レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

三匹夜会(ライオン・メリィ+西村哲也+熊谷太輔)@京極ダイニング 2015.5.4

思い起こせばちょうど昨年のゴールデンウィークでしたね、大阪の音凪で西村哲也&熊谷太輔デュオのライヴを観たのは。確かその前にたまたま熊谷さんが音凪を訪れていて、たまたま店内に西村さんの『運命の彼のメロディ』がかかり、気になった熊谷さんがこれ誰ですか?と聞いたら西村さんで、勢いで酔いにも任せ西村さんに電話して急遽ライヴを決めたという結成秘話がありました。それから昨年末には絵本カフェholo holoでイガキアキコさんを加えたトリオ編成での素敵なライヴがあり(それがきっかけで西村さんのバンドにイガキさん加入)、そして、今回は満を持してライオン・メリィさんを迎え豪華トリオの初ライヴが京都の京極ダイニングで行われました(翌日の大阪編は浦朋恵さんのお店DIDDLY BOWにて)。山口のメリィさんは戸川純さんのサポートで東京から、東京の熊谷さんは沢田研二さんの劇伴奏で広島から帰る途中、そのちょうど真ん中の京都に西村さんがいたというグッドすぎるタイミング。メリィさん「5時間前に結成して明日解散します」、奇跡的に儚いロックバンド“ライオンと熊と私”(メリィさん命名)。

会場の京極ダイニングは文字通りダイニング。ライヴをやるのが3回目だそうで、スタッフさんの応対ははまだ手探り状態な感じではありましたが、スペースは結構広々としていて、前方にはステージが設置されています。コンクリ造りなので音はよく響きます。お、ステージをよく見ると後ろにローリング・ストーンズ「シーズ・ア・レインボー」のシングル日本盤(メリィさんが400円で買ったそう。めちゃ安い、普通は2~3千円くらいすると思います)が飾ってあります。19時スタート。開演前のビール2杯で酔いと夢見心地でメンバーがステージに上がってくるのをうっとり見ていると、メリィさんにコソッと写真を撮られた気がします(笑)。この日の西村さんはアコースティックギターのみ、メリィさんはキーボードとアコーディオン、熊谷さんはパーカッション+カホンという楽器編成。1曲目はメリィさんが歌うサンタナのカヴァー「ストーン・フラワー」でスタート、いきなり渋ぅ~。スカスカながらもラテンなリズムがめちゃグルーヴィーで一瞬で引き込まれます。その次はメリィさんオリジナルの怪しげなジプシー・ソング「砂漠の魔法使い」だったかな(うろ覚え)。ライヴの構成は、メリィさんと西村さんが2曲ずつ交互に歌うというスタイルで進んでいきます。メリィさんはカヴァー曲中心で、西村さんはオリジナル曲を演奏していました。これまで何度もいろんな編成で聴いてきた『運命の彼のメロディ』の曲たちですが、西村さんは演奏者のアイデアをかなり尊重されるタイプだと思うので、編成ごとに表情が変わって飽きることなく楽しいです。とりわけメリィさんも熊谷さんも引き出しが多いので、曲によって何が飛び出してくるか読めません。例えば「再会」という静かな曲では、メリィさんはキーボードでかすかに聞こえるリズムボックス的な音を出しながら、アコーディオンでそっと色付けをしていました。「ケヴィンのブルース」だと、メリィさんはキーボードでシンセベースを弾き、熊谷さんはオリジナルとは違うボソッとつぶやくコーラスをつけていたり。あ、コーラスと言えば「MOONSHINE MELTING TOY」も、熊谷さんだけでなくメリィさんもムーンシャインムーンシャイン♪と歌っていたのが妙に印象に残っています。そして、西村さんコーナーの最後はまさかまさかの「POO」!思わず客席の西村ファンもどよめきましたよ(メリィさんがやりたいって言ったそう)。ソフト・マシーンに影響を受けたという変態インストナンバーを三人でしかもアコースティック(熊谷さんはカホン+段ボール箱)で、まるで暴挙だと思いましたが、これが意外にもというか異様に白熱した演奏で大興奮!いやあぁ~~~~~素晴らしかった。

唐突ですが、ここでメリィさんによる西村哲也評「哲っちゃんは見た目はこうでも、心は14才だから。漫画とか映画とか、今だに14才のように感動できるっていうねぇ。外はカリッと中身はジューシー(14)」とっておきの駄洒落が飛び出ました(一色さんを彷彿とさせる)。

さて、そんな愉快なメリィさん、前もって予告していたスティーヴ・ミラー・バンドのカヴァー曲は「ジョーカー」(大好き!)でした。曲自体は予想通りでしたが、内容は予想を超えるもので、メリィさんがオリジナル英語詞の発音イントネーションに似た日本語歌詞をつけている(サビはオリジナルで歌っていると思って一緒に口ずさんでいたら、そこも日本語詞だった)のですが、それがもう何と言うか絶妙で、一聴デタラメっぽいんですけど、詞の世界を全く損なっていない、もうとにかく絶妙で、スゴイ!天才!としか言いようがないのです。ストーンズ「シーズ・ア・レインボー」(改めてなんていい曲なんだ!)にしてもデイヴ・リー・ロス「ジャスト・ア・ジゴロ」(ジャスト9時頃?)にしても同様、笑いながら感動に打ち震えていました。メリィさんの素っ頓狂で愛嬌のあるボーカルも最高なんですよねぇ(お茶目なレオン・ラッセルだわ)。メリィさんラストは「ファーマー・ジョン(はまちゃん)」でR&B魂大爆発でした。そして、最後の最後に最大のハイライト、これまででもただでさえ見どころだらけ(他にも熊谷さん大活躍のアフリカンセッションとか)なのに、なんとまぁこの日の為の特別メドレーが用意されていました。西村「僕たち三人を繋いでくれたメトロファルスや好きな歌を」メリィ「なんでメドレーにしちゃったんだろう」ということで、米の歌~あったかいんだからぁ(クマムシ)~オクトパス・ガーデン(ビートルズ)~魔法の黄色い靴(チューリップ)~米の歌!あわやグダグダ寸前(メリィさんがあの手振り付きで歌うクマムシで腰砕け)でしたが、ほっこりした曲メドレーでみんなが幸せ一杯になって幕を閉じました。アンコール無しと分かっていても鳴り止まない拍手。翌日の大阪も盛り上がったようで、これで解散しちゃわないことを祈ります。LONG LIVE ROCK!!
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↑敢えてブレてる写真を。左から、熊谷太輔さん、西村哲也さん、ライオン・メリィさん

※ちなみに演奏された西村さん曲は、「再会」「運命の彼のメロディ」「POOR BOY」「キッチン・ミュージック」「牛の群になって走る」「MOONSHINE MELTING TOY」「ケヴィンのブルース」「POO」だったかと(順不同)