レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

『双六亭』双六亭

メリークリスマス!に乗り遅れ、もういくつ寝るとお正月。2017年は間もなく暮れる...そんな時期なので今年を振り返ろうとも思うけども、このレコードを聴いていると何だかお正月のことしか考えられなくなる。旧き良きニッポンのお正月。凧揚げ、羽子板、独楽まわし、歌留多に双六...と云えば、双六亭のファーストアルバム『双六亭』を炬燵囲んでお雑煮食べながら。双六亭とは、ニシイケタカシ、中原由貴、鈴木晶久からなる東京の鯔背なスーパーロックバンド。いや、むしろ、”東京の”と言うよりも”江戸の”がふさわしい風情。双六亭の存在は随分と前から噂には聞いていたが、いかんせん関西の人間なもので、噂から音を想像するしかなかった。つまり、首を長くしてレコードを待っていた、待ちすぎてろくろ首くらいに伸びてはいたが、こうやって聴けて心から嬉しい。そんな夢にまで見た双六亭の音楽は、ロックは、ひたすらゴキゲンであった!ニシイケさんと中原さんはタマコウォルズの主要メンバーだが、あの米国南部ファンキースワンプロックとはまた違い、双六亭はタイトなグルーヴで疾風怒濤のロックンロール。ギュッと旨味が濃縮された鉄壁のバンドアンサンブルで、ニシイケさん作の踊らずにいられない「ハッピーエンドがあればの話」なんて曲もあるが、はっぴいえんどのゆでめんにも通じる得体の知れない熱気がスピーカーから吹き荒ぶ(アナログ盤で聴きたい)。とりわけ、中原さんが汗を飛び散らしながら東奔西走する爆裂ドラムのドタバタ喜劇リズムに、私は川島雄三監督の映画『幕末太陽傳』が目に浮かぶ(ということは、中原さんはフランキー堺!)。と云えば、カーディガンが似合う鈴木晶久氏が描く世にもユニークな落語ロックに衝撃が走りまくる、歌世界もギター演奏も若くして(私の一つ年上同世代)縁側のお爺ちゃんみたいなくたびれた老成ぶりは一体!?「与太がゆく」のサビでの、鼻くそぉ~~~♪に正気かよ(笑)。なぜだか妙に胸を打つ「せいろう」の"せいろう"を"Sail on"と歌う辺りも実にニクイんだな。居酒屋でしがないオヤジが酔いどれて管を巻いてるだけの「武蔵野」は、元・双六亭メンバーであるコーノカオルさんのTRICKY HUMAN SPECIAL「武蔵野心中」(from『黄金の足音』)と併せて聴かれたし。双六亭のロックは蕎麦と日本酒が合う粋な蕎麦屋的であり、ふらりと立ち寄れる大衆居酒屋的でもある(居酒屋と書いてパブと読む)。全曲強烈でカッコ良くハイライトだらけではあるが、私的一番のハイライトは、豪快極まりないロックンロール「門外漢」から、のんべんだらりとした「与太がゆく」への落差。その「門外漢」にはふとタマコウォルズ「からまわる男」を思い出したが、泥まみれになって七転八倒する男の嘆き節(ブルース)を歌わせたらニシイケさんは天下一品だ。そして、アルバム随所に聴かれる全員が全力で歌う人間味120%コーラスは、倒れても砂を掴んで立ち上がる活力になる。双六だけに、前進したり後退したり一回休んだり。もちろん、『双六亭』を聴き終わる(上がり)と自然に溢れ出る言葉は、”サイコウだな、サイワイだな”である。

双六亭

双六亭

『双六亭』 双六亭(2017年)

01. 泥の舟/馬のムク(作詞曲:ニシイケタカシ)
02. サイワイ(作詞曲:ニシイケタカシ)
03. はなこちゃん pt.2(作詞曲:ニシイケタカシ)
04. 武蔵野(作詞曲:鈴木晶久
05. ホラ吹きジイサン(作詞曲:ニシイケタカシ)
06. 捨て鉢、吾妻橋(作詞曲:鈴木晶久
07. 門外漢(作詞曲:ニシイケタカシ)
08. 与太がゆく(作詞曲:鈴木晶久
09. ハッピーエンドがあればの話(作詞曲:ニシイケタカシ)
10. せいろう(作詞曲:鈴木晶久

双六亭...ニシイケタカシ、鈴木晶久、中原由貴
E.Bass 時光真一郎
A.Piano ライオンメリー(M-4)

Produced and Arranged by 双六亭、時光真一郎
Mixed and Mastered by 鳥羽修(Smalltown Studio)
Recorded by 福岡史朗、鳥羽修、ニシイケタカシ
Recorded at ギンジンスタジオ、スタジオATLIO、スタジオ楽音、ニシイケの部屋
Designed by Niko Sanko


双六亭『泥の舟/馬のムク』2017.10.22@自由ヶ丘マルディグラ

※来年2月に、大阪の男女アコースティックグッドタイムミュージックデュオ冬支度が東京でライヴします!な・な・なんと双六亭とも共演!密かに、私は会場BGMの選曲をやらせて頂きますが、それはともかく、豪華出演陣できっとめっちゃ楽しい一夜になります。お近くの方も遠くの方も是非お越しくださいませ!ちなみに、翌日の冬支度は下北沢leteで田中亜矢さんとの素敵な2マンもあります。

2018年2月10日(土)「冬支度の旅支度2018」@LIVE SPOT テラ(西荻
出演:島へ行くボート、双六亭、冬支度with渡瀬千尋
OPEN 18:00/START 19:00
前売 2,500円/当日 3,000円(共に+1D)
詳細は、冬支度HPにて