、ズブズブとディープな底なし沼に引きずり込まれそうなところでマリオのようにピョーンと跳ね上がりアルバム序盤に戻ったかのような清涼感溢れるギターポップならぬマンドリンポップ「8月の神」、高らかに鳴るトロンボーンよ、やたらと眩しい多幸感に包まれる。熱いスープを息吹きかけて冷ますかのように小刻みに刻まれるフルートのリズムが印象的な「日々のスープ」、ドラマチックに心を揺さぶられながら日々のささやかな喜びに感謝して、アルバムを閉じる。では、御茶ノ水あたりで会いましょう。


夢見る港 「rooftop talks」トレイラー

『rooftop talks』 夢見る港(2018年)

01. spring
02. run run run
03. 夜の夏
04. コーヒー
05. 真夜中にレオーネを想ふ
06. 白い部屋
07. 時間
08. 8月の神
09. 日々のスープ

夢見る港 ...
長坂雅司(Vo, A.G)、並木万実(Trombone, Flute, Cho)、アダチヨウスケ(Banjo, Mandolin, Cho)、橋本大輔(Ba)、北山昌樹(Drs)、松野寛広(Key)

Guest Player ...
kami(E.G)、コウノハイジ(E.G)、塚田直(E.G)、うちだあやこ(dodo. Cho)、不知火庵(dodo. Cho)


夢見る港「コーヒー」MV

☝なかなか衝撃な...失礼を承知で言いますが、長坂さんは女子にコーヒーをかけられるのが似合うような(笑)。昨年大阪の雲州堂で冬支度や大場ともよさんが出演のライヴで長坂さんと並木さんにお会いしましたが、とってもええ人たちでした。冬支度にも紹介できたので、関西でもフルメンバーの夢見る港のライヴが観れたらなぁと望んでいます。

【私の好きな歌026】「Lonesome Lover」Steve Ferguson

平成31年3月2日、梅田ムジカジャポニカにて嶌岡大祐ワンマンライヴを観た。嶌岡大祐さんとは...2002年神戸発ピアノトリオロックバンド”SGホネオカ”でデビュー、FM802でパワープレイされたり人気を博したが、バンドは上京を機に解散!?東京ではソロ活動を行いながら、鍵盤奏者としてライヴやレコーディングでゲントウキ一十三十一など様々なアーティストをサポート、その腕が認められ何と!鈴木茂『LAGOON』セッションにも呼ばれるという快挙(最近でも、昨年末の紅白歌合戦ユーミンのバックで涙モノの演奏をしていたあの鈴木茂+林立夫+小原礼のSKYと一緒にセッションしたりと交流は続いている)、2014年には1stソロアルバム『白いベンチ』を発表した。近年、関西に戻ってきてからは、西村哲也さんの京都のバンド”西村哲也と彼のラビッツ”に参加...という私が勝手にまとめた略歴。SGホネオカというバンド名は聞いたことはあったが、実際に彼の演奏を初めて観聴きしたのは2016年12月23日、拾得での西村哲也と彼のラビッツのライヴ。彼は私よりも2つ年下同世代の若武者だが、新加入とは思えないグルーヴィーかつエレガントにガンガン弾き倒す姿に感動、もはや西村さんが暴れる必要もないくらい。その上、彼のソロナンバーを1曲「ゴールデンベイビー」を披露してくれたのだが、いきなり始まる饒舌な前口上に意表を突かれるも、素晴らしくポップでめちゃくちゃゴキゲンな歌と演奏にまるで70年代のスティーヴィー・ワンダーのよう!驚き、参りました。彼のジャジィでソウルフルな音楽性とバンド演奏との相性もバッチリで、その瞬間に強く抱いたこのバンドでソロライヴをやってほしいという願いが、ついに叶ったこの日の思い切ったワンマンライヴ。家族友人知人関係の人たちや、SGホネオカからの根強いファン、私のような彼のラビッツ経由で知ったファンも混ざり合い、立ち見が出る満員御礼ぶり(彼のラビッツでこんなにお客さんがいたことないのでちょっとビビる・笑)で大いに盛り上がった。嶌岡大祐(Vocal, Keyboard, Piano)、西村哲也(Electric Guitar, Vocal, Chorus)、前島文子(Drums)、木田聡(Electric Bass)、ほりおみわ(Chorus)という関西屈指の百戦錬磨凄腕メンバーによるハートフルで歌心溢れるグルーヴに支えられて、これでもかと気持ち良く歌いに歌って弾きに弾いての熱演3時間。SGホネオカ時代の若気の至りイキってたんやろうなと思わせるどこか屈折したポップナンバー(西村さん曰く、青山陽一さん並みのややこしさ)から最近の日々の生活から滲み出たシンガーソングライター然りとした深みのあるしっとり聴かせるバラードまで、まぁ時に挟まれる歴史モノがご愛嬌というか謎ではあるが(笑)、底知れぬ魅力の嶌岡大祐ワールドを心行くまで堪能した。彼がMCで言っていた「ライヴハウスに通うようなコアな音楽好きの人もそうじゃないライトな音楽好きの人も一緒になって楽しめる音楽をやりたい」という思いにグッと来たし、きっとやれる人だと思う。打倒、星野源や!?出来ればこのメンバーで最高のシティポップスアルバムを作ってほしいが、それはまぁチクチク言っていこう(笑)。それはともかく、これで味を占めたのか?早速、5月に次のバンドライヴも決まったようで、嬉しい楽しみがまたひとつ増えた。

↑ ムジカジャポニカさんのツイートより。SGホネオカ時代のベン・フォールズに捧げる?最高に盛り上がる名曲「BENに首ったけ」の映像。熱く爽快な演奏は、きっとBENも首ったけでしょう。

以前、嶌岡さんに、西村さんと一緒に演奏する時にどういう風にギターを弾いてほしいとか何か要求しているのですか?と訊いてみたら、「基本的には自由に弾いてもらいますけど、デヴィッドTウォーカーのような感じでとは言ったかなぁ」と答えてくれた。なるほど確かに、西村さんはいつも以上にメロウなオブリガートを決めていたように感じたし、珍しくフェイザー?を使って音色自体にも甘やかさを出す場面もあったりとデヴィッド哲也ウォーカーしてた。...とか言って、実はデヴィッドTウォーカーがギターを弾いているレコードをそんなに持っていなくて、ややぼんやりとしたイメージなのだが...。私の頭の中にあるデヴィッドTのプレイスタイルのイメージの大半を占めているのが、米国西海岸ロックの名門アサイラム・レコード唯一の黒人シンガーソングライター&ピアニストのスティーヴ・ファーガソン(Steve Ferguson。NRBQの初代ギタリストとは同名異人)のタイトル通りの切ない名曲「Lonesome Lover」で弾いているムード。手数は多くないし音量も控えめだが、スティーヴのソウルフルというよりは人間味のある歌声で感情の起伏の激しい狂おしい歌に呼応して、いちいちクールにメロウなフレーズを繰り出すデヴィッドT、その余韻や弾いていない間合いまでメロウな頭から爪先までトロトロの全身メロウ職人だ。アルバム『Steve Ferguson』でデヴィッドTが弾いているのはこの1曲のみなのに、異常に印象に残る。ロマンチックな寂しさに浸りたい時は、この曲を聴くのです。

「Lonesome Lover」 Steve Ferguson
(Steve Ferguson)
from 『Steve Ferguson』(1973)

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『Steve Ferguson』ジャケットより。薔薇の似合うロンサムな男。

※滑らかにグルーヴするエド・グリーン(Drums)&ウィルトン・フェルダー(Bass)のリズム隊も最高のレコードだが、彼のラビッツの前島文子&木田聡リズム隊も負けていないよ。是非、西村哲也と彼のラビッツのライヴも観に来てほしいです!

【私の好きな歌025】「Wide Eyed And Legless」Andy Fairweather Low

平成31年1月27日。浪速のグッドタイムフォークデュオ「冬支度」が結成10周年を迎え、それを記念したワンマンライヴが大阪の雲州堂で行われた。お祝いにかけつけたお客さんが次から次へと立ち見が出るくらいの超満員で、驚いたのと同時に愛されてるんだなぁと感じちょっと涙。地道に活発なライヴ活動や冬支度の二人の人徳が為せる業なのだろう。ライヴ自体も本編以外に開場から開演までの藤江隆&中川裕太ギターデュオによる達者すぎる生演奏BGMや幕間の斎藤さん&ザンネンズもりべさんの麗しいフルートデュオという新鮮な出し物で飽きさせない、会場には過去の企画イベントのフライヤーの展示だったりメンバーや知人友人からのコメント(僭越ながら私も寄稿しました)を載せた冬支度新聞の配布など、隅から隅まで気持ちの行き届いた素晴らしく充実したワンマンライヴだった。なかなかこういうライヴは味わえない、ホント大したものだ(偉そうな)。本編では、最初は二人だけのオリジナル冬支度で始まり、さすがに緊張気味だったけども、歌心溢れる渡瀬千尋さんのドラムスや藤江さんのエレキギターという心強い味方が加わってからは徐々にいつものレイドバックした緩やかな冬支度。MCでも10周年分の想いを大いに語るということもなく、感謝の言葉は忘れず次のライヴの告知をしっかりするいつもの冬支度(笑)。もちろん特別なライヴなのでファンとして感慨に耽る場面もあるけども、それよりも何よりもシンプルに彼らの楽曲の良さや演奏の良さ(最初期のシティポップ風?「週に三日は自己嫌悪」めっちゃええ曲やん!)、どこかにいそうでいない特異な音楽性に改めて感動した。今の時代に私の好きなこういう人間味と温もりのある70年代的なサウンドを鳴らしてくれる喜び、私にとって大切な音楽である。10周年おめでとうございます!これからもヨロシクお願いします。また飲みにも誘ってください(笑)。

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冬支度with渡瀬千尋藤江隆「週に三日は自己嫌悪」演奏シーンより。藤江さんの切れ味キレキレなトライアングル!

そして、今回のライヴで、私は冬支度新聞への寄稿と共に、フルートデュオが準備している間や終演後に流すBGMの選曲を担当させてもらった。彼らの企画イベント名に倣って、靴音までメロウな曲をたっぷり25曲。これまでも何度か会場BGMの選曲はしたことあるけど、初めて会場で聴いた。60年代~70年代の洋楽オンリーでアナログ盤起こしの極めてアナログに近い音で、もちろん自分の好きな曲ばかりだし、我ながらなかなか心地良い選曲だった自画自賛(笑)。ミーターズ「Loving You Is On My Mind」のベースがめちゃ太かったなぁ。それで、そのプレイリスの一曲、今年初めて買ったレコードで気に入ってずっと聴いている曲がアンディー・フェアウェザー・ロウ「Wide Eyed And Legless」。アンディーは60年代にAmen Cornerというモッズバンドで活躍した人で、近年ではエリック・クラプトンのサイドメンとしていぶし銀のギターを弾いていたり(観たことないので想像)。70年代のソロアルバムもスワンピーな渋みと英国人らしいポップさが混ざり合った味わいですごくユニーク、コクを増量したポール・マッカートニーみたくブルーアイドソウルな歌声もまた最高なのだ。この「Wide Eyed And Legless」という曲は1975年に2ndソロアルバム『La Booga Rooga』よりシングルカット、英国シングルチャート6位まで到達したヒット曲。エレクトリックピアノやペダルスティールギター(B. J. Coleの演奏)にフェイザーをかけたロマンチックで夢見心地なサウンドがとにかく極楽で、永遠に聴いていられる。こんなサウンドなのでさぞかしラヴリーなラヴソングなのだろうと曲名を見れば、目が広がって脚が無い!?...妙なタイトル。夜のリズムよりもグラスのリズムの方が強いなんて一節があるが、どうやら絶望から逃れる為に酒に溺れているアル中の男の歌らしい(違うかもしれないが)。即ち、メロウはメロウでも酔いどれのメロウであった。それでもウットリしてしまう、そんな男に共感する自分もいる...

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Andy Fairweather Low『La Booga Rooga』ジャケットより。お手を拝借!?

「Wide Eyed And Legless」 Andy Fairweather Low
(Andy Fairweather Low)
from 『La Booga Rooga』(1975)

【私の好きな歌024】「Drift Away」Dobie Gray

明けましておめでとうございます!ようこそ2019年。今年は平成から次の年号へ変わるという大きな転換点を迎え、何やら激動の年になりそうなムードですが、当ブログは相変わらず良くも悪くも時代の流れに鈍感に、自分の好きなレコードについてマイペースに書いていきたいと思います。引き続き御贔屓に、よろしくお願いいたします。

さて、ちょっと振り返って昨年末の話。12/27難波の絵本カフェholo holoにて行われた三匹夜会のライヴが私のライヴ見納め2018でした。メトロファルス残党組のライオンメリィ、西村哲也、熊谷太輔という愉快なトリオによる愉快なライヴ。三人のゆる~い会話のやり取りはなんだかパンダを見ているような癒しがありながら、演奏はオリジナル、カヴァーの区別なくロック万国博覧会と言うべきジャンルの世界地図を縦横無尽に旅する実はスゴイ音楽なのです。今回のライヴの目玉は映画『ボヘミアン・ラプソディ』の人気にあやかり!?QUEEN「Killer Queen」のカヴァーで、西村さんがフレディ・マーキュリー(歌)とブライアン・メイ(ギター)を両方やるという離れ業を見せてくれ、大変に盛り上がりました。そして、アンコールの最後は西村さんオリジナルの名曲「牛の群れになって走る」で締めたわけですが、その曲の最後の最後に西村さんがアコースティックギターからエレキギターに持ち替えて、まるでニール・ヤングリチャード・トンプソンが合わさったかのような、文字通り泥沼を牛が群れになって押し寄せてくるロックとしか言いようのないギターソロを弾いてくれ、胸の奥深くからぐわぁと込み上げてきて心の中では号泣していました(4月末に左手指の骨折という大怪我でまともにギターが弾けない西村さんも知っていたので、より一層に感慨が...)。それともうひとつ号泣で言えば、大晦日NHK紅白歌合戦でのユーミンのステージ。「やさしさに包まれたなら」で演奏していたバックのメンバーが、鈴木茂林立夫小原礼松任谷正隆というほぼキャラメル・ママというバンドでもうその姿を観ただけでウルウルきていましたが、間奏での鈴木茂さんのストラトキャスターによる”あのギターソロ”で涙腺のダム崩壊...ポイントは違うところかもしれないけど号泣していたaikoの気持ち、分かる。年が明けて正月休みという文字は無く元日と二日は普通に仕事でクサクサしてましたが、この二つのギターソロの余韻で何とか前向きに乗り切りました。

思い返すと、私は歌よりもむしろギターの響きに泣くことの方が多いのかもしれません。歌は感情に届くまでに言葉を聴いて解釈するという作業が要りますが、ギターの響きはダイレクトに感情に触れますから。西村哲也さんも鈴木茂さんも代えがきかない特有の音とフレーズを鳴らすギタリスト、もちろん歌が真ん中にあってのギターということも誰よりも理解している方ですが、時に歌よりも詞の世界をよく表しているのではないかと思う場面も多々あるように感じます。お気に入りの歌手だけでなく、お気に入りのギタリストを見つけていると音楽をより深く味わえるのでオススメです(もちろん他のパートも)。

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Dobie Gray『Drift Away』

洋楽に目を向けてみると、昨年に再発見して夢中になったギタリストがレジー・ヤング(Reggie Young)です。1936年生まれアメリカはメンフィスを拠点に活躍、特に60年代末チップス・モーマンのアメリカン・サウンド・スタジオにてそのいぶし銀のギタープレイの数々で米国南部スワンプロックサウンドを創り出した立役者の一人。代表作はDusty Springfield「Son Of A Preacher Man」、Elvis Presley「Suspicious Minds」など、The Box Tops「Cry Like A Baby」の印象的なエレキシタールもレジーの演奏です。決してソロを弾きまくるタイプではないですが、オブリガートでギターの一音の響きだけでムードを演出することができる歌伴奏の奥義のような演奏。テレキャスターをメインに、カントリー風味の乾いた土臭い音とトレモロを効かせたロマンチックな音を絶妙にブレンドしたコクのある甘さにウットリ酔いしれます。そんなレジーの魅力が存分に味わえる曲がDobie Gray「Drift Away」(1973年発表。全米ポップチャート最高5位)、間違いなく70年代の代表作でしょう。歌っているドビー・グレイは黒人シンガーですが、バリバリのソウルというよりはソウルフルなスワンプロックシンガーという趣きで、「Drift Away」に付いている「明日なきさすらい」という邦題からも匂ってくるように、アメリカの演歌と言ってもいいようなコブシの効いた泥臭い熱唱が胸を打ちます。”俺にビートをくれ 魂を解き放させてくれ ロックンロールの海をさ迷って漂っていたいんだよ”(私の訳詞)というロックンロール讃歌、そのメッセージにもグッときて仕方ありません(作詞曲はMentor Williams、ポール・ウィリアムスの弟)。そして、その歌をその歌世界を傍で哀愁いっぱいに背中を押すレジー・ヤングのギター。孤独と力強さが混ざりあったイントロのフレーズからほんの少しタメて、歌に入る直前のとろけるようなメロウな響き一発で必ず涙します。ドビーはさらに”気分が沈んだ時は ギターの響きが心に入り込んできて 和らげてくれる”と歌っていますが、まさにレジーのギターがそうなのです。メロウ・マイ・マインド。

「Drift Away(明日なきさすらい)」Dobie Gray
作詞曲:Mentor Williams
from 『Drift Away』(1973年)

※「明日なきさすらい」は、同年に元ズー・ニー・ヴー町田義人が『白いサンゴ礁』というレコードで、ヤング101と共に安井かずみの日本語詞でカヴァーしています(編曲は木田高介)。ドビーにも負けず劣らずの熱唱で素晴らしい出来のカヴァー、愛聴しています。

※この記事をアップしてから間もなく1月17日にレジー・ヤングが亡くなったとの報せが...。そんなことになるなら書くんではなかったと思ったけども、生前に書けたから追悼文にならなくてよかったとも思う。彼の名演が記録されたレコードはたくさんあるので、これからもまだまだ聴くのが楽しみなギタリストなのです。私の心の奥底まで響く素晴らしいギター演奏をありがとうございます。

2018.11.11 『靴音までメロウに vol.28』冬支度with渡瀬千尋、藤江隆/rallypapa(チョウ・ヒョンレ)/スーマー@絵本カフェholo holo

チョウさんに楽しみにしていると言われたので(笑)、久しぶりにライヴレポートを書き留めようかと。昨日は11月11日の夕刻から、大阪のアコースティックデュオ冬支度が主催するイベント『靴音までメロウに』が大阪難波の絵本カフェholo holoにて、ラリーパパ&カーネギーママのリーダーrallypapaことチョウ・ヒョンレさんと横浜からスーマーさんを迎えて開催されました。継続は力なり、イベントは今回でなんと28回目、冬支度は今年で結成10周年(!!)なので、単純に1年に2~3回はやっているという計算。ひとつイベントをやるだけでも準備や宣伝や集客とかかなり大変だと思うのですが、地元関西以外のアーティストも積極的に呼び、いつもフレッシュな組み合わせで楽しませてくれます。今回は特に靴音を鳴らしながら弾き語るメロウな歌心のあるシンガー&ソングライターが揃い、そのイベント名にふさわしい一日になりましたね。客席も賑やかで和やかに盛り上がりました。ミックスジュース風味の西成の地ビール「新世界ニューロマンサー」も美味しく、歌に人にお酒に酔える喜び。

2018.11.11(sun) 16:30~
『靴音までメロウに vol.28』@難波・絵本カフェholo holo
■ 冬支度with渡瀬千尋藤江
 安田支度 vocal, a.guitar, mandolin
 斎藤祢々子 vocal, accordion, flute
 渡瀬千尋 percussion
 藤江隆 e.guitar
■ rallypapa(チョウ・ヒョンレ) vocal, a.guitar
■ スーマー vocal, a.guitar, banjo

トップバッターは、主催者の冬支度with渡瀬千尋藤江隆。このカルテット仕様の冬支度は今年のライヴ納め。何度も演奏を積み重ねてきた成果、インスト曲でゴキゲンに肩慣らしして始まる堂々としたステージング。冬支度のフォーク&ソフトロックな独特で完成されたポップス(と言っていいと思う)をパーカッション渡瀬千尋さんとストラトギター藤江隆さんが職人的な味付けでググッと歌物語の風景を広げてくれます。歌と音量とリズムのバランスも良く、思いがけずかぶりつき席でアンプの目の前で観ていた私は、モノラルレコードのように一塊になった4人の音を心地良く身体に浴びていました。今回は、私の大のお気に入り「初雪」が聴けたのが何より嬉しかったです。安田支度さんのジェイムス・テイラー風の洒落たメロディーとアコースティックギターのリズム。斎藤祢々子さんの歌の続きでフルートに移るところがとても好きで、初雪がハラハラと舞い降る様子が見える歌詞も素敵だし、斎藤さんの魅力がよく出ている曲だなぁと思うのです。千尋さんの小粋なパーカッションが入ればますますジェイムス・テイラー色、そこに藤江さんのトロトロのエレキギター荒井由実「卒業写真」の鈴木茂ばり)が重なり、それこそザ・セクションのようなバンドの艶やかな音の粒立ちで、ウットリしました。メロウという意味では、もしかしたらこの日の個人的ハイライトだったかもしれません。

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冬支度のレパートリーが終った後、そのまま2番手のチョウ・ヒョンレさんを呼び込み、一緒にラリーパパ&カーネギーママの「白い雲の下」をセッション(安田さんはマンドリン)。私はラリーパパ&カーネギーママは2nd『dreamsville』から聴き始めたので、思い入れが...なんて感傷的になることはなく、ただのんびりとリラックスしたリズムに身体が揺れました(チョウさんが間奏で冬支度にアシッドフォークな感じで!とハードな要求してた・笑)。冬支度の二人は元々ラリーパパ&カーネギーママのファンとして出会い、10年前にラリーパパが(第一次)解散してから何もすることなくなって、どうせなら自分らでやろうと冬支度を始めたそうです(すごい理由)。ちなみに、私もラリーパパのファンとして安田さんとは知り合っていて(斎藤さんの存在も知っていた)、何年か後にステージで演奏しているのを観てビックリしたのでした。そして、いよいよ機は熟した!念願の初共演セッションの後は、チョウさんのソロコーナーが続きます。そのラリーパパが解散を発表した直後から、チョウさんはソロ活動を開始、その頃のライヴも何度か観ています(西村哲也さんとの共演とか。実は西村さんにチョウさんを薦めてたり)が、チョウさんの弾き語りを観るのはそれ以来になるのでしょうか。何を偉そうにと怒られるのを承知で、当時のチョウさんは歌は当然のごとく圧倒的に素晴らしいのですが、ギター演奏がちょっと不安定でハラハラして観ているところがありました...が、今回はそんな不安は微塵も無く、ギターの響きと一体となって、歌が淀みなくスコーンと入り込んできて、とにかく痛快でした。ザ・バンドのリヴォン・ヘルムと堺正章が混ざったようなカラッとした人情味があるソウルフルな歌声で、これでもかと伸びやかに歌い上げてくれます。ボサノバタッチの「枯葉のブルース」や70年代のホームドラマの主題歌が似合う歌謡曲ちっくな「グッドバイ」最高でしたね。ステージ後半、チョウさんがどれやろうかと曲を探しながら、あっ!と閃いて、これを一緒にやりたいんだけどと冬支度の藤江隆さんを無理やり引っ張り出して(笑)、「狼の好物は迷える子羊」をぶっつけセッション。藤江さんは全く知らないチョウさんのソロ曲だと思うけども、徐々に曲のことが分かってきてブルージーなオブリやソロをキめ始め、最後は自然とスライドに切り替えていた(元々スライドギターが大活躍する曲)のは流石!チョウさんも客席も大興奮していました。そんな興奮冷めやらぬ思いつきセッションの後でチョウさんコーナーの最後は、前もって用意していた(笑)トリのスーマーさんとのセッション。いつか出会えると思っていましたけど、ついに出会えましたね、とスーマーさん。曲はラリーパパ&カーネギーママ「ふらいと」、スーマーさんのカラカラと転がるバンジョーが風を吹かし、今なら飛べるような気がしました。

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しばし休憩してから、スーマーさんのソロコーナー。2年前に音凪で冬支度with藤江隆との共演ライヴで観た以来のスーマーさん。アコースティックギターバンジョーの弾き語りで、ホーボーソングを。人生経験豊富な!?含蓄のある深みとコクのある歌声、でも、どこか軽妙なところがあるのが魅力的。曲自体もそうで、日本的なじめじめと湿ったフォークソングにならないのが私の好みです。特にバンジョーの弾き語りはユニークで、何気ない旅でも珍道中になる感じがしますよね。それにしてもバンジョーという楽器は弦を弾いてああいうパーカッシヴな音が出るのが不思議です。ライヴで聴いた方からお葬式に合いそうな歌ですねと言われたらしい「ちょいと寂しい夜の歌」は確かにお葬式に流れたらグッとくるような...お葬式でグッとくるというもおかしいですが、”ちょいと”泣けるというのが何かお葬式にイイんですよ。その曲の前だったでしょうか、いよいよスーマーさんも閃いてしまいました。この曲を一緒にやりたいんだけどと冬支度の藤江隆さんを無理やり引っ張り出して(笑)、なんと!かまやつひろしの大名曲「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」をぶっつけセッション。藤江さん曰く”ちょっとは(曲を)知っています”ながら、最初から最後まで熱くなる素晴らしいフレーズを連発!痺れまくりました(天国のムッシュに聴かせたい)。この日の藤江さんの装いはヒョウ柄キャスケットを被ったまるでデヴィッドTウォーカーのようで、冬支度では演奏もまさしくデヴィッドT的な引きの美学を見せてくれましたが、こういったぶっつけセッションでは思わずロック魂がドバッと噴出する瞬間が見れて、心の中では女の子のようにキャーッ!と叫んでいました。客席全体もこの日一番の盛り上がりでした、ズバリ!今宵の裏テーマは藤江隆祭り2018。最後は冬支度のみんなを招き入れて、「人生行きあたりばったり」を行きあたりばったりではないセッションでほのぼのした気分。そして、アンコールは更にチョウさんが加わり出演者全員でロジャー・ティリソン「ロックンロール・ジプシーズ」(日本語カヴァー)を。アコースティックギターエレキギターマンドリンバンジョーと弦楽器が勢揃い、斎藤さんのフルートがまたジプシー感を演出し、4人のボーカル回しもちょっと感動的で、幸せな大団円となりました。

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↑大活躍の藤江さん、チョウさんもスーマーさんも藤江さんのギターがもっと見たいからという理由で呼んだそうです。あ、千尋さんの写真無くてごめんなさい...彼女も歌バッキングのツボを心得ている素晴らしいドラマー&パーカッショニストです。独創的でもあり、ミカンのシェイカーを指で叩いて?愉快なリズムを出していました。

打ち上げの席も実に楽しく、この日は人と人が繋がっていく嬉しさを感じましたね。ここからまた面白いことが起きていくのでしょう。