レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

西村哲也&ポークパイハッツ/福岡史朗@拾得 2015.6.12

観てきました西村哲也&ポークパイハッツ定期(と言ってもいいでしょう)拾得ライヴ。前回の3月はイガキアキコさんが初バンド参加&大田譲さんがピンチヒッターを務めた激レアなワンマンでしたが、今回は東京から福岡史朗さんをゲストに迎えた2マンです。これまで西村さんと史朗さんは関西でも関東でも何度も共演はあるので、すっかりお馴染みと言ってもよいでしょうね。グッドミュージック絶対安心保証。この日の京都は磔磔細野晴臣さんのライヴもあり、多くの音楽好きはそちらに流れていったかもしれませんが、きっと内容なら負けていませんよ!なんて強気に言ってみたり。

今回の福岡史朗さんは完全ソロ。拾得のアンプではなく、いつものランチボックスのミニアンプでエレキギターを鳴らします。小さいお店の狭いスペース(音凪のご夫妻もサロンド毘沙門のマスターも来られてましたね)で演奏しているのを観ることが多く、いつもより広めのステージで落ち着きなく(笑)動き回りながらギターを弾いたり、(デカくは無いけど)大きな音量で聴くロックンロールは何だか新鮮であります。ほとんどMCは無く次から次へと矢継ぎ早に演奏される(独りだから早く終わらせたい!?笑)ので、セットリストは覚えきれませんが、新作『ROADSTAR』の曲を中心にあとは近年の代表曲をいくつか。いつも感じることですが、史朗さんの弾き語りは、ギターを弾いて歌っていても、”弾き語り”という言葉がまるでしっくりきません。リズムの緩急の付け方が独特で、とにかくパーカッシヴに跳ねまくるので、一人でもバンド演奏のように聞こえます。文字通りのリズム&ブルース。興奮せざるを得ない「ロードスター」に「ジェロニモ」に「朝のステーキ」に「ライオンメリー」、そして曲芸のように指が動き回る必殺の「クラクション」。盛り上がるだけでないですよ、「たまさかの町」はホンマええ歌やなぁとしみじみホロリ。ステージラストは、史朗さん曰く”(ギターの)達人”西村哲也さんを招き入れ、「冬のツバメ」「余白」をセッション。『Let's Frog!』収録の2曲ですが、レコーディングでも西村さんがギターを弾いています。そもそも『Let's Frog!』の曲をやること自体が珍しく、ましてや西村さんとの生演奏は本邦初公開、両者の大ファンの私はそれだけで落涙ものです。西村さんはそのレコードのプレイを忠実に再現していたと思うのですが、自分が想像していた以上にスゴイことをやっていて驚愕。特にムーディーな「余白」がもう...うっとり熱く見入って聴き惚れていました。何と言うか音の余韻で聴かせるギター、セクシー極まりなかったです。嗚呼...。

Let's Frog

Let's Frog

そして、西村哲也&ポークパイハッツ。今回のメンバーは、レギュラー・ベーシストの中島かつきさんが復帰(やはりかっちゃんのベース&コーラスはポークパイハッツらしさの肝)、イガキアキコさんは引き続き参加していますが、前島文子さんが米国へ旅に出ている為に不参加で、ドラムレスの変則的な編成。西村「いつも暴れると思わないでくださいね。今日は歯で弾いたりとかしませんから」宣言も飛び出したように、アコースティックでしっとりした雰囲気でした。なので選曲は終始メロウだし、西村さんはフォーキーな感じでと仰っていたのですが、観ている私はなぜだか全体的にプログレを(結構強力に)感じました。ライヴ後にかっちゃんにその旨伝えたら、確かにそうかもと。イガキさんの自由に泳ぐヴァイオリンがそう感じさせるのか(本人はそんな気無いと思いますが)、アコースティックがゆえに、却って西村さんのプログレ気質が浮き出てきたのか。また、大前チヅルさんのキーボードプレイがいつにも増して多彩で、いろんな音を出していたのも大きいのかも。私だけかもしれないですけど、「再会」でキーボードから大正琴のような音が聞こえてきて、奇妙な和テイストを帯びていたように感じました(ローラ・ニーロ和楽器を取り入れた歪んだエキゾ感漂う曲がありますけど、ああいう感じというか)。他にも今までと違うと感じたのは「キャンディ」、ヴァイオリンが入るからかバート・バカラックみたいなソフトロック調でしたね。イガキさんは前回に比べるとアグレシッヴさは抑え目でしたが、その分エレガントな旋律を奏でていました。そんな麗しい演奏が続く中、西村さんの尽きない快獣ブースカ話で場が和んだところで後半戦に入り、前もって予告されていた新曲2曲を初披露してくれました。西村「面白い曲だと思う」確かに1回聴いただけではまだはっきりと全貌が掴めてないですが(もしかすると西村さんご自身も)、これまでに無い雰囲気の不思議な魅力のある2曲であるのは間違いないです。(敢えて曲名は伏せますが)「新曲1」はちょっとジャジーな感じがあり、「新曲2」は大前さん曰くELP「賢人」みたいですねと(実際は...)。いよいよ次は禁断のプログレアルバムになるかもしれないという勝手なワクワク感が湧いてきましたが、果たして。今回はこの編成なので、ドラムが入るとまた全然違うものになるだろうし、おそらく曲自体もこれから変わっていきそうなので、ライヴでどんどん化けていくのが楽しみですね。派手さはないけれど、曲の良さをじっくり味わえたのはもちろんのこと、これからの展望も含めて楽しく嬉しい発見がいろいろあるライヴでした。次回の定期拾得ライヴは9月27日、その時は西村さんに暴れてくれることを期待します(笑)。

福岡史朗
福岡史朗:Vocal & Electric Guitar

西村哲也&ポークパイハッツ】
西村哲也:Vocal & Electric Guitar
大前チヅル:Keyboards & Chorus
中島かつき:Bass & Chorus
イガキアキコ:Violin

セットリスト(順不同):運命の彼のメロディ、ケヴィンのブルース、MOONSHINE MELTING TOY、悲しみのキトゥン、キャンディ、再会、新曲1、新曲2、ドラの受難、ドアは開けたまま

f:id:keisuke6:20150614145552j:plain
この日も朝帰り...イケナイ