レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

【祝!『60』リリース記念】 一色進の昼フリーペーパー掲載コメント

10/7に一色進さん(ジャック達、シネマ)の2ndソロアルバム『60』がめでたくリリースされましたね。皆さん、もうゲット済みでしょうか?これがまさかまさかの流行りのEDMに挑戦した意欲作を超えた怪作ポップアルバム!で、一色さんの辞書に円熟という言葉はありません。尊敬。我が家では当然のごとくヘヴィーローテーションですよ。twitter上でも『60』中毒者がチラホラと...さぁ、そこのあなたも。

アルバムについての感想はもうちょっと聴き込んでから必ず書きますが、その前に。ここでは、新作『60』発売記念で、というのもおこがましいですが、先月9/5に横浜の黄金町試聴室その2で開催された一色進ファンによる自主企画イベント(クレイジー!素晴らしい!)【ONE COLOR⇒60 嫌いになりたくない~一色進の昼~】で配布されたフリーペーパーに寄稿したコメントを掲載してみます。主催者の方より字数無制限で好きなように書いてくださいとのことだったので、思い切り想いの丈を書きました。長いです、カッコつけてます。

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“おいで皆さん聞いとくれ オイラしがないロックンロールバンド”(タイツ「最低さ」)

一色進さんは私が生まれる前からバンドマン、今も変わらずバンドマンで、きっとこれからもバンドマン。一時期バンドマンから足を洗って直木賞作家(!)になろうとしたそうだが、宙GGPキハラさんの「オレをタイツに入れてくれ」泣ける勘違い発言がきっかけでジャック達結成。ロックの神様が一色さんを手放さなかった、ということなのだろう。ありがたい。そのおかげで私は一色さんに出会えたのだから。それは2005年のこと、何となくマンネリ感があり新鮮なロックに飢えていた頃。ブログ仲間の熱烈お薦めで買ったジャック達の1stアルバム『MY BEAUTIFUL GIRL』にハートをむんずと掴まれ、直後に観に行った難波ベアーズでのレコ発ライヴ。目の前で轟音で鳴らされるロックとしか言いようのないロックにシビれまくり、決して多くはないお客さん相手でもしっかり大爆笑を獲る一色さんの渾身のMCに涙。アンコールに演奏したのはタイツの「デイライト」だった。興奮冷めやらぬ帰り道、ベアーズを飛び出て全速力でバス乗り場へ向かう夏秋文尚さんの後ろ姿を見つめながら、ジャック達を追い続けることを心に決めた。だなんて大げさだが、それ以来ジャック達にタイツにシネマと一色さんのロックにいつも夢中だ。

私にとってロックとは、情けなくて物憂げ、ちょっぴりダサくて滑稽で、ロマンチックで女々しい、でも最終的にはカッコイイ音楽である。というのをジョンにディランにヤングやレイなどのロック偉人たち以上に、一色さんに教えてもらった。とりわけ一色さんのロックは人間を余すことなく描く。決して生きていくことなんてキレイじゃない、歪なんだよというメッセージ(だと思い込んでいる)は、頑張れとか夢を持てとかそんな安直な励ましよりも、骨身に沁みる。そうだ、歪と言えば、一色さんのアノ歌唱だ。正直、この世にもあの世にも一色さんより上手いボーカリストは無数にいるだろうが、一色さんのように歌える人はどこにもいない。ヘタウマなんて生ぬるい、30回聴けば突如として最高のロックボーカル。人生の可笑しみや悲哀に満ちたファニーボイスは、何だか時代に取り残されたピエロのようだ。放っておけない。タイツに「ノンジャンルのクラウン」という泣ける名曲があるが、“ジャンルのない道化師”、まさしく一色さんを言い表している言葉だと思う。そんな一色さんが女の子にもてあそばれるラヴソングを歌うと、見事にリアリティーをもって胸に響くものだから、私はイチコロなのだ。もはやラヴソングなんて腐るほど歌い尽くされているのに、一色さんのラヴソングはいつでも鮮やかにグッとくる。どうか生涯ラヴソングライターでいてもらいたいものだ。

どのバンドでも一貫して、60's~80'sブリティッシュロックの酸いも甘いも知り尽くしたソングライティング、そこにいかがわしいB級臭をツーンと匂わせるのが一色進節だろうか。ニセモノのようなホンモノ。その絶妙で巧妙な面白味に気づくと、もう抜けられない止められない。という造りになっている。何より“気づく”ことが重要、いろんな意味でレアな存在だ。ストレンジ・デイズ誌(2014年4月号)でのインタヴューで飛び出した「だってオレを見つけてないだろ?」という痛快極まりない名台詞にその通り!と膝を打ちながらも、見つけてほしいけどそんな簡単に見つけられても...知る人ぞ知る、知らない人は知らない、それはやっぱり寂しいよね...もしも特大ヒットなんかしたら、正気なのか?と世を憂うのだろうな...全くもってややこしいファン心理であるが、この拙文を読んでいただいている一色ヘッズの皆様もきっとそうでしょう。とにかく、何の因果か私もあなたも一色進を発見した!発見してしまった!?からには、愛さずにはいられない、嫌いになりたくない。還暦を迎えてますます輝きを増すロック界の秘宝、一色さんのカルトな快(怪)進撃はまだまだ続くのだから。うかうかしてられない。