レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

『フレット』大なり><小なり 【後半】

大なり><小なり『フレット』好評発売中!というわけで、予告通り後半は全曲感想やっちゃいます。いかんせん14曲もあるので、もう大変です(汗)。誰に頼まれたわけでもないですが...。おっと、その前に、まずはメンバー紹介をしておきます(?)。ボーカル&ギターでほとんどの曲を作詞作曲、沖縄が生んだシャイなポップマエストロことヨナフィ!ギター&ボーカル&コーラス、宙GGPキハラ!ジャック達のレスポール担当でもありますね。ヨナフィの計算された変態ギターとGGPのワイルドで骨太なギターというタイプの異なるギタリストの絶妙な掛け合いは、大なり><小なりサウンドの肝です。ベース&ボーカル&コーラス&作詞作曲、えみコバーン!元々はギターを弾いて歌うシンガーソングライターの彼女、なんと大なり><小なりで初めてベースを弾いたそう。と思えないほどブリブリとキレのあるグルーヴ、日本のティナ・ウェイマスと密かに呼んでいます。そして、ドラムス&ボーカル&コーラス&作詞、山口彩子!小柄ながらもパワフルなドラミング、メンバーからはダイナマイトドラマーと称されています。えみコ&彩子女性リズム隊の腰の据わった安定感と躍動感に支えられ、男性陣が自由に泳がされています(笑)。二人の女声コーラスがふんだんに入るというもの素敵ポイント。そんな愉快な男女4人組、わりとロック!バンド大なり><小なりです。それでは、全曲感想始めますよ。長いよ~。

フレット

フレット

01. フレット(詞:山口彩子/曲:ヨナフィ)
ダン!ダン!彩子さんのスネア2発でアルバムは始まる。そう言えば、前作『ミーティン』ではダン!とスネア1発で始まった。いきなりニクい演出だ。このアルバム表題曲は、まさしく大なり><小なりらしいヒネくれポップ。前半で引き合いに出したが、この曲が最もXTCっぽいかもしれない。ジャック達の夏秋文尚さんとのツインドラムがゴキゲンだ。同じくジャック達の一色進さんが吹く酔狂なブルースハープにも注目。

02. ストレートネック ブルース(詞曲:ヨナフィ)
ブルースではない、颯爽と駆けてゆくギターポップナンバー。ヨナフィさんが弾く12弦エレクトリックギターが実に効いている。用心して傘を持っているときには晴れて、傘を忘れたときに限って雨に降られる。私もそういうタイプ。

03. ハカナシ(詞曲:ヨナフィ)
墓なし、儚し、哀しいゾンビの歌。どぉなってんの~♪脱力コーラス、No! No! Walking Dead!ヨナフィさんの遠吠え、最後の彩子さんのヤケクソなシンバル爆叩き...笑えるとこいっぱい。ファンキーとユーモアが見事に融合した文字通りのキラーチューン(ゾンビになっちゃう)。私がDJやるなら、この曲の後にカーネーション「ロックゾンビ」を繋いじゃうね。

04. かんたんです(詞曲:ヨナフィ)
たぶん、かんたんでないキャッチーなポップナンバー。ロックバンドらしくメンバー4人全員の歌が聴けるのが嬉しい。別にシティポップスというわけではないが、イントロやギターソロなどに私は強力にシュガー・ベイブを感じるのだが、どうなのだろう?あ、言っておくけど、シュガー・ベイブはギターロックバンドだから!って、シュガー・ベイブの話は置いといて...。

05. とかなんとか(詞曲:ヨナフィ)
そのシュガー・ベイブの村松邦男さんがエレクトリックギターで参加していたのは、全くシュガー・ベイブっぽくないコレでした。メインボーカルは彩子さん、のんびりしてるが妙ちくりんな曲。トリプルギターの怪しい響きにじわーっと汗ばむ。

06. ケチな呪い(詞曲:えみコバーン)
何やら当初はサイケデリックをテーマにアルバム制作に取り掛かったそうだが、メンバー誰一人サイケデリックの素養がなくて、断念したそうである(トホホ...)。ひょっとするとそんな名残りがこの曲にあるのかもしれない。エレクトリックシタール入れてみました、サイケデリックでしょ?(笑)。重厚なバンド演奏がめちゃカッコイイ、一色さんが加わり荒くれたギター合戦も聴きどころ(フィードバックノイズの呪い)。えみコさん作詞曲で、歌うのはヨナフィさん。

07. 今際(詞:えみコバーン/曲:えみコバーン、ヨナフィ)
アーシーで感動的なバラード。複雑怪奇なクセ曲だらけの中で、この堂々たる名曲ぶりが逆に異彩を放つ。えみコさんの母性を感じる優しく力強い歌声に胸打たれてください。GGPさんのスライドギターの音量がデカい、太い、泣ける。ピアノは藤原マヒトさん。

08. つり皮や手すり(曲:ヨナフィ、安部OHJI)
前半戦と後半戦をつなぐお茶目なインスト曲。青山陽一 the BM'sやキリンジでもお馴染み伊藤隆博さんのオルガンプレイが何気に熱い。作曲にクレジットされている安部OHJIさんは当アルバムのプロデューサー(大なり><小なりと共同)。

09. おしゃれなうた(詞:えみコバーン/曲:ヨナフィ)
私がライヴでこの曲を演奏しているのを観た時には、どこがどうおしゃれやねん!と突っ込んでいたが、このレコードバージョンをじっくり聴いてみると、コード感がとてもバート・バカラックしていて、おしゃれやん!と考えを改めた。ヨナフィさんによるブラスアレンジもかなりバカラックを意識しているのでは?隠し味のマンドリンはストリングス風味。他にもシャンソンとかパパパーコーラスとか、思いつく限りのおしゃれ要素を放り込んでみました的な(笑)、あくまでも大なり><小なり流のソフトロック。

10. サントラ(詞曲:ヨナフィ)
カッコつけきれずどこか情けない大なり><小なりだけど、これはもう頭からつま先まで男前なパワーポップの名曲。ヨナフィ&えみコバーンのツインボーカルが実にロック!だ。何度も繰り返される“I believe in miracle”にシビれる。

11. 今日でおさらば(詞:山口彩子/曲:えみコバーン)
ライヴで例えると、この曲で本編終了、残りの3曲がアンコールという印象。女性陣の作詞曲によるお別れの歌をヨナフィさんが歌う。“今日でおさらば また会う日まで”は強力なフックで、これからは何気ないバイバイの場面でも、頭の中でこのフレーズを口ずさんでいるだろうな。ふと気づいたが、前の「サントラ」で“映画のような 奇跡はあるか”(byヨナフィさん)と歌い、続くこの曲では“これは映画じゃない”(by彩子さん)とくるのがなんだか面白い。夢見がちな男と現実的な女か...。

12. 変身(詞:えみコバーン/曲:ヨナフィ)
なんちゃってハードロックナンバー。できればケンカは避けたい男たち(?)が精一杯に声張り上げギター弾き倒し。それでも、女性リズム隊の演奏の方が腕っぷしが強そうだが(笑)。ギンジンレコードの永遠のギター小僧、小見山範久さんがエレクトリックギターとリゾネーターギターで参加。この曲でリゾネーターは謎すぎると思ったが、不良なやさぐれ感の演出に大いに活躍している。それにしても、バカバカしくて最高だわ。

13. ハトなんですが(詞曲:ヨナフィ)
問答無用の代表曲。3年前の『ミーティン』レコ発ツアーで既に披露され、一瞬で一聴き惚れした曲で、一刻も早く音源化するべきだと思っていたので、こうやってレコードで聴けてホントに本当に嬉しい(涙)。これはヨナフィという類まれなるソングライターの才気が大爆発した凄まじい曲だと思う。AメロBメロとかじゃなく、イントロから間奏のギターソロも含めもう全てがサビみたい。とにかく目眩がするほど目まぐるしく展開が変わりまくるのだけど、破たんすることなく華麗に痛快に天空まで突き抜けていく。もうどうなっちゃってんの?って感じ、狂気が辿り着いた先はポップだったというか。つまり、携帯・スマホの時代に伝書鳩を飛ばす、それこそが自由と平和。そういうことだ(どういうことだ?)。

14. グラビティ(詞曲:ヨナフィ)
空高く飛んで行く伝書鳩を見つめながら、今度はその先にある宇宙に想いを馳せる。そして、マクロからミクロへ、最終的にコタツの上のミカンに着地するのが泣ける(意味不明)。大なり><小なりの続きはこれからだ!宣言と受け取った。


ご清聴ありがとうございました。とにもかくにもこんなにユニークなポップアルバムはそうそう出会えないので、一人でも多くの音楽愛好家の方に聴いてもらいたいですね。最後に、以前描いた妄想7インチジャケ「ハトなんですが/ハカナシ」を(もしかしてアルバムジャケットのアイデアになったんじゃないだろうか?)。マジでドーナツ盤で聴きたい!

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