レコードは果てしなく

好きなレコードや観たライヴのことを喋ります。

ジャック達@梅田ムジカジャポニカ 2017.2.12

今、何やら世間ではドラマ「カルテット」が話題らしいですが、当ブログで話題沸騰のロックすぎるカルテットと言えば、そう?ジャック達!そんな(悪)夢の4人組は最新で最高の傑作『JACK TOO MUCH』を引っ提げて、東京名古屋大阪と局地的なワールドツアーを敢行。しかも、今回は恐れを知らぬワンマンライヴで!私は最終日の大阪公演は梅田ムジカジャポニカにお邪魔しました。邪魔するんやったら帰ってくれ、あいよー。それにしても、ワンマンでやると報せを聞いたときは驚きで、というか、正直(集客やら集客やらの意味で)暴挙じゃないかと思ったのですが、直前に公開されたGO→ST海賊放送局ポッドキャストの居酒屋座談会の中で、一色進さんが呂律が怪しくもはっきりと「東京でやっているジャック達の濃厚なワンマンをとにかく地方の人に観てもらいたい」という強い想いを語ってくれて反省と胸熱、そして、実際にジャック達のワンマンライヴを初体験して、出てくる言葉はただひたすら、感動した!ありがとう!やっぱり私はロックが、ジャック達が大好きなんだなぁと改めて実感した次第です。

ジャック達/JACK TOO MUCH

ジャック達/JACK TOO MUCH

それでも超心配していたお客さんの入りなのだけど、予想以上に客席もイイ感じに埋まって、ホッ...。中には、『JACK TOO MUCH』でジャック達を知って初めてライヴを観に来たという方も何人かおられたようで、ファンとしてもなんかとっても嬉しい(ライヴの感想やどういうきっかけで存在を知ったのか訊きたいところですが)。これだけいてくれればもう盛り上がっちゃうよ、特に大阪はノせ上手だから、ジャック達メンバーも気持ち良く演奏してくれるでしょう。そして、開演前にはBGMで大音量で10ccやELOが流れていて(終演後はWINGS)、否が応でもテンションが高まったよ。デッド的サイケな空間にブリティッシュムードが混ざり合う中、ジャック達のワンマンショーの始まり始まり。

オープニングナンバーは豪快な肩慣らし「JUMPER」で、宙GGPキハラ弾き倒すヘヴィーにひしゃげるレスポールの響きで一瞬にジャック達ワールドへ引きずり込まれる。自然に湧き上がる大歓声!もうすでに最高なんだから(以降も曲が終わるたびに大歓声が続くことを想像してください)。ここからはマシンガンのように『JACK TOO MUCH』ナンバーが続いて行くよ、「カジュアル」「マイ・ベイビィ・アン」と怒涛の最新型ジャック達ロックンロール、ジャック・アンド・ロール、ジャックンロール!だ(今、思いついた)。「カジュアル」での大田譲&夏秋文尚リズム隊ご乱心、マイベイビ~ア~ン♪コーラスしないでいられましょうか。それにしても爆音だ。ムジカジャポニカは超パブロックなハコ、バンドサウンドが巨大な一塊となって飛び込んでくる60年代のモノラルレコードのような音響で、『JACK TOO MUCH』の楽曲にはバッチリ。最初から最後までアンプ直撃の爆風で痺れっぱなしだった。シビレチャッタ、シビレチャッタ、シビレチャッタョー(by植木等)だ。「飛ぶ前に跳べ」で座っていても軽やかに跳んで、「Stormy April Blues」での夏秋さんの奇怪なドラムビートに胸騒ぎ。この「Stormy~」や後でやる「アル・カポネ」なんかはレコードならではの録音をしている曲なので、ライヴ用バンドアレンジがまた雰囲気が違って楽しい。ジャーンジャンジャーン...え?この流れで涙ナミダの永久に名曲「暁ワンダーボーイか!あまりにさりげなく、不意を突かれた。終盤に取っておくかと思いきや、もったいぶらないのがジャック達流!?泣くより先にそのロック魂に感服。デヴィッド・ボウイへのレクイエムを一色さんがやるせなく狂おしく歌い上げると、ライヴは中盤に。ここで他のメンバーの歌唱をフィーチャーするコーナー、ジャック達の新名物ボーカル回し。「スキニー・スキニー」はキハラさんのレコードよりちょっとぶっきらぼうな歌、そこに絡む一色さんのどこかかわいらしいコーラスと荒々しく華を添えるギターソロにグッとくる(なんか愛情を感じるのよ)。続くニッポンの洋楽「The Time Has Come」での夏秋さんのボーカル(一色さん曰く、ブリティッシュ声)は意外と力強く、そして、何度も繰り出される鬼のドラムソロ!徹底的に夏秋スペシャル、オイラはドラマー、ヤ〇ザなドラマー♪現代の嵐を呼ぶ男(とても涼しい顔で)。私は以前から夏秋さんのドラミングは理数系というイメージがあって、鋭くしなやかなビートが理路整然と変態的で暴れる。特に『JACK TOO MUCH』の楽曲(レコードでもライヴでも)では、それがもう容赦なく大爆発してるように思うのだけど、どうだろう?そんな夏秋さんに呼応していつも以上に攻めのグルーヴを生み出している大田さんが穏やかに優しく歌う「Silly Girl」、誰よりも安定したボーカルに安心と信頼感。会場がほっこりしたところで、旧譜からももちろんやります「地下室のエミリー」「MY BEAUTIFUL GIRL」。いつだってずっとジャック達は名曲ばかりなことをサラリとアピール。「~エミリー」の美しすぎる文学的詩情、「MY BEAUTIFUL~」間奏の一色さんのギターソロにはどうにも胸掻きむしられてしょうがない。「君は2こ上」は聴くたびに好きになる曲で、生演奏ではそのオトナの恋物語がますますリアリティを帯びてくる。一色さんが「カラオケに入ってたらなぁ」と言っていたが、確かにカラオケで歌いたいな。砂埃舞うロック讃歌「アーケード・カスケード」からはもうどんどんエモくなっていく。前述のとおり痺れっぱなしの夜だったけども、個人的に最も痺れたのはアル・カポネかもしれない。野球DJ中嶋勇二さんが件の居酒屋座談会で「いきなりRYDEENが始まったかと思いました」と仰ったように、レコードでは打ち込みのリズムなのだけど、ライヴはもちろん生ドラムで。チッチキチッチキ、これがまたカッコイイのなんの。頭のト・キ・オならぬシ・カ・ゴ!はレコードよりも強調(笑)、途中にはウ・メ・ダ!も飛び出た。妖しい色気を振りまきながら、とにかく凄まじい疾走感。後半は思わず松田信男さんのピアノソロが脳内ダビングされ、レコードではカットアウトで終わるのをジャジャジャジャン!でエンディングもバシッとキまった。それでもって、お次は怪物「プラスティック・トイ」だ。東京や名古屋で観た人の口々からヤバイの声を聞いていたが、マジでヤバかった...。レコードのバージョンには無いサイケなパートが追加され、一色さんのトチ狂ったかのようなシャウト!更に破壊的で狂乱のハードロック地獄。スーパーヘヴィー級のグルーヴに宇宙の果てまで投げ飛ばされ、意識が遠のいたまま本編最後の「天国行き最終列車」へ。出だしの一色さんのカッティングギターは軋む車輪のようで、大田さんのぶっとく弾むベースはゴオゴオと黒い煙を上げている。完全にトドメを刺された私は、タイトルの通り天国へ逝った...チーン。本編は休憩なしのぶっ通し(そうじゃなきゃTOO MUCHじゃない!という意思の表れ)だったので、ここまで改行なしでお送りしました。

さて、ジャック達のライヴの醍醐味の一つは、一色師匠の愉快なMCなのだけど、今回はワンマンというだけあってMCもたっぷり。とは言え、喋る分量も適度でライヴの勢いを止めることはなく、むしろ、笑いで勢いを活性化させていた。って、そんな分析してどうする(笑)。「ここで水を飲むということは、サビで休符がないからなんですね。死ぬかと思った」「あと10年くらいしたら、一番若いナッキーが...(以下自粛。某先輩バンドのファンの方から、ヒドイー)」「ちょっとチューニングします...アーッ!アーーーーッ!(ギターじゃないのかよ)」や一色家の”たとえば♪”ブームなどなど百発九十八中くらいで会場爆笑。白眉だったのは、「大田くん、背中掻いて」からの伸びる孫の手(わざわざ用意している)によるジミー・ペイジボウイング奏法のくだり。笑い死んだ。孫の手をギターに叩きつけたら、本人の想像以上にあまりに見事に鳴るので、調子づいてしつこく何回も。ギィーン!ギィーン!一色さんのギターが最も麗しく鳴った瞬間だった(爆)。

「拍手すれば出て来ると思ってるでしょ?犬じゃないんだから」アンコールはダブルで。まずはGO→STの歌姫えみコバーン(from大なり><小なり)を迎えてブロッコリー」「禁断のチョコレート・エンジェル」を。彼女は達者なコーラス(叱り)だけでなく激しいヘッドバンギングやダンシングで大いに盛り立てる、「ブロッコリー」間奏の着信音ノイズは実際にスマホを使って。いっぺんに見栄えも音も華やかになる。冬のGGPエレキギター祭りスーパーソニック・トースター」は、間奏の一人二役のギターソロがやはり燃える、焼け焦げる。キハラさんのレスポールの鳴りはジャックンロールの肝で、とりわけ『JACK TOO MUCH』のギターリフやソロはギンギンに冴え渡っていると思う。いよいよ名実ともにギターヒーローと言ってもいいのでは。一色さん(テレキャス)の特異なギターワークも磨かれていて、キハラさんとのコンビネーションは無敵状態に突入だ。そして、最後の最後は重厚なロック交響曲「エルドラド」。”もうすぐみんなgood by 誰でもいつかgood by 救われても救われなくても”ズシリと胸に響くサヨナラの歌だ。永遠に終わってほしくなかったが、ライヴは終わる。心を震わす素晴らしいライヴであればあるほど儚い、今宵その夜。


ジャック達「JACK TOO MUCH TOUR 2017」
2/12(日)@大阪 梅田ムジカジャポニカ
出演:ジャック達(一色進/宙GGPキハラ/夏秋文尚)&大田譲(from CARNATION)
   えみコバーン(from 大なり><小なり)
開場18:00・開演19:00

01. JUMPER
02. カジュアル
03. マイ・ベイビィ・アン
04. 飛ぶ前に跳べ
05. Stormy April Blues
06. 暁ワンダーボーイ
07. スキニー・スキニー
08. The Time Has Come
09. Silly Girl
10. 地下室のエミリー
11. MY BEAUTIFUL GIRL
12. 君は2こ上
13. アーケード・カスケード
14. アル・カポネ
15. プラスティック・トイ
16. 天国行き最終列車

en1. ブロッコリー(with えみコバーン)
en2. 禁断のチョコレート・エンジェル(with えみコバーン)

en3. スーパーソニック・トースター
en4. エルドラド


※終演後はメンバーとのチェキ会(1枚500円の良心価格)でもうひと盛り上がり(笑)

【私の好きな歌013】「スケート野郎」ザ・ジャイアンツ

あ、明けましておめでとうございます!引き続き、ごゆるりとヨロシクお願いしますね。今年も皆さま健康で、ステキなレコードと出会えますように。

それにしても、急激に寒くなってきましたね。こんな日にはスケートリンクにでも出かけて...と言いたいところですが、球技は割となんでもこなせても、足元不安定系のスポーツはまるでダメな私。スケートという選択肢は出来れば避けたいタイプ。なのですが、この(「ケメ子の唄」で知られる)ザ・ジャイアンツの「スケート野郎」は狂ったように好きなのです。本年1発目に紹介するにはあまりにもカルトすぎる珍曲で、どうもすみません。熱狂的なコレクターが集うカルトGSの世界ですが、某ヤ○オクで誰とも競らずにすんなりゲットしたのは運が良かったのかどうなのか(笑)。すっかり我が家の宝物です!?

GS=グループサウンズというのも掘れば掘るほどホント面白くて。本場のロックミュージックを誤解して誤解して誤解して変な方向にエネルギーが暴発してしまったロックもどき歌謡は、79年生まれの私には謎の刺激でビンビン響きます。そんな中でも、この曲はズバ抜けて馬鹿馬鹿しいです(爆)。スケート野郎が颯爽とした滑りで女の子をかっさらう歌、意味を求めるなんて行為はやるだけ無駄です。ただ、そのやたらに溌剌とした歌と演奏に身を任せるのみ。大見得を切って歌い上げる ”俺たちゃ紳士だ 手袋してる” で私は必ず死にます。愛くるしい?キラーチューン。


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↑平和ですなぁ

「スケート野郎」ザ・ジャイアンツ/B・Mシンガーズ(1968年11月)
作詩:佐伯孝夫/作編曲:寺岡真三

『JACK TOO MUCH』 ジャック達 【後編】

ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」楽しかったですね、ガッキー可愛かったですね(星野源は許せん(笑))。『JACK TOO MUCH』聴きすぎの私は、古田新太さんが一色進さんに見えて仕方ありませんでした。いやホント、古田さんは年々一色さんに近づいていると思うのですが、どうでしょう?って、一色さんのことを知っている人がこの世にどれくらいいるのか?という話ですが。知らぬは恥だが役に立つ、いやいや...まぁ一色さんのことはともかく、ジャック達の『JACK TOO MUCH』はそれこそTOO MUCHなくらいたくさんのロックリスナーに知ってほしい聴いてほしいロックの名盤なのです(本心は、私だけのものにしておきたいけど)。あなたにとってのロックとは何?と問われれば、四の五の言わずにスッとこのレコードを差し出し、聴けばわかるよ!とスパッと言い放ちたいところですが、四も五も言ってしまう私です。後編はお馴染み?全曲感想、遠慮なくTOO MUCHに行きますよ。併せて、一色さんの全曲解説(これまたTOO MUCH!)も読んで頂くと面白さ百倍です。

go-st.net

01. 暁ワンダーボーイ / Wonder Boy On The Red Moon
一音一音、厳粛にかき鳴らされるロックギターの調べで幕を開ける『JACK TOO MUCH』。2016年は大物アーティストの訃報がとにかく多い一年だったが、中でも年始のデヴィッド・ボウイの死はショックだった。ボウイの音楽に興味はあるがイメージしかないし、特別な思い入れがあるというわけでもないのだけど、かなりズシーンと来た。私の敬愛するミュージシャンはボウイの影響をモロに受けている世代の方が多いので、その打ちひしがれている顔が思い浮かんで仕方ないのだ。一色さんもそのひとり、その想いを歌にしないでいられない(振り返れば、前作の「明日、さようなら」「Snow Storm Warszawa」もそうだった...)。ボウイへのレクイエムソング、まるでボウイが天国から降りてきたような宇宙まで拡がる壮大なロックバラードだ。一色さんの哀しみの熱唱を支えるキハラさんのヘヴィーに心のこもったギタープレイにはミック・ロンソンが乗り移っている。あまりにも名曲だが切なすぎる、どうにも胸が掻き毟られる。それはもう真剣に聴くと泣いてしまうので、ぼんやり聴いている。ふと思い出した、一色さんのラジオ番組GO→ST海賊放送局(終了)で、一色さんが夏秋さんに今度ジャック達でこういう新曲をやりたんだと言って、ボウイの「Velvet Goldmine」をかけていた。そして、何やらこの曲の断片は昨年の大なり><小なり&一色ソロレコ発ツアー中に形作られていたそうだ。メドレーでヘイ・ジュードをヘイケ~イ~♪と大合唱したあの馬鹿馬鹿しい(褒めてます)「閉経ベイビー」とか歌っていたような時に、こんな王道の素晴らしい一世一代の名曲を生み出そうとしていたのかと想像すると、奇才ソングライターの精神状態は理解できません(笑)。

02. マイ・ベイビィ・アン / My Baby Ann
一音一音、やんちゃくれにかき鳴らされるロックギターの調べで幕を開ける2曲目。ある意味ジャック達らしからぬバラードから、思い切りジャック達なロックンロールに繋がる快感よ。シンプルにイカしたビートロックに見せかけて、突如としてラテン調になる珍妙な展開や、ズッコケ三人組のドジなコーラスはカルトGS感満載。これぞ永遠のB級ロックバンド、ジャック達!最高すぎる。この曲は昨年1月の通称GO→ST祭りで新曲として初披露されたのだけど、その帰りの最終電車で幸運にも一色さんと柴山一幸さん!(出演者だった)に遭遇し、目の前で生GO→ST海賊放送局が観れた(一生の良き思い出)。一幸「新曲の歌詞がめちゃくちゃいいですね!」私「えっ、聴き取れたんですか?」と思わず突っ込んでしまったが(笑)、ありふれてるけどありふれてない言葉表現は一色さんならではのただのラヴソング。それでもって、一色さんにこっそりアンという女の子のモデルが誰なのかを教えてもらった。もちろん言いませんけどね、ふふふ...

03. カジュアル / Casual
間髪入れずに、超ジャック達節のゴキゲンでカジュアルなロックンロールが続きます。冒頭の、アッ、アッ、アッ、アー、オーイェー♪喉が詰まってるんでしょうか?最狂のロックシンガー。最狂と言えば、一色さんの弾くずーっとミョンミョンミョンミョン鳴っているエレキシタールも。一体どうやって弾いているのか分かりません。そんな本物のような偽物のようなサイケデリック感、後半の怒涛のリズム隊の暴れっぷり、ロックの乱痴気騒ぎへようこそ。

04. スキニー・スキニー / Skinny Skinny
一転してしっとりした切なく美しいバラード、歌うのは宙GGPキハラさん。前作『JOYTIME』に収録された「物憂げ」がキハラさんのリードボーカルデビュー、まだ恐る恐る歌っている感じ(サウンドに埋もれてボーカルがあまり聞こえない)だったけれど、ここでは正面切って歌っている。堂々と頼りない、それがもう泣ける。私が女性だったら、構ってあげなきゃと思うかもしれない。後奏のキハラさんのギターソロがまた歌い上げているんだなぁ。間奏の一色さんのエモすぎるギターソロも素敵な涙の演出だし、夏秋さん弾くメロトロンの幽玄ロマンチックな響きも実に効いている。このアルバムのハイライトと言ってもいいくらいの名曲に仕上がっている。

05. ブロッコリー / Broccoli
そんなスウィートな余韻をぶち壊すかのように、素っ頓狂で奇っ怪な曲をぶち込んでくるのがジャック達の流儀。鬼ころしが似合うアイドル麥野むぎさん(パンタンシノワ)を迎えたデュエットナンバー。カリフラワーを買ってきてと頼んだのにブロッコリーを買ってきた彼(一色さん)への彼女(むぎさん)の”んあああああ~”という言葉で表しきれない異常な呆れ声。とにかく一色さん(61)、めちゃくちゃ怒られている、のが痛快。むぎさんのアンニュイな歌声はジェーン・バーキンのようだが、一色さんはセルジュ・ゲンスブールより情けない。そんな愛すべきだらしなさに憧れる...のはどうかと思うが。※間奏で思わずケータイを探さないように注意!(特にバイブレーションにしてる人)

06. 飛ぶ前に跳べ / Jump Before Fly
見るまえに跳べ、は岡林信康だったか。”飛ぶ”と”跳ぶ”の違いはいかに?他の曲に比べるとイマ風なギターサウンド、と言っても90年代のパワーポップの質感だろうか。そこに絡むウーランランララ~♪という古めかしいコーラスがなんだか微笑ましい。一行目のシェークスピアの有名なフレーズ”to be or not to be”の一色さんの舌足らずな発音がすこぶるキュートなのだが、”to be”はもちろん次に来る”跳べ”と韻を踏んでいる。その後の”神戸、そして長崎”はなんだかムード歌謡のようだ。洋楽のロック歌詞の様式美を意識しながら、中にものすごくベタついた日本語を絶妙に混ぜ込むのが一色さんの詞の特異な素晴らしさ。

07. 君は2こ上 / You Are 2 Years Older
「カジュアル」でティーンエイジャーの恋愛を歌っていたかと思えば、ここで描かれるのは秘めやかな老いらくの恋だ。この振れ幅たるや!もちろん一色さんの年齢だからこそ歌える歌なのだろう。ロックの世界だって年相応のラヴソングがあって然るべきで、それって年下から見ても断然イケてるし、無理して若作りした音楽なんて求めてない(反対に、無理して年を取ろうとしてる音楽は好き)。ロックは十代のモノというのは昔の話、いくつになろうがロックに夢中でいたい。って、そんな大真面目に語るような大それた曲ではなく(一色さんも面白おかしく書いてるだけだと思う)、ささやかに色っぽい哀愁あるポップナンバー。

08. The Time Has Come
フェードインで現れ、勇ましくドラムが鳴り響き、と思いきや儚く透明な歌声で歌い始めた夏秋さん!しかも、英語詞だ。ファンの間では、ジャック達は外タレ扱いだが、とうとう正真正銘に外タレになった?瞬間だ。知らない人が聴いたら、きっと洋楽にしか聞こえないだろう。元々一色さんの書くメロディーは洋楽臭が強い(というか洋楽臭そのもの)とは思っていたが、こうやって英語詞で聴くと身をもって実感できる。「想い出の渚」のザ・ワイルド・ワンズの1stアルバムに入っている英語詞のクールなビートナンバーがあるのだけど、それを思い出した(「All Of My Life」テープ逆回転ノイズを導入している、67年。マニアックな例えですいません)。

09. Stormy April Blues
60年代のロックの名盤にインドものは欠かせない、であれば当然ジャック達もやる。漂うエキゾチックなサイケ感はアルバムのユニークなアクセントになっている。また、この何とも言えない倦怠ムードには一色さんのくたびれたボーカルがよく似合う(同系統の曲ではミニアルバム『RoMAnTic LaBoRatORy』収録の「砂漠のモノレール」もグレイト!)。こんな土着的な曲で、後半いきなりデジタルビートが被さって来るのはスタジオマジックというか何と言うか...タダじゃ済ませられない、TOO MUCHで歪んだサービス精神こそがジャック達、なのである。バックトラックのほとんどは夏秋さんの手によるものらしい、そう、夏秋さんもまた奇才だ。

10. プラスティック・トイ / Plastic Toy
何も言いますまい、男は黙ってツェッペリン!なのだ。言っちゃうけど。鈍く光るギンギンギラギラな爆撃電気ギターで身体中大火傷、またしてもミョンミョンミョンミョンけたたましい電気シタールに脳が痺れ、ドッカンドッカン乱れ打つ狂暴なドラムビートは連続ドロップキックになって胸に直撃腰砕け、トドメは音割れ寸前まで押し出したブンブン振り回すスタン・ハンセンのウエスタン・ラリアットのような極太ベースグルーヴを真芯で食らい、死亡。不謹慎だけど、ロックで死ぬなんて最高じゃない!?一色さんのロックボーカルはさすがにロバート・プラントとはいかないけれど、それとはまた違う形で、バッチリ様になる一色さんはやっぱり凄い。ヘロヘロなのになんでこんなカッコイイのか?永遠の謎だ。とにかくフルボリュームでお楽しみください。

11. Silly Girl
そんなスタン・ハンセン?は実は気の優しいおじさんだった。凶悪ハードロックに続くのは、大田譲リードボーカル(もはやサポートじゃない)の心温まるほっこりナンバーだ。おバカさん♪と野太い声で子犬を抱きしめるようにかわゆく歌う大田さんに悶絶している大田女子が多数出ているらしい!?”Silly Girl”が”尻軽”に聞こえ、”Oh Silly Girl”が”お尻が”に聞こえるのがまたかわゆい。ラヴリー極まりなし。一色さんが歌詞提供(作曲:西村哲也)した大田さんが歌うグランドファーザーズ「恋の元素記号」も併聴されたし。

12. アル・カポネ / Al Capone
これ朝から書き始めてるのですが、さっき紅白歌合戦始まりました。わぉ、審査員でガッキー出てるし!実はアル・カポネはガッキーがモデルで、って違うから。これはアル・カポネ(有名なギャングですよね)と呼ばれる妖艶で近づくと危険な女の歌。打ち込みのリズムをバックに、シネマの盟友・松田信男さん(ミックスも見事!)のドラマチックでマッドなクラシカルピアノ演奏がまるでオペラ座の怪人のよう(よく知らないけど)。うっとり聴き惚れている途中でカットアウトされてラストナンバーへ。

13. 天国行き最終列車 / Last Train To Heaven But I Don't Know Where To Go
最後は、巨大な車輪を軋ませ黒い煙を吐き出しながら天国へ逝くロックトレインソングだ。スーパーヘヴィー級な演奏で、ここでもベースは凄まじい唸り声を上げている。背筋がゾクゾクするようなフィナーレ。激情のJACK TOO MUCH劇場・完

今作はリズム隊を同時にレコーディングしたおかげだろうか、グルーヴの一体感と躍動感がハンパない。特にベースを強調したミックスも相まって、転がり落ちる爆弾岩のようなグルーヴが物凄い勢いでスピーカーからこちらに突進してくる。そして、キハラさんのギタープレイがこれまで以上にキラめいているように感じる。リフ、ソロともにレスポールの男の色気漂う鳴りの良さ、胸を打つ名演がたくさん生まれている。このバンドサウンドを一言でまとめれば、ただの最高にカッコいいロック。という、書き忘れたことを無理やり追記して全曲感想終わり。ご清聴ありがごとうございました、今後とも呆れずによろしくお願い致します。

ジャック達/JACK TOO MUCH

ジャック達/JACK TOO MUCH

『JACK TOO MUCH』ジャック達(2016年)

01. 暁ワンダー・ボーイ Wonder Boy On The Red Moon
02. マイ・ベイビィ・アン My Baby Ann
03. カジュアル Casual
04. スキニー・スキニー Skinny Skinny
05. ブロッコリー Broccoli
06. 飛ぶ前に跳べ Jump Before Fly
07. 君は2こ上 You Are 2 Years Older
08. The Time Has Come
09. Stormy April Blues
10. プラスティック・トイ Plastic Toy
11. Silly Girl
12. アル・カポネ Al Capone
13. 天国行き最終列車 Last Train To Heaven But I Don't Know Where To Go

JACK-TATI
SUSUMU ISSIKI: vocals,guitars,keyboards
FUMIHISA NATSUAKI: vocals,drums,keyboards
HIROMU GGP KIHARA: vocals,guitars
And
YUZURU OTA(CARNATION): vocals,bass

NOBUO MATSUDA: keyboards
MUGI MUGINO(PANTINCHINOIS): vocals

【私の好きな歌012】 「サンタ、今でも信じてる」クララズ

皆さまMerry X'mas!って遅いか、毎日がクリスマスだったらなぁ(by Roy Wood)。街は一気に年越しモードに変わるけども、クリスマスソングはいつだって聴けるんだよ。というわけで、日にちがズレようとも、クララズから最高に素敵なクリスマスソングが届いたので、居てもたってもおられずご紹介。

バレンタインデーに発売されたシングルで、当ブログでも取り上げたクララズの「コンコース」は今年ダントツで一番多く聴いた曲だ。その衒いのない真っすぐなポップナンバーに、スコーンと恋に落ちた。その後、9月に心斎橋Pangeaで初めて観た(ハイパー)クララズの堂々としたライヴ演奏もちょっと感動的に素晴らしく、眩しく心に残った。そして、最後のトドメが、この最新曲のクリスマスソング「サンタ、今でも信じてる」だ。彼女の身体中にあるポップというポップを全部かきあつめて大放出したかのようなスーパーウルトラミラクルキャッチーな夢のある3分ポップス完成。オルガンを効かせた力強く鳴りの良いバンドサウンド(こう書いた後で、歌とギター以外は打ち込みということが発覚。マジか!)、それに負けない発音のしっかりした凛々しく伸びやかなボーカルが炭酸水の泡のように爽快で。軽やかに弾むメロディーにハッピーな気分に包まれたら、泡が弾けたようにパンッと曲は終わる。「コンコース」もそうだったが、ポップスは全部語っちゃいけないというのを彼女は知っている(お腹いっぱいだとおかわりできないでしょう)。ポップの魔法、今でも信じてる私はひたすら嬉しい。パワーポップギターポップ、インディーポップ...そんなカテゴライズは不要の普遍性、いろんな人に届くだろう届いてほしいな。

「サンタ、今でも信じてる」クララズ(2016年12月24日)
from V.A. 『This Christmas Time 4』
※こちらのナイスなクリスマスコンピについては、以下の特設サイトで。
powerpopacademy.com

『JACK TOO MUCH』 ジャック達 【前編】

ロックリスナーとしての私の2016年を締めくくる白組の大トリは、日本のロックのぼくの伯父さん一色進率いるジャック達の新作4枚目のオリジナルフルアルバム『JACK TOO MUCH』!大階段から華々しく登場。その名の通り、ジャック達以上にジャック達としか言いようのない、ロックの愛とロマンがトゥー・マッチに満ち溢れた、絵に描いたようなロックアルバムだ。嬉しい、幸せ、のふた言。もしかしたら一色さんの全キャリアでも最高傑作かもしれない。こんなあられもないロックは流行とは遠くかけ離れたところで鳴っているのだろうけど、そんなことはどうでもいい、私にとっては今のど真ん中。ロックを笑う者はロックに泣く、のだよ。

ジャック達/JACK TOO MUCH

ジャック達/JACK TOO MUCH

前作『JOYTIME』は一色さんの少年の頃からの夢想を形にした17分に及ぶ超大作スペクタクル表題曲が目玉だったが、今作は従来のコンパクトにギュッとジャック達ならではのポップの旨味と不思議味がグツグツに煮つめられた(気持ちは)3分ロックが怒涛の13曲。天からデヴィッド・ボウイが降りてきた感動的な泣きの名曲「暁ワンダー・ボーイ」で幕が上がるのがいささか意外ではあるが、続く「マイ・ベイビィ・アン」~「カジュアル」でのゴキゲンでノリノリの(他愛のない)ラヴソング&ロックンロール連発で、ここからはもうジャック達ワールド全開である(麥野むぎさんとの呆れたデュエット「ブロッコリー」も楽しい)。シンプルに見せかけて、実は多種多様なアイデアをもってアレンジが練り込まれており、ハマると抜け出せないトラップがいっぱい仕掛けてある(一色さんの歌がもうすでにトラップだが)のはいつも通りなのだけど、それがこれまで以上にキレまくってるように感じる(曲間や曲のつなぎにも細心のこだわり)。レコーディングマジック、ここに極まれり。演奏もグルーヴも躍動感たっぷりだし、60年代風味のアナログなサウンドも太くたくましい。各人の演奏の見せ場を強調するメリハリのある夏秋文尚さん、松田信男さん(シネマ)のミックスがまた痛快だ(マスタリングは中村宗一郎さん)。是非とも、PLAY IT LOUD!!でお願いします。そして、前作ではギターの宙GGPキハラさんが初めてリードボーカルを取った「物憂げ」や件の表題曲でもそれぞれのボーカルが少しずつ聴けはしたが、今作ではついにサポートの大田譲さん(fromカーネーション)含む4人全員のリードボーカル曲が用意されている、のが大きな特徴だろう。これがまたなんとも...素晴らしい出来で(涙)。決して上手くはないけど、どこか憎めない味のあるちょっとかわいらしい歌声が共通している(まるでNRBQのよう)。これでいよいよ完全無敵のロックバンドになった、かもしれないジャック達。それってめっちゃカッコイイ、かもしれないジャック達。

宣伝コピーで、一色さんのことを”東京インディー・シーンの隠れた秘宝”と表現している。秘宝の時点でもうすでに隠れているのだから、さらに隠れている。困ったものだ。その土埃の積もった宝箱を開けるかどうかはあなた次第ではあるが、とりあえず、ちょっとだけ開けて手を突っ込んで確かめてみては?ミミックだったら、すいません。って、堂々と推薦しろよ!本当は私だけの秘宝にしておきたかったけど、しょうがないな。『JACK TOO MUCH』、控え目に言っても、2016年度の私的ベスト・レコードです。(後編に続く)


『JACK TOO MUCH』ジャック達(2016年)

01. 暁ワンダー・ボーイ Wonder Boy On The Red Moon
02. マイ・ベイビィ・アン My Baby Ann
03. カジュアル Casual
04. スキニー・スキニー Skinny Skinny
05. ブロッコリー Broccoli
06. 飛ぶ前に跳べ Jump Before Fly
07. 君は2こ上 You Are 2 Years Older
08. The Time Has Come
09. Stormy April Blues
10. プラスティック・トイ Plastic Toy
11. Silly Girl
12. アル・カポネ Al Capone
13. 天国行き最終列車 Last Train To Heaven But I Don't Know Where To Go

JACK-TATI
SUSUMU ISSIKI: vocals,guitars,keyboards
FUMIHISA NATSUAKI: vocals,drums,keyboards
HIROMU GGP KIHARA: vocals,guitars
And
YUZURU OTA(CARNATION): vocals,bass

NOBUO MATSUDA: keyboards
MUGI MUGINO(PANTINCHINOIS): vocals


↓OTOTOYのサイトでジャック達のインタビューをどうぞ。ロックリスナーもバンドマンも必読の好内容です。DLページでは試聴もできるよ。
ototoy.jp

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ブロッコリー」の妄想MVイメージです...。ザッツザウェイ、パクリ疑惑!?

【私の好きな歌011】 「Bright Lights Bugcity」青山陽一

街のクリスマスモードも年々早くなってきてるように感じますが、私も二週間前にクリスマスの話を。と言っても、リアル充実な人たちが盛り上がってるだけのイベントに、特別なエピソードなんてありませんけど...。非リアル充実の私はクリスマスにコンビニになんか行って、サンタの格好させられた暇そうな女子店員や客が冴えない男たちばかりだったりすると、おお同士よ、なんてホッとするくらいでしょうか(苦笑)。かと言って、クリスマスが嫌いというわけじゃなく、街がイルミネーションできらびやかになったり、なんか浮かれてる感じも、たまにはいいじゃないっていう。そして、クリスマスソングは本当にホントに大好き。だって、夢見心地なポップスの集大成でしょう。風物詩のシャンシャン鳴る鈴の音を聴くだけでも、ホッコリ幸せな気持ちになります。

というわけで、今回は私のフェイバリットなクリスマスソング、青山陽一Bright Lights Bugcity」を...って、どこがやねん!歌詞にクリスマス的なアイテムが出てこないし、鈴も鳴ってないじゃないかと突っ込まれたことでしょう。でも、私にはクリスマスソングに聞こえるのだからしょうがない。何と言うか、クリスマスの私の心象風景を見事に歌にしてくれているのです。この歌を聴いていて頭に浮かぶのは、クリスマスの喧騒と眩しすぎる街の通りを隠れるようにコートの襟を立てて足早に通り抜けていく男の猫背。そんな寂しい男を徹底的にロマンティックな曲調アレンジ演奏で力強く優しく包み込む。後半に進むにつれてじわじわとこみ上げてきて、青山さんが熱く歌い上げる”正午を打つ時報は鳴り響いている~♪”で涙腺崩壊。嗚呼、美しき孤独。人それぞれにそれぞれのクリスマスがある、メリークリスマス!(だから、早い)

Bugcity

Bugcity

Bright Lights Bugcity」青山陽一(2001年)
song written by 青山陽一

青山陽一 vocal,electric guitar
石坪信也 drums
青木孝明 fretless bass
伊藤隆博 piano,trombone
川口義之 tenor&alto sax

※前年のキリンジ「千年紀末に降る雪は」も似たような風景が拡がります。

【私の好きな歌010】 「Fly Fly Fly」柴山一幸

(しつこく言うけど)9月28日にBAND EXPO『BAND EXPO』とTRICKY HUMAN SPECIAL『黄金の足跡』、そのちょうど一週間後の10月5日にこの柴山一幸『Fly Fly Fly』、と怒涛のように傑作レコードがリリースされ、ロックリスナーな私的に2016年最も熱い週だった(全てドラムス矢部浩志さんだし!)。どれもこれもが聴き応えありまくる名曲名唱名演ばかりで味わうのに忙しい、嬉しい悲鳴ってやつだ。私が背中を見ている先輩は彼らのような世代であって、ベテランとも言えるキャリアがあり、ある程度の高い(足らないけど)評価を受けていた(一幸さんの言葉を借りると)ナイスミドルな音楽家たちが何となく安定した存在として、あまりスポットが当たらないのが歯痒い。こんなにビンビン心に響く刺激的な歌が生まれているのに、聴かないのは勿体ない。全くもってナウな音楽なのだよ。

そんな中でも最高にホットなシンガーが柴山一幸さんだ。2013年の3rd『I'll Be There』から始まり、2014年に4th『君とオンガク』、昨年は5th『YELLING』と毎年オリジナルアルバムを発表し、そして、今年も『Fly Fly Fly』という新たな名盤が届けられた(何だかサラッと言っているが、その全てが全身全霊の作品なので、とんでもないことである)。前作はバンドメンバーを一新し、その勢いに満ち溢れたロックンロールアルバムだったが、今作はしっかりと興奮させながらもじっくりと歌を聴かせる身体の芯からじわりと熱くなるアルバム、という印象だ。リードトラックとして、富士山ご当地アイドル3776の井出ちよのさんと石田彰プロデューサー(実は2nd『涙色スケルトン』にも参加していた)をフィーチャーしたことで話題になった、現代版I Want You Backとも言えそうなキャッチーでクールなディスコナンバー「That's The Way」でツカミはバッチリ。他にも、思わずカーネーションファンもニヤリな爽快なポップロックサーモスタット」、真骨頂の激情バラード「uSOTSUKI」、Be My Babyでナイアガラなリズムで穏やかに語られる亡き父への想い「たとえばこんなレクイエム」、パンクなスタイルカウンシル歌謡「Now Is The Time」など、バラエティに富んでいるのは流石のプップフリークである。


柴山一幸 featuring 井出ちよの、石田彰 / That's the way

何と言っても、このアルバムの凄味は最後の3曲なのだ。全てがここに収斂されていく。ジョニィへの伝言に恋は桃色にニール・ヤングが混ざり合ったような泥沼から這い上がるフォークロック「希望の橋」でググッとこみ上げ、続く、あまりにも美しく儚く壮大なアルバム表題曲「Fly Fly Fly」で羽ばたいていく鳥たちと共に感動が空高く舞い上がる。柴山一幸の祈り、生と死、ゴスペルミュージック...泣きながら多幸感に包まれる。抑制と高揚、完全に詩の世界と一体化した一世一代の歌唱に、自然と引っ張られてバンドの演奏も眩しく光り輝いている。アルバムではフェードアウトしているが、実はディスクユニオンの特典でこの曲のフルバージョンが聴ける。そのフェードアウトしてからの1分50秒の演奏が、また一段と狂おしい(アルバムとしてはフェードアウトで正解)。どうやら終了の合図を出しても、演奏が止まらなかったようだ。そのバンドメンバーの気持ち、分かる。こんな凄まじい名曲を終わらせたくない、みんな感極まりながら演奏していたのではないだろうか。またオマエ大袈裟なことを言っているだろう、と思う前に、まずは聴いてほしい。これはもうロックとしか言いようがないのだ、体験しよう。そして、アルバムは、Natural Womanならぬ「Natural Man」で、高ぶった感情を鎮めるようにしんと静かに幕を下ろす。

Fly Fly Fly

Fly Fly Fly

「Fly Fly Fly」柴山一幸(2016年)
作詞作曲クレジットなし

※『Fly Fly Fly』参加メンバー
柴山一幸:Vo,Guitar,Arrange
杉浦琢雄:Keyboard,Cho,Arrange
矢部浩志:Drums,Arrange
若山隆行:Bass,Arrange
平田崇:Guitar,Arrange
加藤ケンタ:Guitar,Cho,Arrange
森芳樹:Per,Arrange

井出ちよの[3776]:Guest Vo
石田彰:Guest Rap