レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

【私の好きな歌014】「人生はそんなくり返し」井上順

一昨日、キング・クリムゾン「エピタフ」を荘厳にカヴァーしていることで知られるザ・ピーナッツの72年のライヴ盤『ザ・ピーナッツ・オン・ステージ』を遂に入手でき、あまりに素晴らしくてずっと聴いていたのだけど、その帯を見ると”さよならは突然に”(当時の最新シングル曲のタイトル)とあった。いつだってさよならは突然で、昨朝起きると、かまやつひろしさんが亡くなったとのニュースが...。憧れの人はたくさんいるけれども、とりわけ憧れの人だったので、ただひたすら哀しい寂しい。15年くらい前に、京都駅ビルビートルズ展(詳しくは覚えてない)があり、そのトークショーでかまやつさんのお姿を遠目に観た。正直、かまやつさんの本当の凄さを微塵も分かっていなかったので、芸能人を見た的な感じで...。当時大学生の私ははっぴいえんどが日本語ロックの草分けだと思い込んでいたのだが、その後GSに興味を持ち、GSのレコードをいろいろ聴いてからは、いやいやザ・スパイダースだろうと考えを改める。それどころか歴代のロックバンドの中でも、スパイダースが最も粋でカッコイイと思っている。何より私は、スパイダースにおけるかまやつさんの立ち位置が羨ましくて。スパイダースのオリジナル曲のほとんどをかまやつさんが書いているし、バンドのコンセプトもかまやつさんのアイデアなのだろうけど、世間的にはスパイダースと言えば、堺正章&井上順のバンドと思われている。そんなちょっと後ろにいる佇まいがイイ、素敵だ。最新の流行をセンス良く取り入れ軽やかに名曲を作り出す飄々としたソングライター、人柄が滲み出た個性的な味わいのある歌とギターもグッときて仕方がない。クールで温かい、真のお洒落さん。これからもきっと、永遠に憧れる。

かまやつさんの曲では「あの時君は若かった」「バンバンバン」「メラ・メラ」や「どうにかなるさ」「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」などの代表曲はもちろん好きなのだけど、今の心情で頭に流れるのは井上順さんに書いた「人生はそんなくり返し」。バート・バカラックを匂わせる美しく儚いソフトロック歌謡、我が人生の最愛の一曲と言ってもいい。かまやつさんのドリーミーでありながらどこか素朴なメロディーと順さんのハートウォームなボーカルが優しくロマンチックに溶け合う。そして、安井かずみさんの人生を謳った詞があまりにも鮮やかに切なくて、じわり胸打たれ涙する。苦しみ喜びをつみ重ね続いていく”人生はとても短くて長すぎる夢のよう”

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「人生はそんなくり返し」井上順(1970年)
作詞:安井かずみ/作曲:かまやつひろし/編曲:井上孝之