レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

『60』 一色進

え、今なの?必ず書くと言って、放ったらかしにしていた。寝かせてたまに聴くと、めっちゃええやん!と思って、また寝かせていた。機は熟した、ということにしておこう。というわけで、愛すべき永遠のB級ロックバンドマン一色進さんが還暦を迎えて発表した2ndソロアルバム『60』。蓋を開けたら、打ち込みバリバリ、まさかまさかのEDMだった。EDの音楽じゃないよ、エレクトロニック・ダンス・ミュージック。踊れるかどうかはあなた次第。一色「俺もたまには駄作を作るんだよということを証明したかった」!?と言いながらも、史上屈指にポップでキャッチーな曲が揃っている(ような気がする)。バックトラック作りはタイツ時代からの盟友・松田信男さんが担当。悪ふざけするつもりがつい本気になってしまい妙に完成度が高いトラックが逆に笑える。それでもなんかイナたいテクノポップは、中田ヤスタカには出せないだろう(出す必要はない)。懐かしいのか新しいのかはどうでもよくなる、ただひたすら可愛いアルバム。

60

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いきなり航空会社のCMに流れそうな洗練されたトラックに乗せて、腹上死したいと歌う「ガチャ・ガチャ」。タイツ「RAN-SAW SAMBA」の続編か?みんなで歌って楽しい問題作「閉経ベイビー」。一色さんのはっきり聞き取れないピロートークがセクシーな「生まれて30分の恋」。”待ちわびてぇ~♪”の調子っぱずれな”てぇ~”にやたら胸を打たれる「待ちわびて」。あの娘めがけて街を全速力で駆けていくトレンディドラマの1シーンが思い浮かぶ「Chance」(鈴木茂「レイニー・ステイション」に繋げたい!と思ったが、実際は痴漢を我慢する歌)。一色さんのラップ、意外とイケるやん「ラムチョップ」。出来れば12インチシングルで聴きたいディスコなキラーチューン「恋のTRANSIT」。愛した女は必ず何かに狂ってる、ボブ・ディランを意識したイカれたトーキングブルース「HOLIC-HOLIC」。前作『歪』の匂いがする美しくダウナーな「Small Mercy」。お茶目でキュートでコミカルなインスト「エアポート急行」。情けなくヘヴィーにファンクする「ネコババと40代の課長さん」。メロディー自体は素朴で愛らしいがやたらアレンジが壮大な「背徳の女神」。そんなこんなのお節料理のようなめでたい?全12曲47分。最&高、かもしれない。


『60』 一色進(2015年)

01. ガチャ・ガチャ/02. 閉経ベイビー/03. 生まれて30分の恋/04. 待ちわびて
05. Chance/06. ラムチョップ/07. 恋のTRANSIT/08. HOLIC-HOLIC
09. Small Mercy/10. エアポート急行/11. ネコババと40代の課長さん/12. 背徳の女神

Produced by 松田信男