レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

『PLUG AWAY+』 大なり><小なり

暑すぎる夏をさらに熱くする熱中症必至?な大なり><小なりの新作EPが8/15にOTOTOYでハイレゾ配信された。早速ダウンロードし、部屋や街でも聴きまくり、すっかり熱中している。

ototoy.jp

『PLUG AWAY+』は、彼らがリスペクトしてやまないグランドファーザーズとの共演ライヴのセッション用に書き下ろされた新曲「PLUG AWAY」に、昨年リリースされた1stフルアルバム『フレット』から元カーネーションの鳥羽修さんが新たにミックスした4曲をプラスした5曲入りEP。

まずは何はともあれ最新曲「PLUG AWAY」が素ん晴らしい傑作ロックチューンで嬉しくなっちゃうのだ(作詞曲:えみコバーン/編曲:宙GGPキハラ/プロデュース:安部OHJI/ミックス:鳥羽修)。1stにして集大成的な渾身の力作『フレット』レコーディングからレコ発ツアーを経て、バンドアンサンブルは更に強化され、勢いと脂がノリまくった今の大なり><小なりの魅力が余すことなく大爆発している。イントロのTHE WHO「Baba O'riley」での壮大なシンセサイザーを彷彿とさせるスペーシーなギターの響きから、もうワクワクが止まらない。そこにドラムがズシャーン ズシャーン ズシャーンと来て、ベースがドドッ ドドッ ドドッと入ってくる女性リズム隊、姐さんどれだけ男前なんだ!プログレ的に変化するリズム展開に、ヨナフィとキハラさんのダイナミックな熱血ギターソロバトル、QUEENばりの分厚くサイケなコーラス。そう、ロックは生きている。歌詞もとてもユニークな視点で、1000年後の人類?が1000年前の現代の人類を振り返って、ちょっと呆れている。そう言えば、KIRINJIがRHYMESTERとコラボした新曲「The Great Journey」は現在に至るまでの人類の進化と歴史を歌っているようだが、それとは逆の発想と言えるかもしれない。ともかく、「PLUG AWAY」はサウンド&アレンジや詞の世界ともにスケールが果てしなくデカい曲である。それでいて、決して高尚なアートにはならず、近所の(ちょっと変わった)気のいいお兄ちゃんお姉ちゃん的な親しみやすさが滲み出るのが大なり><小なりのチャーミングさだろう。映画ではなく、漫画のようなロック。最高である。

残りの『フレット』収録の4曲は日本のチャド・ブレイクこと鳥羽修さんの手によって、驚くほど変身している(新曲と言ってもいいくらい)。グランドファーザーズGRANDFATHERS』、青山陽一『Blues For Tomato』、西村哲也『運命の彼のメロディ』、加藤千晶『蟻と梨』、青木孝明『さようなら、夢』...名盤の陰に鳥羽修ミックスあり。私も全幅の信頼を置いている方なので、どう生まれ変わるか楽しみにしていたが、想像を軽く超えていた。『フレット』はライヴ盤に近いようなワイルドなミックスだったが、今回の鳥羽修ミックスバージョンでは、よりメリハリのある洗練されたアンサンブルに仕上がっている。主役から脇役までどの楽器の音もしっかり聞かせながら、メンバーの歌やコーラスをより前に押し出し、テンポを速くしているわけでもないのに疾走感がやたら増していたり、随所に遊び心のあるニクイ演出もあったり、鳥羽マジック炸裂しまくりだ(心から楽しんでいる鳥羽さんの顔が目に浮かぶ)。そして、ミックスというのはほとんどアレンジなのだな、ということを思い知らされる。そんな風に『フレット』と比較しながら聴くのも面白い、面白すぎる。

配信音源は気軽にすぐに入手できる(しかも、ハイレゾなので当然音が良い)ので、少しでも気になる方は是非。特に、カーネーションやKIRINJIの新譜が最高だと思っている人にも聴いていただきたいな。負けてないよ。


『PLUG AWAY+』 大なり><小なり(2016年)

1. PLUG AWAY
2. かんたんです
3. ハトなんですが
4. 変身
5. フレット