レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

青山陽一 the BM's@鶴舞K.Dハポン 2015.10.17

凄まじかった。あれから一週間経ったけども、まだ余韻が続いている。

私が青山陽一 the BM'sのライヴを観るのは2012年7月7日@難波ベアーズ以来。あのライヴは七夕の夜というロマンチックさの欠片など微塵も無く、ベアーズというディープでアングラな空間が青山さんのロック魂を燃えたぎらせたのか、何か異様なテンションで突き抜けたロックンロールショウで、今でも鮮烈に記憶に残っている。それだけに3年分溜まったBM'sへの期待は並大抵のものではなかったのだけど、そんなもん軽く超えてくれた。

Quarter Century Of Odrelism (1990-2015)

Quarter Century Of Odrelism (1990-2015)

今回はベストアルバム『Quarter Century of Odrelism (1990-2015)』リリース記念のツアーで、名古屋は鶴舞K.Dハポン、大阪は阿波座カフェ・マーサの2デイズ。今回のBM'sは伊藤隆博さん、中原由貴さん、千ヶ崎学さんというお馴染みのメンバーに田村玄一さんが加わった豪華な編成。しかも、名古屋ではゲストに福島ピート幹夫さんも迎え、更にスペシャルになるということなので、K.Dハポンの方を選んだ。初めて訪れたハポンは、スペースは決して広くはないけれど中2階もあり、天井が吹き抜けのようになっていてイイ感じに古びたアトリエっぽく、ザ・バンドで有名なビッグ・ピンクで観てるみたいだなぁと思った(まぁビッグ・ピンクに行ったことはないけども)。そういう構造なので、音もドーンと来て上にふっと抜ける腰が浮く感じというか、とても心地良かった。

それにしても、メンバーと近いな。一番後ろの席にいても位置的に伊藤さんの真隣りで、鮮やかなキーボードさばきをガッツリ堪能。そして、呑みっぷり酔いっぷりも...。東京での普段のBM'sを観てないので想像だけれど、地方に来るとタガが外れちゃうのだろうか。タカタカのタガタガが。本当に初っ端から伊藤さんが妙にゴキゲンで、たまに目がトロンとしている時もあるが(笑)、これまで見たことのないテンション。ライヴが進むにつれてお客さんから赤ワインが次々に運ばれ、飲み、酔い...最初のアンコールでは一旦楽屋に引っ込むのも面倒になって、お客さんと一緒に拍手してるしで。そんな酔いどれ状態でも演奏は緩急バッチリ完璧だし、周りを見ながらバンド全体のバランスも巧みにコントロールしてるしで、もう驚愕としか言いようがない。

あ、伊藤さんの話で終わりそうになってしまった。いや、しかし、久しぶりに観たBM'sは完全なジャムバンドになっていた。もちろん以前からそういう要素はあったけど、セットリストにジャム用の長尺曲が数曲用意されてるという感じだったはず。今回のBM'sは基本的にほぼ全曲でジャムってたように思う。「Doggy Ricky」のような曲ですら後奏でジャムるし、曲自体もイントロクイズがほとんど正解できないくらい変貌しているし(「回転もしくは上下動」が一大ファンク曲に!)。とにかくセッションが予測不能に展開していくので、観ている方も常にスリリング、ダレる暇なんて無い。時には、演奏者がプレイに没頭しすぎているのか、ズレが生じて、首かしげたり苦笑いしている場面もあるのだけど、微調整して最終的に上手く収束させていくのは流石の一言。私はそんなジャムバンドなBM'sの音とグルーヴにとってもTrafficを感じていると、後半に青山さんが「Trafficの曲を演奏します」と言った時にちょっと笑ってしまった。直球すぎ。演奏曲はピートさんのサックスをフィーチャーして、私も大好きな「Glad」~「Medicated Goo」。正直「Glad」はグダグダだった(誰がおかしいのかも分からない)が、「Medicated Goo」の青山さんの熱唱で挽回した。ライヴは生き物だということを改めて実感。

さすがに伊藤さんも玄さんもピートさんもいるので、青山さんはギターソロを弾きまくるという感じではなかったけど、最後の「Starlab」でブルージーでロックでサイコーなやつキめてくれた。序盤にBM'sの体温をググッと上げて、バンドのエンジンを本格的にかけたのはベースの千ヶ崎さん。身体全体でグルーヴを放出、ちょっとイッちゃってる時に、中原さんと伊藤さんが目を合わせてニヤッとしていた。ドラムの中原さんはクールにタイトなリズムを叩き出し、コーラスも素敵に効いている。これまた「Starlab」の時、イントロのドラミングが思いがけず疾走感溢れる情熱的なビートだったので、ドキッと心拍数が上がった。メンバーも驚いたのか、伊藤さんが中原さんに親指を立ててGOOD!サインを送っていた。玄さんはペダルスティールとスティールパンを使い分け、世にも奇妙な無国籍サウンドを演出。特にスティールパンを鳴らしても全く南国チックにならずに謎のサイケ感が生まれるのが、めちゃくちゃ面白い。MCでも青山さんのフォローなど大活躍。個人的にジャック達@難波ベアーズ以来10年ぶりに拝見した(あの時はベーシスト)サックスのピートさんは、やはり気分はTrafficのChris Woodだろうか、渋く怪しくイカしてた。とどのつまり、唯一無二なロックバンドだったと。円熟しながらますます異形になっていくBM's、怪物だ。

翌日の大阪編も盛り上がったようで、青山曲で最も好きかもしれない「Bright Lights Bugcity」を演奏したとは悔しいけれど、名古屋まで行って観れて心底良かった。というのも、ライヴが終わってからの名古屋の夜がまた濃くて............ありがとうございました。またできるだけ早いうちに関西圏にお越し下さいね、切に。


青山陽一 the BM's】
青山陽一(Vo,E.G)、伊藤隆博(Key,Cho)、千ヶ崎学(B)、中原由貴(Dr,Cho)
田村玄一(P.Steel,S.Pan,Cho)、福島ピート幹夫(Sax)

≪セットリスト≫
・1st set:Quarter Century of Odrelism/Seven Deadlines/Come And Go/Freezer Bag/Vampire/Jamparica/So Far, So Close
・2nd set:Doggy Ricky/停電/回転もしくは上下動/God Press You/Glad~Medicated Goo/休符を数えて生きるのは/炎とは何のことか
・encore1:五つめのシーズン/難破船のセイラー
・encore2:Starlab