レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。

スーマー/冬支度@音凪 2016.6.25

2週続けて土曜日は大阪天満宮近くの音凪へ。前週は福岡史朗&松平賢一&大久保由希という唯一無二でキレキレのロックンロールショーに舌鼓を打った、ひたすら打ち続けた。その時、一緒に観ていたのは冬支度の安田支度さんで、「来週はここでスーマーさんと一緒にやるんですよ」「そうなんだってね」。というわけで、今週はスーマーさんと冬支度の2マン。音凪は5周年記念イベント月間真っ只中、しかも、sakanaの西脇一弘さんのイラスト展期間中(店の壁面にびっしりとあの素敵すぎるイラストの数々)ということで、sakanaに関連のあるアーティスト同士の組み合わせなのでしょうか。1月の雲州堂でのいちかたいとしまささんに続き、名のある方との共演で、好調をキープしている冬支度です。一方で、私にとってのスーマーさんというと、失礼ながら、お名前もお顔もよく存じているし、どんな音楽をやっているのかは何となく想像はついているのですが、実際の音楽を聴いたことがありません。もうどうせなら白紙で向かおうと、あえてYouTubeなどもチェックしないでいました。開場時間を少し過ぎたくらいに音凪に到着して、冬支度のお二人とどうもどうもと挨拶したら、「スーマーさんは二度寝したみたいで、リハも入れ違いになっちゃって、まだお会いしてないんですよ。あはは」。前日のスーマーさんはツアーの空き日だったそうで、京橋ではしご酒しておられたようです(笑)。開演直前にスーマーさんが帰ってこられ、冬支度とはじめましての挨拶を交わしてからライヴが始まりました。

まずは冬支度(安田支度+斎藤祢々子)。この日は最初から燻し銀ギタリスト藤江隆さんが加わり冬支度トリオで。安田さん曰く、「今日はスーマーさんと共演ということで、スーマーさんと同じくヤマハのダイナミックギターの使い手である藤江さんを是非とも紹介したかったんです」。とにかく私はギタリスト藤江さんのファンなので、たっぷり藤江さんの演奏が観れるのが嬉しい。前週、お馴染みの福岡史朗&松平賢一コンビにお久しぶりの大久保由希さんのドラムが加わった時の最強っぷりに、鬼に金棒というのはこういうことを言うのだなと実感したのですが、冬支度と藤江さんの関係もまさしくそう。さりげない日常風景を素朴にちょいとユーモラスに描く冬支度の音世界を、藤江さんはその味を壊さずに鮮やかに色づけしていきます。ライヴ前、藤江さんに今日はフルで参加するんですね?と言ったら、「途中から出て行くの恥ずかしいんですよ。変に注目されるでしょう」と。そんな控え目な言動は、歌を引き立てるギタープレイにも表れているし、安田さんの的確なリズミカルなギターとの呼吸も絶対に外しません。そして、藤江さんが選曲してお蔵入り寸前から救出されたというレア曲「雨傘と日傘」が間違いなくこの日のハイライト。斎藤さんはアコーディオンで、スローな音数の少ない曲なのですが、アウトロを長尺にして、藤江さんがロックなスライドソロをキめまくる。胸がじわりと熱くなって、グッとくる、というか、かなりウルッときてました。斎藤さんがラリーパパ&カーネギーママ「終りの季節に」みたいなイメージと仰っていて、確かにあの匂いがしてましたね。コンパクトなポップソングが多い冬支度ですが、こういうスケールの大きな冬支度もアリだなと思いました。あと、「桜の見ごろは終わったみたい」間奏での藤江さんの滋味深い歌うギターソロも石田長生さんを彷彿とさせるムードで素晴らしかったです。スーマーさんが藤江さんの演奏を「めちゃくちゃ上手い」と褒めておられましたが、もちろん、その「上手い」は単に技術的な意味だけではないのです(とりあえず生で聴いたら分かります!)。って、なんだか藤江さんのことばかり話していますが、たぶんこれくらい言っても冬支度の二人は許してくれるはずです。もしかすると藤江さんには、いやいや俺が目立つのは良くないんですよ、なんて思われてそうですが。心配しないでください、音楽に溶け込んで全く目立ってない時間もしっかりありましたので。いやはや、派手ではないけど観応え聴き応えのあるトリオです。またこの三人の歌と演奏を観たいですし、録音もしてほしいなぁなんて期待してみます。

たっぷり休憩を取って(本当に始まるのか?っていうくらい)からスーマーさんのステージ。前述のとおり、スーマーさんの音楽を全く聴いていない状態で、ちょっとしたワクワク気分。藤江さんと同じくヤマハのダイナミックギター(六千円で買ったそう)とバンジョーを使っての弾き語り。ストローハットに丸メガネに髭面、まさしくその風貌通りの音楽というか。60年代のアメリカのフォークソングに根差した音楽性なのでしょう、日本的なドロッとした湿り気は感じず、乾いているのが心地良いです。力強いアルペジオに弾かれて男らしく優しい歌声が伸びていき、陽気なバンジョーの音色に反して、寂し気な歌が唄われます。浅川マキさんのお墓参りのすべらないお話(とっておきのMCネタだそうなので、詳しくは言うまい)をしてから、「少年」の沁みるカヴァーなんかもありつつ。リラックスしたスーマーさんの歌と演奏とお喋りをアテにお酒をチビチビやっていると酔いも軽やかに進み、あっという間に終盤へ。ダブルアンコールの最後はファンのリクエストに応えて「死んだ男の残したものは」、ズシリと重く心に響いたのでした。今回はスーマーさんの二度寝のおかげで(笑)冬支度とのセッションが無かったのが少し残念でしたが、それはまた次のお楽しみに。藤江さんとのツイン・ダイナミックギターなんてのも観てみたいですね。

目をつむれば、今は1970年代かと錯覚してしまうようなぬくもりのある時間を過ごせて楽しかったです。そして、音凪のお酒とおつまみは旨いのです。