レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。'79年生まれ。

【私の好きな歌026】「Lonesome Lover」Steve Ferguson

平成31年3月2日、梅田ムジカジャポニカにて嶌岡大祐ワンマンライヴを観た。嶌岡大祐さんとは...2002年神戸発ピアノトリオロックバンド”SGホネオカ”でデビュー、FM802でパワープレイされたり人気を博したが、バンドは上京を機に解散!?東京ではソロ活動を行いながら、鍵盤奏者としてライヴやレコーディングでゲントウキ一十三十一など様々なアーティストをサポート、その腕が認められ何と!鈴木茂『LAGOON』セッションにも呼ばれるという快挙(最近でも、昨年末の紅白歌合戦ユーミンのバックで涙モノの演奏をしていたあの鈴木茂+林立夫+小原礼のSKYと一緒にセッションしたりと交流は続いている)、2014年には1stソロアルバム『白いベンチ』を発表した。近年、関西に戻ってきてからは、西村哲也さんの京都のバンド”西村哲也と彼のラビッツ”に参加...という私が勝手にまとめた略歴。SGホネオカというバンド名は聞いたことはあったが、実際に彼の演奏を初めて観聴きしたのは2016年12月23日、拾得での西村哲也と彼のラビッツのライヴ。彼は私よりも2つ年下同世代の若武者だが、新加入とは思えないグルーヴィーかつエレガントにガンガン弾き倒す姿に感動、もはや西村さんが暴れる必要もないくらい。その上、彼のソロナンバーを1曲「ゴールデンベイビー」を披露してくれたのだが、いきなり始まる饒舌な前口上に意表を突かれるも、素晴らしくポップでめちゃくちゃゴキゲンな歌と演奏にまるで70年代のスティーヴィー・ワンダーのよう!驚き、参りました。彼のジャジィでソウルフルな音楽性とバンド演奏との相性もバッチリで、その瞬間に強く抱いたこのバンドでソロライヴをやってほしいという願いが、ついに叶ったこの日の思い切ったワンマンライヴ。家族友人知人関係の人たちや、SGホネオカからの根強いファン、私のような彼のラビッツ経由で知ったファンも混ざり合い、立ち見が出る満員御礼ぶり(彼のラビッツでこんなにお客さんがいたことないのでちょっとビビる・笑)で大いに盛り上がった。嶌岡大祐(Vocal, Keyboard, Piano)、西村哲也(Electric Guitar, Vocal, Chorus)、前島文子(Drums)、木田聡(Electric Bass)、ほりおみわ(Chorus)という関西屈指の百戦錬磨凄腕メンバーによるハートフルで歌心溢れるグルーヴに支えられて、これでもかと気持ち良く歌いに歌って弾きに弾いての熱演3時間。SGホネオカ時代の若気の至りイキってたんやろうなと思わせるどこか屈折したポップナンバー(西村さん曰く、青山陽一さん並みのややこしさ)から最近の日々の生活から滲み出たシンガーソングライター然りとした深みのあるしっとり聴かせるバラードまで、まぁ時に挟まれる歴史モノがご愛嬌というか謎ではあるが(笑)、底知れぬ魅力の嶌岡大祐ワールドを心行くまで堪能した。彼がMCで言っていた「ライヴハウスに通うようなコアな音楽好きの人もそうじゃないライトな音楽好きの人も一緒になって楽しめる音楽をやりたい」という思いにグッと来たし、きっとやれる人だと思う。打倒、星野源や!?出来ればこのメンバーで最高のシティポップスアルバムを作ってほしいが、それはまぁチクチク言っていこう(笑)。それはともかく、これで味を占めたのか?早速、5月に次のバンドライヴも決まったようで、嬉しい楽しみがまたひとつ増えた。

↑ ムジカジャポニカさんのツイートより。SGホネオカ時代のベン・フォールズに捧げる?最高に盛り上がる名曲「BENに首ったけ」の映像。熱く爽快な演奏は、きっとBENも首ったけでしょう。

以前、嶌岡さんに、西村さんと一緒に演奏する時にどういう風にギターを弾いてほしいとか何か要求しているのですか?と訊いてみたら、「基本的には自由に弾いてもらいますけど、デヴィッドTウォーカーのような感じでとは言ったかなぁ」と答えてくれた。なるほど確かに、西村さんはいつも以上にメロウなオブリガートを決めていたように感じたし、珍しくフェイザー?を使って音色自体にも甘やかさを出す場面もあったりとデヴィッド哲也ウォーカーしてた。...とか言って、実はデヴィッドTウォーカーがギターを弾いているレコードをそんなに持っていなくて、ややぼんやりとしたイメージなのだが...。私の頭の中にあるデヴィッドTのプレイスタイルのイメージの大半を占めているのが、米国西海岸ロックの名門アサイラム・レコード唯一の黒人シンガーソングライター&ピアニストのスティーヴ・ファーガソン(Steve Ferguson。NRBQの初代ギタリストとは同名異人)のタイトル通りの切ない名曲「Lonesome Lover」で弾いているムード。手数は多くないし音量も控えめだが、スティーヴのソウルフルというよりは人間味のある歌声で感情の起伏の激しい狂おしい歌に呼応して、いちいちクールにメロウなフレーズを繰り出すデヴィッドT、その余韻や弾いていない間合いまでメロウな頭から爪先までトロトロの全身メロウ職人だ。アルバム『Steve Ferguson』でデヴィッドTが弾いているのはこの1曲のみなのに、異常に印象に残る。ロマンチックな寂しさに浸りたい時は、この曲を聴くのです。

「Lonesome Lover」 Steve Ferguson
(Steve Ferguson)
from 『Steve Ferguson』(1973)

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『Steve Ferguson』ジャケットより。薔薇の似合うロンサムな男。

※滑らかにグルーヴするエド・グリーン(Drums)&ウィルトン・フェルダー(Bass)のリズム隊も最高のレコードだが、彼のラビッツの前島文子&木田聡リズム隊も負けていないよ。是非、西村哲也と彼のラビッツのライヴも観に来てほしいです!

【私の好きな歌025】「Wide Eyed And Legless」Andy Fairweather Low

平成31年1月27日。浪速のグッドタイムフォークデュオ「冬支度」が結成10周年を迎え、それを記念したワンマンライヴが大阪の雲州堂で行われた。お祝いにかけつけたお客さんが次から次へと立ち見が出るくらいの超満員で、驚いたのと同時に愛されてるんだなぁと感じちょっと涙。地道に活発なライヴ活動や冬支度の二人の人徳が為せる業なのだろう。ライヴ自体も本編以外に開場から開演までの藤江隆&中川裕太ギターデュオによる達者すぎる生演奏BGMや幕間の斎藤さん&ザンネンズもりべさんの麗しいフルートデュオという新鮮な出し物で飽きさせない、会場には過去の企画イベントのフライヤーの展示だったりメンバーや知人友人からのコメント(僭越ながら私も寄稿しました)を載せた冬支度新聞の配布など、隅から隅まで気持ちの行き届いた素晴らしく充実したワンマンライヴだった。なかなかこういうライヴは味わえない、ホント大したものだ(偉そうな)。本編では、最初は二人だけのオリジナル冬支度で始まり、さすがに緊張気味だったけども、歌心溢れる渡瀬千尋さんのドラムスや藤江さんのエレキギターという心強い味方が加わってからは徐々にいつものレイドバックした緩やかな冬支度。MCでも10周年分の想いを大いに語るということもなく、感謝の言葉は忘れず次のライヴの告知をしっかりするいつもの冬支度(笑)。もちろん特別なライヴなのでファンとして感慨に耽る場面もあるけども、それよりも何よりもシンプルに彼らの楽曲の良さや演奏の良さ(最初期のシティポップ風?「週に三日は自己嫌悪」めっちゃええ曲やん!)、どこかにいそうでいない特異な音楽性に改めて感動した。今の時代に私の好きなこういう人間味と温もりのある70年代的なサウンドを鳴らしてくれる喜び、私にとって大切な音楽である。10周年おめでとうございます!これからもヨロシクお願いします。また飲みにも誘ってください(笑)。

冬支度with渡瀬千尋藤江隆「週に三日は自己嫌悪」演奏シーンより。藤江さんの切れ味キレキレなトライアングル!

そして、今回のライヴで、私は冬支度新聞への寄稿と共に、フルートデュオが準備している間や終演後に流すBGMの選曲を担当させてもらった。彼らの企画イベント名に倣って、靴音までメロウな曲をたっぷり25曲。これまでも何度か会場BGMの選曲はしたことあるけど、初めて会場で聴いた。60年代~70年代の洋楽オンリーでアナログ盤起こしの極めてアナログに近い音で、もちろん自分の好きな曲ばかりだし、我ながらなかなか心地良い選曲だった自画自賛(笑)。ミーターズ「Loving You Is On My Mind」のベースがめちゃ太かったなぁ。それで、そのプレイリストの一曲、今年初めて買ったレコードで気に入ってずっと聴いている曲がアンディー・フェアウェザー・ロウ「Wide Eyed And Legless」。アンディーは60年代にAmen Cornerというモッズバンドで活躍した人で、近年ではエリック・クラプトンのサイドメンとしていぶし銀のギターを弾いていたり(観たことないので想像)。70年代のソロアルバムもスワンピーな渋みと英国人らしいポップさが混ざり合った味わいですごくユニーク、コクを増量したポール・マッカートニーみたくブルーアイドソウルな歌声もまた最高なのだ。この「Wide Eyed And Legless」という曲は1975年に2ndソロアルバム『La Booga Rooga』よりシングルカット、英国シングルチャート6位まで到達したヒット曲。エレクトリックピアノやペダルスティールギター(B. J. Coleの演奏)にフェイザーをかけたロマンチックで夢見心地なサウンドがとにかく極楽で、永遠に聴いていられる。こんなサウンドなのでさぞかしラヴリーなラヴソングなのだろうと曲名を見れば、目が広がって脚が無い!?...妙なタイトル。夜のリズムよりもグラスのリズムの方が強いなんて一節があるが、どうやら絶望から逃れる為に酒に溺れているアル中の男の歌らしい(違うかもしれないが)。即ち、メロウはメロウでも酔いどれのメロウであった。それでもウットリしてしまう、そんな男に共感する自分もいる...

Andy Fairweather Low『La Booga Rooga』ジャケットより。お手を拝借!?

「Wide Eyed And Legless」 Andy Fairweather Low
(Andy Fairweather Low)
from 『La Booga Rooga』(1975)

【私の好きな歌024】「Drift Away」Dobie Gray

明けましておめでとうございます!ようこそ2019年。今年は平成から次の年号へ変わるという大きな転換点を迎え、何やら激動の年になりそうなムードですが、当ブログは相変わらず良くも悪くも時代の流れに鈍感に、自分の好きなレコードについてマイペースに書いていきたいと思います。引き続き御贔屓に、よろしくお願いいたします。

さて、ちょっと振り返って昨年末の話。12/27難波の絵本カフェholo holoにて行われた三匹夜会のライヴが私のライヴ見納め2018でした。メトロファルス残党組のライオンメリィ、西村哲也、熊谷太輔という愉快なトリオによる愉快なライヴ。三人のゆる~い会話のやり取りはなんだかパンダを見ているような癒しがありながら、演奏はオリジナル、カヴァーの区別なくロック万国博覧会と言うべきジャンルの世界地図を縦横無尽に旅する実はスゴイ音楽なのです。今回のライヴの目玉は映画『ボヘミアン・ラプソディ』の人気にあやかり!?QUEEN「Killer Queen」のカヴァーで、西村さんがフレディ・マーキュリー(歌)とブライアン・メイ(ギター)を両方やるという離れ業を見せてくれ、大変に盛り上がりました。そして、アンコールの最後は西村さんオリジナルの名曲「牛の群れになって走る」で締めたわけですが、その曲の最後の最後に西村さんがアコースティックギターからエレキギターに持ち替えて、まるでニール・ヤングリチャード・トンプソンが合わさったかのような、文字通り泥沼を牛が群れになって押し寄せてくるロックとしか言いようのないギターソロを弾いてくれ、胸の奥深くからぐわぁと込み上げてきて心の中では号泣していました(4月末に左手指の骨折という大怪我でまともにギターが弾けない西村さんも知っていたので、より一層に感慨が...)。それともうひとつ号泣で言えば、大晦日NHK紅白歌合戦でのユーミンのステージ。「やさしさに包まれたなら」で演奏していたバックのメンバーが、鈴木茂林立夫小原礼松任谷正隆というほぼキャラメル・ママというバンドでもうその姿を観ただけでウルウルきていましたが、間奏での鈴木茂さんのストラトキャスターによる”あのギターソロ”で涙腺のダム崩壊...ポイントは違うところかもしれないけど号泣していたaikoの気持ち、分かる。年が明けて正月休みという文字は無く元日と二日は普通に仕事でクサクサしてましたが、この二つのギターソロの余韻で何とか前向きに乗り切りました。

思い返すと、私は歌よりもむしろギターの響きに泣くことの方が多いのかもしれません。歌は感情に届くまでに言葉を聴いて解釈するという作業が要りますが、ギターの響きはダイレクトに感情に触れますから。西村哲也さんも鈴木茂さんも代えがきかない特有の音とフレーズを鳴らすギタリスト、もちろん歌が真ん中にあってのギターということも誰よりも理解している方ですが、時に歌よりも詞の世界をよく表しているのではないかと思う場面も多々あるように感じます。お気に入りの歌手だけでなく、お気に入りのギタリストを見つけていると音楽をより深く味わえるのでオススメです(もちろん他のパートも)。

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Dobie Gray『Drift Away』

洋楽に目を向けてみると、昨年に再発見して夢中になったギタリストがレジー・ヤング(Reggie Young)です。1936年生まれアメリカはメンフィスを拠点に活躍、特に60年代末チップス・モーマンのアメリカン・サウンド・スタジオにてそのいぶし銀のギタープレイの数々で米国南部スワンプロックサウンドを創り出した立役者の一人。代表作はDusty Springfield「Son Of A Preacher Man」、Elvis Presley「Suspicious Minds」など、The Box Tops「Cry Like A Baby」の印象的なエレキシタールもレジーの演奏です。決してソロを弾きまくるタイプではないですが、オブリガートでギターの一音の響きだけでムードを演出することができる歌伴奏の奥義のような演奏。テレキャスターをメインに、カントリー風味の乾いた土臭い音とトレモロを効かせたロマンチックな音を絶妙にブレンドしたコクのある甘さにウットリ酔いしれます。そんなレジーの魅力が存分に味わえる曲がDobie Gray「Drift Away」(1973年発表。全米ポップチャート最高5位)、間違いなく70年代の代表作でしょう。歌っているドビー・グレイは黒人シンガーですが、バリバリのソウルというよりはソウルフルなスワンプロックシンガーという趣きで、「Drift Away」に付いている「明日なきさすらい」という邦題からも匂ってくるように、アメリカの演歌と言ってもいいようなコブシの効いた泥臭い熱唱が胸を打ちます。”俺にビートをくれ 魂を解き放させてくれ ロックンロールの海をさ迷って漂っていたいんだよ”(私の訳詞)というロックンロール讃歌、そのメッセージにもグッときて仕方ありません(作詞曲はMentor Williams、ポール・ウィリアムスの弟)。そして、その歌をその歌世界を傍で哀愁いっぱいに背中を押すレジー・ヤングのギター。孤独と力強さが混ざりあったイントロのフレーズからほんの少しタメて、歌に入る直前のとろけるようなメロウな響き一発で必ず涙します。ドビーはさらに”気分が沈んだ時は ギターの響きが心に入り込んできて 和らげてくれる”と歌っていますが、まさにレジーのギターがそうなのです。メロウ・マイ・マインド。

「Drift Away(明日なきさすらい)」Dobie Gray
作詞曲:Mentor Williams
from 『Drift Away』(1973年)

※「明日なきさすらい」は、同年に元ズー・ニー・ヴー町田義人が『白いサンゴ礁』というレコードで、ヤング101と共に安井かずみの日本語詞でカヴァーしています(編曲は木田高介)。ドビーにも負けず劣らずの熱唱で素晴らしい出来のカヴァー、愛聴しています。

※この記事をアップしてから間もなく1月17日にレジー・ヤングが亡くなったとの報せが...。そんなことになるなら書くんではなかったと思ったけども、生前に書けたから追悼文にならなくてよかったとも思う。彼の名演が記録されたレコードはたくさんあるので、これからもまだまだ聴くのが楽しみなギタリストなのです。私の心の奥底まで響く素晴らしいギター演奏をありがとうございます。

2018.11.11 『靴音までメロウに vol.28』冬支度with渡瀬千尋、藤江隆/rallypapa(チョウ・ヒョンレ)/スーマー@絵本カフェholo holo

チョウさんに楽しみにしていると言われたので(笑)、久しぶりにライヴレポートを書き留めようかと。昨日は11月11日の夕刻から、大阪のアコースティックデュオ冬支度が主催するイベント『靴音までメロウに』が大阪難波の絵本カフェholo holoにて、ラリーパパ&カーネギーママのリーダーrallypapaことチョウ・ヒョンレさんと横浜からスーマーさんを迎えて開催されました。継続は力なり、イベントは今回でなんと28回目、冬支度は今年で結成10周年(!!)なので、単純に1年に2~3回はやっているという計算。ひとつイベントをやるだけでも準備や宣伝や集客とかかなり大変だと思うのですが、地元関西以外のアーティストも積極的に呼び、いつもフレッシュな組み合わせで楽しませてくれます。今回は特に靴音を鳴らしながら弾き語るメロウな歌心のあるシンガー&ソングライターが揃い、そのイベント名にふさわしい一日になりましたね。客席も賑やかで和やかに盛り上がりました。ミックスジュース風味の西成の地ビール「新世界ニューロマンサー」も美味しく、歌に人にお酒に酔える喜び。

2018.11.11(sun) 16:30~
『靴音までメロウに vol.28』@難波・絵本カフェholo holo
■ 冬支度with渡瀬千尋藤江
 安田支度 vocal, a.guitar, mandolin
 斎藤祢々子 vocal, accordion, flute
 渡瀬千尋 percussion
 藤江隆 e.guitar
■ rallypapa(チョウ・ヒョンレ) vocal, a.guitar
■ スーマー vocal, a.guitar, banjo

トップバッターは、主催者の冬支度with渡瀬千尋藤江隆。このカルテット仕様の冬支度は今年のライヴ納め。何度も演奏を積み重ねてきた成果、インスト曲でゴキゲンに肩慣らしして始まる堂々としたステージング。冬支度のフォーク&ソフトロックな独特で完成されたポップス(と言っていいと思う)をパーカッション渡瀬千尋さんとストラトギター藤江隆さんが職人的な味付けでググッと歌物語の風景を広げてくれます。歌と音量とリズムのバランスも良く、思いがけずかぶりつき席でアンプの目の前で観ていた私は、モノラルレコードのように一塊になった4人の音を心地良く身体に浴びていました。今回は、私の大のお気に入り「初雪」が聴けたのが何より嬉しかったです。安田支度さんのジェイムス・テイラー風の洒落たメロディーとアコースティックギターのリズム。斎藤祢々子さんの歌の続きでフルートに移るところがとても好きで、初雪がハラハラと舞い降る様子が見える歌詞も素敵だし、斎藤さんの魅力がよく出ている曲だなぁと思うのです。千尋さんの小粋なパーカッションが入ればますますジェイムス・テイラー色、そこに藤江さんのトロトロのエレキギター荒井由実「卒業写真」の鈴木茂ばり)が重なり、それこそザ・セクションのようなバンドの艶やかな音の粒立ちで、ウットリしました。メロウという意味では、もしかしたらこの日の個人的ハイライトだったかもしれません。

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冬支度のレパートリーが終った後、そのまま2番手のチョウ・ヒョンレさんを呼び込み、一緒にラリーパパ&カーネギーママの「白い雲の下」をセッション(安田さんはマンドリン)。私はラリーパパ&カーネギーママは2nd『dreamsville』から聴き始めたので、思い入れが...なんて感傷的になることはなく、ただのんびりとリラックスしたリズムに身体が揺れました(チョウさんが間奏で冬支度にアシッドフォークな感じで!とハードな要求してた・笑)。冬支度の二人は元々ラリーパパ&カーネギーママのファンとして出会い、10年前にラリーパパが(第一次)解散してから何もすることなくなって、どうせなら自分らでやろうと冬支度を始めたそうです(すごい理由)。ちなみに、私もラリーパパのファンとして安田さんとは知り合っていて(斎藤さんの存在も知っていた)、何年か後にステージで演奏しているのを観てビックリしたのでした。そして、いよいよ機は熟した!念願の初共演セッションの後は、チョウさんのソロコーナーが続きます。そのラリーパパが解散を発表した直後から、チョウさんはソロ活動を開始、その頃のライヴも何度か観ています(西村哲也さんとの共演とか。実は西村さんにチョウさんを薦めてたり)が、チョウさんの弾き語りを観るのはそれ以来になるのでしょうか。何を偉そうにと怒られるのを承知で、当時のチョウさんは歌は当然のごとく圧倒的に素晴らしいのですが、ギター演奏がちょっと不安定でハラハラして観ているところがありました...が、今回はそんな不安は微塵も無く、ギターの響きと一体となって、歌が淀みなくスコーンと入り込んできて、とにかく痛快でした。ザ・バンドのリヴォン・ヘルムと堺正章が混ざったようなカラッとした人情味があるソウルフルな歌声で、これでもかと伸びやかに歌い上げてくれます。ボサノバタッチの「枯葉のブルース」や70年代のホームドラマの主題歌が似合う歌謡曲ちっくな「グッドバイ」最高でしたね。ステージ後半、チョウさんがどれやろうかと曲を探しながら、あっ!と閃いて、これを一緒にやりたいんだけどと冬支度の藤江隆さんを無理やり引っ張り出して(笑)、「狼の好物は迷える子羊」をぶっつけセッション。藤江さんは全く知らないチョウさんのソロ曲だと思うけども、徐々に曲のことが分かってきてブルージーなオブリやソロをキめ始め、最後は自然とスライドに切り替えていた(元々スライドギターが大活躍する曲)のは流石!チョウさんも客席も大興奮していました。そんな興奮冷めやらぬ思いつきセッションの後でチョウさんコーナーの最後は、前もって用意していた(笑)トリのスーマーさんとのセッション。いつか出会えると思っていましたけど、ついに出会えましたね、とスーマーさん。曲はラリーパパ&カーネギーママ「ふらいと」、スーマーさんのカラカラと転がるバンジョーが風を吹かし、今なら飛べるような気がしました。

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しばし休憩してから、スーマーさんのソロコーナー。2年前に音凪で冬支度with藤江隆との共演ライヴで観た以来のスーマーさん。アコースティックギターバンジョーの弾き語りで、ホーボーソングを。人生経験豊富な!?含蓄のある深みとコクのある歌声、でも、どこか軽妙なところがあるのが魅力的。曲自体もそうで、日本的なじめじめと湿ったフォークソングにならないのが私の好みです。特にバンジョーの弾き語りはユニークで、何気ない旅でも珍道中になる感じがしますよね。それにしてもバンジョーという楽器は弦を弾いてああいうパーカッシヴな音が出るのが不思議です。ライヴで聴いた方からお葬式に合いそうな歌ですねと言われたらしい「ちょいと寂しい夜の歌」は確かにお葬式に流れたらグッとくるような...お葬式でグッとくるというもおかしいですが、”ちょいと”泣けるというのが何かお葬式にイイんですよ。その曲の前だったでしょうか、いよいよスーマーさんも閃いてしまいました。この曲を一緒にやりたいんだけどと冬支度の藤江隆さんを無理やり引っ張り出して(笑)、なんと!かまやつひろしの大名曲「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」をぶっつけセッション。藤江さん曰く”ちょっとは(曲を)知っています”ながら、最初から最後まで熱くなる素晴らしいフレーズを連発!痺れまくりました(天国のムッシュに聴かせたい)。この日の藤江さんの装いはヒョウ柄キャスケットを被ったまるでデヴィッドTウォーカーのようで、冬支度では演奏もまさしくデヴィッドT的な引きの美学を見せてくれましたが、こういったぶっつけセッションでは思わずロック魂がドバッと噴出する瞬間が見れて、心の中では女の子のようにキャーッ!と叫んでいました。客席全体もこの日一番の盛り上がりでした、ズバリ!今宵の裏テーマは藤江隆祭り2018。最後は冬支度のみんなを招き入れて、「人生行きあたりばったり」を行きあたりばったりではないセッションでほのぼのした気分。そして、アンコールは更にチョウさんが加わり出演者全員でロジャー・ティリソン「ロックンロール・ジプシーズ」(日本語カヴァー)を。アコースティックギターエレキギターマンドリンバンジョーと弦楽器が勢揃い、斎藤さんのフルートがまたジプシー感を演出し、4人のボーカル回しもちょっと感動的で、幸せな大団円となりました。

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↑大活躍の藤江さん、チョウさんもスーマーさんも藤江さんのギターがもっと見たいからという理由で呼んだそうです。あ、千尋さんの写真無くてごめんなさい...彼女も歌バッキングのツボを心得ている素晴らしいドラマー&パーカッショニストです。独創的でもあり、ミカンのシェイカーを指で叩いて?愉快なリズムを出していました。

打ち上げの席も実に楽しく、この日は人と人が繋がっていく嬉しさを感じましたね。ここからまた面白いことが起きていくのでしょう。

【私の好きな歌023】「ちゃんばらロックンロール」子供ばんど

10月8日なかい山での湯川トーベン/冬支度with渡瀬千尋藤江隆のライヴは何とも思い出深いものになった。冬支度・斎藤祢々子さんがトーベンさんの長年のファンで、いつか共演したいという想いがついに実った(とは言え、なんと!トーベンさんからのご指名であった)2マンライヴ。

湯川トーベンさんは1973年に神無月でデビューしてから今年で音楽活動45周年!子供ばんどエンケンバンドのメンバーとして知られる...なんて説明不要な偉大すぎるロックベーシスト。なので、怖い人でもおかしくないとドキドキしながらなかい山に向かったが、店の前でトーベンさんが冬支度メンバーと和やかに喋っている...良い人かもしれないと少しほぐれる。先行の冬支度with渡瀬千尋藤江隆のステージの時は、ここいい?と私の前の椅子にトーベンさんが座られ、彼らの演奏を楽しそうにしっかり観ておられる。冬支度がしつこく繰り出す終わりそうで終わらない謎のブレイクに、それを知らないトーベンさんは最初は罠に引っ掛かり間違えてフライング拍手をしてしまったが、次の曲では拍手しかけた時にブレイクに気づき手を止め「危ねぇ」と一言、最終的には後ろにいる私に向かって「終わった?」と確かめてから拍手していた(笑)。後で、トーベンさんのステージで曲の終わりに彼らの真似をして謎のブレイクを入れて「冬支度を観ていて、曲って終わらなくていいんだと思った」と呆れながら笑っていた。また、トーベンさんは浪速のエイモス・ギャレット藤江隆さんの滋味溢れるギター演奏を間近で観て感銘を受けたのだろうか、「こんなことやってたでしょ?」と藤江さんの真似をしてギターソロを弾くというお茶目さも。言わば世間的に無名の演奏家でも腕があればすんなりと認める懐の深さで、パーカッション渡瀬千尋さん(砂ずりモグモグ中)や藤江さんは何度も駆り出され無茶ぶりセッションさせられていた(最高でした)。MCの途中で冬支度・安田支度さんの顔をじっと見て「誰かに似てるんだよなぁ、誰だろう?」とつぶやくと、いっこく堂に似てると言われますと安田さんが答えれば「そうだ!いっこく堂だ。ああ、スッキリしたぁ」とそれ以来安田さんを「いっこく」と呼んでいた。そんなとっても気さくな方。トーベンさんの歌や演奏も一緒に歌おうと言われずとも思わず歌いたくなる親しみやすさと大らかさ、いやぁもう、でっかい人である。遠藤賢司さんが全幅の信頼を置くのもむべなるかな、好きにならずにいられない。

終演後の談笑の席でも、トーベンさんはどこの誰だか分からない私にも優しく接してくれた(酒をダラダラこぼしながら話しかけてすみません)。持参した子供ばんど「ちゃんばらロックンロール」のシングル盤とハート・オブ・サタデイ・ナイトのCDにもサインを頂いた、宝物である。「ちゃんばらロックンロール」は、数年前に今は無き神戸元町レコード屋リズムキングスで、レジ横のシングルコーナーを漁っていた時に、店のオヤジさんから「これ面白かったよ!」と薦められたシングル盤だった。映画『ちゃんばらグラフィティー 斬る!』の主題歌とエンディング・テーマ「Early Times Junction」(沁みるバラード)をカップリングしたもので割とレアなのだろうか(CD化されてない?)、熱心なトーベンファンに見せてもピンと来ていなかった。トーベンさんはシングル盤を眺めながら、「これは宇崎竜童の作曲でね、元々はマイナー調の完全な演歌だったんだよ。子供ばんどのメンバーみんなでどうしよう?と困ってねぇ...悩んだ末にハードロックにした」と教えてくれた。前代未聞のちゃんばらハードロック。トーベンさんのぶっといベースに乗って、ちゃんばらでの刀がぶつかり合うカキンカキンと鳴る甲高い音をギターで表現し巧みにアレンジに取り込んでいるのが秀逸...と真面目に語るのは野暮だろう。ただただゴキゲンでふざけた愛すべきナンバーである。

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「ちゃんばらロックンロール」子供ばんど(1981年3月)
作詞:島武実/作曲:宇崎竜童/編曲:子供ばんど

子供ばんど...うじきつよし(ギター・ボーカル)、谷平こういち(ギター)、山戸ゆう(ドラムス)、湯川トーベン(ベース)

※10月14日に京都五条のカフェすずなりでフリーマーケットがあり、敬愛するギタリスト&シンガーソングライター西村哲也さんが出品されているという噂を聞きつけ行ってきました。ちょうど西村さんも来られていたので色々お話ししたのですが、西村さんは大学生の頃に79~82年くらいまで京都サーカス&サーカスでぎゅうぎゅうの満員の中で子供ばんどのライヴをよく観たと仰ってました。ライヴが終わった後に、ドーンと子供ばんどと書かれたバンが近くの銭湯に止まっていたよ(笑)というエピソードも教えてくれました。

『sweet twilight』 roppen

長い一週間だった...。火曜の関西への巨大台風直撃。労働中に1階のフロアに水が浸入してきたと思えば職場付近は見る見る冠水し、これはヤバイと2階に全員が一時避難、窓の隙間から見た水浸しの光景に背筋が凍る...帰りは信号や街灯が消え真っ暗闇でドブ川を歩く場面もあった。今でも道の真ん中にコンテナが転がっている。翌日、欠勤していた同僚に大変だったよと言ったら「そもそも、行っちゃダメですよ」と返され、ハイ、その通りです。体力、精神力共に大ダメージ、いっぺんに口内炎が出来た。水曜もヘトヘトながら働き、帰ってからは木曜休みなので夜更かししていたら、北海道で巨大地震のニュース...もうどうなっちゃってるの?幸い生きているし、家も停電とかもなく無事ではあったので、結果私自身には大した被害は無かったのだけど、ほとほとに疲れた。

冠水によるドブ川で泥まみれになった足で駅から家までトボトボ帰る道すがら、私のiPodからふと流れてきたB.J.トーマス「雨にぬれたら」。もはや雨にぬれるどころの状況ではなかったが、バート・バカラックによる完璧なポップソングのあまりの美しさにただ聴き惚れた。その3分の間は現実なんかどこかに行って、音楽ってええなぁと単純に感動。少しだけ気分がシフトする、癒しとは違う何か。私は労働帰りのバスの中で、意図的にroppen「スイートトワイライト」をよく聴く。バスから見える夜の街の風景とまろやかに溶け込み、疲れた身体と心に沁み込んでくる。現実なんかどこかに行って、ただひたすら、メロウな名曲に沁みているメロウな俺、に酔いしれる。三文役者のような人間だが、映画やドラマの主人公になった気分、音楽聴いている時くらいええやないの。


roppen 「Sweet Twilight」MV

東京発ウッドストックサウンドを標榜するroppenの待望の1stフルアルバム『sweet twilight』は、表題曲のみならず、全体的にメロウな空気に包まれた、まさしくスイートでトワイライトな名盤だ。前作のミニアルバム『旅の途中』よりもバラエティに富んだ楽曲を聴かせてくれ、サウンドもグッと洗練された印象。フロントマン中村浩章さんの生々しいアコースティックギターとちょっと頼りなくも色っぽい歌声も前面に出てきて堂々と響き渡る、意外にハートは熱い。名人・渡瀬賢吾さんの歌心たっぷりのオブリとソロをキメまくるエレクトリックギターと松野寛広さんの水面を揺れる光の粒のごとく柔らかいエレクトリックピアノの響きはやはりroppen特有なメロウの肝。ジョー・ママのジョエル・オブライエン&チャールズ・ラーキーを彷彿とさせる新加入のドラムス竹川悟史さん(ex.森は生きている)&ベース橋本大輔さんのリズム隊による隙間を活かした熟練のグルーヴ心地良し。ゲスト陣の仕事ぶりも素晴らしく、山田竜輝さんのサックスはオトナのムードをムンムンに演出し、「みちかけ」での鳥羽修さんVS渡瀬賢吾さんの白熱のギターソロ合戦は愉快痛快で、dodoうちだあやこさんのコーラスは今作でもしっとり艶やかに花を添える。私は来年で40歳を迎える若さにかまけていられなくなってきて草臥れてきた(笑)年齢だが、ほぼ同世代の彼らの音楽&サウンドは、そんな自分にジャストフィット。勝手に同志と思ってます、嬉しい。

SWEET TWILIGHT

SWEET TWILIGHT

アルバムは軽やかなグッドタイムポップ「走馬灯」でスタート、影絵の馬がスキップするようなドラムにスライドギターがゴキゲンに歌っている。イントロから一瞬にして昼間から夜明け前へ、メロウすぎる名曲「スイートトワイライト」。間奏のエイモス・ギャレット風味の星屑ギターソロとラストのむせび泣くサックスソロに酔いどれ朝帰りのスイートな悲哀、うちだコーラスは酔っぱらいに優しい。二日酔いの寝起きは「曇り空」が似合う晴れないセンチメンタル、アコースティックギターのフレットをキュッキュッと滑るノイズが切なく響く。ニューオーリンズなリズムに乗ってはっちゃけるドンチャン騒ぎ「みちかけ」、切れ味鋭い憧れの鳥羽ギターを迎え撃つ渡瀬ギターの奮闘ぶりに注耳。そんな賑やかな興奮はすぐさま涙へと変わるロマンチックなバラード「小さな羽根」、溢れんばかりのロンリネス...にジーンときてウットリしていたらムーディー極まりないサックスが鳴り響いてきて背筋がゾクッとする「セピアの馬車」、サビに向かってどんどんと開放されていく曲展開が堪らない。この2曲の繋ぎが私的ハイライトかも。都会の喧騒を緩やかに風を切るシティポップ「話の続き」、曲調が似ているからか前作の「ときめきの花」のギターフレーズを密かに入れ込む遊び心にニヤリ。見事なまでに文字通りのトレインソング「発車のベルが鳴り響く」はナイスグルーヴ!の一言、間奏のメンバーソロ回しセッション燃える!roppenいいバンドだねぇと酒が進む。ラストは新機軸か?どこか風変わりなポップナンバー「喫煙所」、打ち込みではないがテクノポップのような質感で謎の疾走感に満ちている。煙草を吸わない松野さんが書いたやけっぱちな喫煙者の歌詞も最高で、曲も含めなぜだかはっぴいえんど「抱きしめたい」が思い浮かんだり。と言いながら思いついたが、別名『夜街ろまん』とでも名付けたいアルバムである。


roppen 1st Full Album 「Sweet Twilight」trailer

『sweet twilight』 roppen(2018年)

01. 走馬灯
02. スイートトワイライト
03. 曇り空
04. みちかけ
05. 小さな羽根
06. セピアの馬車
07. 話の続き
08. 発車のベルが鳴り響く
09. 喫煙所

roppen
中村浩章 Vocal, A.Guitar
橋本大輔 Bass, Chorus
渡瀬賢吾 E.Guitar, Chorus
松野寛広 Keyboard
竹川悟史 Drums, Chorus

Guest Musician
鳥羽修 E.Guitar (M4)
山田竜輝 Sax (M2,M6,M9)
うちだあやこ Chorus (M1,M2)

All songs written by 中村浩章
(except M7 lyrics by 渡瀬賢吾、M9 lyrics by 松野寛広)

Produced & Arranged by roppen
Recorded by 小谷和秀、アダチヨウスケ
Mixed by 谷口雄
Mastered by 鳥羽修 (smalltown studio)

Photography by サイダカオリ
Design by アヤ

※roppenとメンバーが重なる弟分的バンドbjons『SILLY POPS』も併せて聴くと楽しいよ!音楽的な違いを例えるとbjonsがシュガー・ベイブなら、roppenはセンチメンタル・シティ・ロマンス?ちょっと違うか。


bjons / roppen Live at パイドパイパーハウス 2018.07.27

「メトロノーム/アスリート」 CHAINS

twitterで流行している?「ほんとうに衝撃を受け、かつ今でも聴き続けている生涯のお気に入りアルバムを10枚」選ぶ企画のバトンが冬支度の安田支度さんから回ってきて、20代くらいまでに驚き愛聴していた盤を選びながら振り返りが楽しかった。

では、ごく最近に受けた大きな衝撃と言えば何?と訊かれたら、随分と久しぶりに体感したCHAINSのライヴだろう。6月9日ロックの日に京都アバンギルトで開催された、チョウ・ヒョンレとPiCas with 中井大介西村哲也と彼のラビッツ、CHAINSという関西のバンド3組が集結したイベント。三者三様のロックであるも、素晴らしい楽曲と素晴らしい歌唱と素晴らしい演奏しかない凄味を堪能、互いが刺激し合って最後のセッションまで熱のこもった名演が数多く観れた今年上半期屈指の充実したイベントだった。皆キャリアをしっかり重ねもう若くは無いけども(失礼)、今が一番カッコイイと思えるなんて最高じゃないですか!中でも、CHAINSの闘志をメラメラと燃やす気迫と迫力に満ちたROCKとしか言いようのない演奏が半端なかった。彼らのライヴを観るのは、2003年5月30日の心斎橋KNAVEで観たイベント(w/倉橋ヨエコ残像カフェRUNT STAR)以来の15年ぶり(!)2回目。当時から今でもレコードは愛聴しているのにご無沙汰しすぎて申し訳ないと思いつつも、15年後の彼らの地に足が着いた幹の太いたくましい演奏を目の前にして、嗚呼、地道にライヴを積み重ね年輪を増やしてきたのだなぁと感じ入り、猛烈に感動した。カーティス・メイフィールドニール・ヤングの歌声を併せ持ち、ローウェル・ジョージばりの凄まじいスライドギターを弾く新村敦史さんの圧倒的な存在感はもちろんであるが、その後方で、ギターソロは新村さんに任せ、ひたすらリズムギターを弾き続ける横山道明さんの頑固職人ぶりに痺れまくった。ラリー藤本&伊藤拓史リズム隊の歌心が躍動するグルーヴ、丸山桂さんのさりげなく小技の効いた鍵盤の味付けも絶妙で、息を合わせ一致団結して楽曲を盛り立てCHAINSの音楽世界を築き上げていく様に、つくづくBANDだなぁと感じ入り、猛烈に感動(2回目)。彼らの関係は、もはや腐れ縁ならぬ鎖縁ですな(ウマい!?)。

chains-kyoto.blogspot.com

そんなCHAINSも今年で結成25周年だそうで、それを記念して15年ぶり(!!)にニューシングルが配信された(私はOTOTOYハイレゾ購入)。「メトロノーム」と「アスリート」という2曲のカップリングで、件のライヴでも演奏されていたが、どちらもミドルテンポでじわじわと身体が熱くなるイカしたロックナンバーだ。メトロノームのイントロでドラムがスタンッと鳴ってちょっとトレモロがかったギターが入りキーボードがヒャ~と鳴り始めた瞬間に、嗚呼、これぞCHAINSだ...とニヤリ。ビバ☆シェリーのSATOさんがコーラスで友情出演しているのも嬉しい。良い時と悪い時をメトロノームのように行ったり来たり、バンドを続けて行く大変さと喜びを歌っているのだろうと私的勝手な拡大解釈。「アスリート」はオリンピックを目指すアスリートを歌った曲だが、まさしくCHAINSは寡黙でストイックなアスリートのよう、腰の入った軸がぶれないロック。しかも、京都のリトル・フィート!と思わず叫びたくなるファンキーな粘り腰だ。この最新の2曲も不変のCHAINS節で、奥に潜むブルーズ魂とどこかアングラな匂いを醸し出すサウンドは、やはり他の誰よりも京都を感じる。そうだ、京都にはCHAINSがいる。もうずっとすごいし、これからもすごいぞ先輩。


アスリート CHAINS@paradice 4th.Jun.2017

↑ドラムス伊藤さん中心の「アスリート」ライヴ映像ですが、伊藤さんのニュアンス豊かな粋なドラミング大好きです!

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メトロノーム/アスリート」CHAINS(2018年)
CHAINS are 新村敦史、横山道明、ラリー藤本、丸山桂、伊藤拓史